Jリーグ ディビジョン1・第9節
午後1時30分、割れんばかりの大音響の鳴り響く埼玉スタジアムのピッチに、名古屋の選手がウォーミングアップのため登場すると、すさまじいブーイングが轟き渡り、改めてアウェイの凄さというか、浦和サポーターの脅威を感じさせる。しかし、名古屋の選手は少しも臆することなく、スタンドの名古屋を応援してくれるサポーターの下へと駆け寄ると、グッズを投げ入れてゆく。最後にゆっくりとした足取りで秋田が登場すると、一際大きなブーイングが沸き起こるが、名古屋のサポーターも負けじと声援で迎える。
 思った以上に深い芝生を確かめるように、スパイクを踏みしめた後、選手達はアップをスタートさせる。強烈なサポーターが支える浦和レッズとの今日の第9節。名古屋は4連勝で好調を維持、対する浦和は今季まだ1勝と波に乗れず、17位と低迷中。昨年の駒場でも完勝し、はっきり言って今日も今の調子でゆけば、白星で試合を終えることは間違いない。しかし、爆発的な破壊力を持つ浦和だけに、油断は絶対出来ない。前節、東京Vに勝利したものの、DF陣は内容的には良くはなく、結果には満足はいっていなかったはず。ゴール前でボールを捌く楢崎や、アップを行っている秋田・古賀・角田等とともにその表情は険しい。今日は先日の汚名を挽回する意味でも、きっちりと浦和の攻撃陣を押さえ込んで欲しい。
 しかし、名古屋には浦和にめっぽう相性の良い中村がいる。メンバー紹介の時には、一際大きなブーイングが浦和サポーターから起こっていた。今日は通算100試合出場となる、中村にとって記念すべき日。目下絶好調の中村のことだ、自らのメモリアルな試合を、自らの得点で決めてくれると期待したい。
 1時45分、浦和サポーターの怒号の中を名古屋イレブンはゆっくりとロッカーへと消えていった。
〜前半15分
心地よい風がピッチの上を吹き抜けて行く中、フェアプレイフラッグに続いて、両チームイレブンが審判団と共に入場してくると、耳を劈く、嵐のような浦和サポーターの怒号がスタジアム内にこだまし、埼玉スタジアムは相変わらずの彼らの迫力に、興奮の渦に包まれる。名古屋のサポーターも負けじと声援を送るが、ここ浦和のホームだけは何ともならないと言っても良いほどの迫力だ。そして、これから始まる試合が間違いなく激しくなることを感じさせてくれる。
右エンドのホーム・浦和に対し、名古屋は左から右へと攻め上がる。前半は名古屋のキックオフで試合開始。
名古屋は、GK楢崎、DFは古賀・秋田・角田、MFは右から山口・吉村・クライトン・中谷・本田、FW中村と若い杉本の2人だ。
1分、自陣左入った位置での浦和のFK。三都主の早いゴール前へのボールに上がっていた闘莉王が入ってくるが、これは触れられずマイボールに。
2分、左から相手選手を振り切ってクライトンがドリブルで上がって行くと右のスペースに上がる山口の前にボールを入れて行くが、これは追いつけず、ゴールラインを割ってしまう。
 
 
3分、中央をエメルソンがドリブルで前を向いて上がってくるが、角田がしっかりと着いていって、シュートを打たすことはなかった。
5分、鈴木がボールを持つと、DFの裏へと抜け出すエメルソンに狙って入れてこようとするが、これはDFがきっちりと読んで、跳ね返して行く。
7分、秋田が自陣中央でボールを持つと、エメルソンがちょっかいを出しに来るが、ここは軽くいなして、ボールを奪われる事はなかったが、この辺は油断できない。
8分、左サイドでボールを持ったエメルソンがスピードに乗ってドリブルで上がってくると、エリアの外から強烈なシュートを打ってくるが、これはポスト左に外れる。
10分、右サイドで田中がドリブルで抜けてこようとするが、中谷がきっちりとマークにつきタッチの外へボールを出す。
11分、相手陣内中央でクライトンからのボールを受けた本田が左に上がる杉本にあわせスルーパスを出して行くが、これは相手DFが厳しいスライディングできたため、ボールを折り返せず、チャンスを生かせなかった。
 
 
13分、DFが弾いてこぼれたボールに中央で詰めてきた永井がミドルシュートを左足で放ってくるが、ポスト左へと流れて行く。予想されたことだが、浦和が開始から激しく責め立ててくる展開となっているこの時間帯だ。
14分、左サイドで鈴木が持ち込んでくると、ヒールで流したボールをエメルソンがシュートに来るが、精度が無く、大きくゴールを越えて行く15分、右でセットプレーで残っていた闘莉王がボールを拾って上がってくると、ゴール前へと入れてくる。エメルソンがあわせに飛び込むが、楢崎が飛び出して、このボールを跳ね返す。
 
〜前半30分
17分、右からドリブルで山田が入ってこようとしたが、中谷が執拗について行き、ボールを奪って行く。
18分、角田が中央で相手DFの裏へ杉本を走らせようと蹴って行くが、これは相手DFが頭ではじき返してしまう。
19分、自陣中央すぐの位置での浦和のFK。長谷部が縦に出したボールはそのまま楢崎の下へ。
 
 
20分、相手ペナルティエリア内でこぼれ球をフリーで拾ったクライトンが、詰めてきたGKを避けて右隅を狙ってシュートを打って行くが、惜しくもポストの右に外してしまう。
22分、自陣右中程の位置での浦和のFK。三都主のゴール前への早いボールは秋田がしっかりと体を寄せて、詰めていた選手に仕事をさせなかった。
24分、相手陣内中央で前を向いてボールを持った中村が右から走り込む杉本にあわせてスルーパスをゴール前のスペースに狙って縦に出していったが、飛び出したGKが先にこれを押さえてしまう。
 
 
25分、自陣からの縦のボールを本田が頭でDFの間へと落とすと、杉本が走り込むが、ここはDFが体を入れて前に抜けさせてもらえなかった。
26分、右から中へと流れながら田中がシュートに来るが、角田がしっかりとコースを消しにゆき、ミスを誘う。
28分、自陣からの長いボールを杉本が左で受けると、寄せてきたた中村は、これをドリブルで縦に突破して行ったが、DFの厳しい寄せにボールをゴールラインの外へ出してしまう。
 
〜前半終了
30分、右から山田がドリブルで入ってこようとしたが、中谷がしっかりとこれを押さえ、チャンスを作らせなかった。この時間帯になっても浦和がボールを持って仕掛けてこようとする場面が目立っているが、名古屋の選手は誰もが集中しており、危なげない展開で試合が進んでいる。
34分、左からのCKのチャンス。中村の早いボールにニアで秋田が飛び込むが僅かに高く、惜しくもボールは頭上を抜けてしまう。
35分、右に流れながら本田が相手DFの裏へとボールを蹴って行くと、杉本が走り出すが、これはDFが頭でカットしてしまう。
 
36分、DFの裏へのボールに抜け出してきた田中が、飛び出した楢崎の前でボールに軽く右足で当てて頭上を越すと、ボールはそのまま無人のゴールに収まってしまい、浦和に先制を許してしまう。 【得点】
35分 田中(浦和)
38分、エリア内でエメルソンにボールをもたれると、そのまま右に流れながらの右足からのシュートを決められてしまい、2点目を与えてしまう。ここは落ち着いて守備陣が立て直しを図りたいところだ。
39分、右サイドで長く出たボールを追いかけた田中についていった中谷がかわされるが、シュートは楢崎が押さえ追加点は許さなかった。
【得点】
38分 エメルソン(浦和)
 
41分、左からの浦和のCK。三都主のボールに中央で闘莉王がフリーであわせてヘディングシュートに来るが、楢崎がきっちりと反応して、これを弾き出して行く。
42分、左からの浦和のCK。今度は三都主が短く出すと中へと入ってきてシュートを狙ってくるが、これは山口が体を出してボールを弾いてゆく。
44分、右からの浦和のCK。三都主のゴール前へのボールは吉村が頭で弾き出して行く。
ロスタイム1、クライトンの縦パスに反応して本田が走り込んで行くが、浦和のDFに頭で弾かれてしまい、チャンスを作れなかった。そして、前半はこのまま2−0で終了。前半押し込まれながらも、守備陣がきっちりと押さえ込んでいたが、田中の裏への飛び出しにやられて先制を許してしまうと、DFが混乱してしまった隙をつかれて、エメルソンには追加点を奪われてしまった。後半はまず守備の混乱を整理して、気持ちを切り替え、まずは得点を奪って、流れを変えてゆきたい。
【交代:41分・名】
中谷渡邊
〜後半15分
エンド入れ替わり、右エンドの名古屋に対し、左から攻め上がる浦和のボールで後半がキックオフ。
1分、左で中村からのボールを受けた渡邊が、中村に当てて前に抜け出そうとしたが、前を阻まれ、中村の縦のボールを無駄にしてしまう。
2分、右でこぼれたボールを山口が縦に蹴り出すと、杉本が抜け出すが、これはオフサイドに。
4分、右のスペースに出たボールをフリーで受けたエメルソンがワンタッチで中へと入ってくるが、秋田がスライディングでクリアしてゆく。
5分、左から三都主が早いクロスをゴール前へと入れてこようとするが秋田がダイレクトではじき返してゆく。
6分、左からの浦和のCK。三都主が短く出したボールを山田が詰めて中へと入れてこようとしたが、中村が厳しく詰めミスを誘う。
 
 
7分、山口の長い縦パスに抜け出した杉本だったが、相手エリアすぐ右での闘莉王の厳しいDFに倒され、チャンスを作れなかった。
8分、右でフリーで受けた永井がシュートをエリアに入ったところで打ってくるが、楢崎が判断良く詰め、指先に当てて弾くが、これが枠内へと飛んでゆくところを慌てて戻って、手で弾き出し、このピンチを救う見事なセーブを見せる。
11分、左でフリーでボールを持った三都主がドリブルで入ってくるが、古賀が勇気を持ってしっかりと詰め、無理に打たせると、ボールは楢崎の正面に。
12分、左サイドで古賀をかわして田中が抜け出して左足で中へクロスを放り込んでくるが、これは楢崎の正面。
13分、中村のDFの裏へのボールにゴールに背を向けていた杉本がオーバーヘッドで相手ゴールへと向かってシュートを打つが、これは力無くGKの下へ。
15分、この日2枚目のイエローで角田が退場してしまい、名古屋は2点ビハインドで10人で戦うことを強いられることに。
 
〜後半30分
17分、縦に抜け出した杉本が左に流れながらエリアの外からシュートを狙うが、これは相手GKが好セーブを見せ、弾き出されてしまう。  
19分、左でボールを持ったエメルソンが詰めていった古賀をかわすようにへと戻りながら右足で放ったシュートがゴール右に決まってしまい、追いつこうとした名古屋を突き放す3点目を決められてしまう。 【得点】
64分 エメルソン(浦和)
21分、自陣からの縦パスを受けた本田がそのまま持ち上がると、縦に杉本を走らせてゆくが、シュートにゆく前にGKにボールを押さえられてしまう。 【交代:65分・名】
中村須藤
 
23分、左に上がる渡邊の前のスペースに本田からパスが通ると、これを拾って中へと入れてゆこうとしたが、相手DFの厳しいチェックに、無理に上げたボールはゴールラインを割ってしまう。
24分、左でボールを持って上がってきたエメルソンからのパスを右でフリーで受けた田中がシュートを打ってくるが、これはクロスバーを叩き、追加点を逃れる。浦和は得点を挙げていることもあってか、各選手の動きが良く、名古屋の選手はマークに苦しんでいる状況が続いている。
 
 
28分、中央でクライトンがボールを田中に奪われると、そのまま縦にスルーパスを出してエメルソンを使おうとしたが、ここは古賀が体を入れて、縦への突破を阻止してゆく。
29分、左で渡邊の縦パスに抜け出した杉本がワンタッチでエリア内でDFをかわして勝負にゆこうとするが、かわしきれずボールを奪われてしまう。
 
〜試合終了
32分、中央をドリブルで仕掛けてきた永井が詰めた古賀をかわして、左足でシュートに来るが、これは左のポストの外へ外れる。  
35分、左にサイドチェンジしたボールを受けた田中がドリブルで仕掛けてこようとしたが、須藤が足下へのスライディングでボールをカットしてゆく。
37分、代わって入ってエドアルドがドリブルで相手エリアへ入ってゆくが、浦和DF3人に囲まれ、何もさせてもらえず、ボールをゴールラインの外へ出してしまう。浦和はリードしていることもあり、攻め急ぐことなくここへ来てゆっくりとボールを回し、時間稼ぎをし始める。名古屋としても何とか一矢報いたいところだ。
40分、自陣でボール思った須藤が大きく縦に出していったが、これは長すぎてしまう。
【交代:77分・名】
杉本エドアルド
【交代:77分・浦】
長谷部酒井
【交代:81分・浦】
山田平川
 
42分、右サイドをドリブルで平川が抜けてこようとしたが、ここは古賀がしっかりと着き、ボールを奪ってゆく。
43分、相手陣内中程やや左でのFK。エドアルドからの早いリスタートのボールを本田が相手ゴール前へと流すと、これをエドアルドが追いかけてゆくが、飛び出した相手GKが体を張って押さえてしまい、このチャンスに生かすことが出来なかった。
【交代:85分・浦】
三都主岡野
 
ロスタイム1、浦和の左からのCK。エメルソンが酒井と短く繋いでいたところを奪うと、エドアルドが本田とともに攻め上がるが、最後、相手エリア内で囲まれてしまい、それでも何とか本田がスペースに出したボールは相手DFがクリアしてしまう。そして、ここで試合が終了となり、名古屋は残念ながら5連勝を飾ることはできず、無得点のまま試合を終える結果となってしまった。最後まで本当に応援ありがとうございました。