2004 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 2nd Stage 第13節
 午後1時30分、名古屋の選手がウォーミングアップのためピッチ上に現れると、スタジアム内は浦和サポーターの激しいブーイングに騒然とした雰囲気に変貌する。これから始まる試合への序章と言うには強烈すぎる幕開けだ。
 しかし、選手たちはその声を気にすることもなく、むしろ心地よさげ、この雰囲気を味わっているような表情さえ見ることができる。ブラジル人選手たち3人はこの異常ともいえるスタジアムの雰囲気が楽しいようで、むしろ嬉しそうにこのスタジアムの様子を受け止めている。
 ピッチ上では2人1組になってボールを蹴り合いながらじっくりとコンディションを仕上げてゆく選手たち。さすがにウォーミングアップ中は真剣そのものだ。この日の試合が意味するものは、浦和のサポーターにとっては重要だろうが、名古屋のサポーターにとっても、長らく出来なかった関東地区での勝利を手に入れ、今2ndステージを出来るだけ良い順位で終えるためにも絶対に負けたくない試合だ。
 選手たちは一通り、ウォーミングアップのメニューをこなすと、各自ボールを捌き始める。秋田や古賀、吉村らは、浦和のサポーターの唸るような声がスタジアムに響き渡る中、黙々と芝生の上でダッシュを繰り返している。ウェズレイ・マルケスからのシュートを体を張って受けているGK楢崎を含め、浦和が間違いなく押し込んでくると思える以上、彼らへの負担はこれまで以上に厳しいものとなるはず。しかし、この雰囲気の中で勝ってこそ、今後に繋がる大きな力となるはず。浦和の強力攻撃陣をどれだけ押さえ込んでくれるか楽しみだ。
前 半
すさまじい浦和サポーターの応援に負けじと対抗する名古屋のサポーターの声はキックオフ間近になると全く聞こえなくなってしまう。そして、午後2時ちょうど、そんな不穏な雰囲気のまっただ中に両チーム選手が審判団に引き連れられて入場してくると、そのボルテージは最高へと上り詰めてゆく。スタンドでは浦和サポーターのまき散らす新聞による紙吹雪が飛び交い、この日の試合への意気込みが、普段以上に激しいことを感じさせる。
試合は左にエンドを取った浦和のキックオフで始まる。
GK楢崎、DFは大森・秋田・古賀、MFは角田・吉村・クライトン・中谷、そして中村、FWはウェズレイ・マルケス。
1分、相手陣内深くへとボールを持ち込んだマルケスだったが、相手DFの厳しいタックルに倒されてしまう。
2分、浦和の左からのCK。監督が気を付けろと言っていたセットプレーが早速巡ってくる。短く出したボールを浦和・三都主が右足で入れてくると、闘莉王があわせるがクロスバーの上へ。
3分、右からの浦和のCK。三都主がニアへ入れたボールはウェズレイが頭で弾き返してゆく。
4分、自陣右入った位置での浦和のFK。三都主の蹴ったボールはミスキックとなり、あっさりとタッチの外へクリアする。
5分、右に出たボールをウェズレイがドリブルで上がってゆくと、中へと入れてゆこうとしたが反対に流れてしまう。
6分、ゴールライン際への浮き球をウェズレイが右足でゴール前へ入れると、これにマルケスがヘディングシュート。しかし、惜しくも枠の上へ。
8分、自陣右先ほどより入った位置での浦和のFK。三都主がゴール前へ放り込んできたが、飛び込んできた浦和・アルパイの前でニアに入っていたウェズレイが頭でクリアしてゆく。
9分、右サイドタッチ際でボールを持って縦に抜けようとした浦和・永井へのファウルをマルケスが取られる。彼の気迫あるプレーだ。
10分、中央で中谷が戻したボールを吉村が相手DFの裏へ抜けようとするマルケスにあわせてスルーパスを出そうとしたが、これはタイミングが合わず、DFにカットされてしまう。
13分、相手ペナルティすぐ外でマルケスが抜け出そうとしてファウルを受け、ゴールに向かってやや左の好位置でFKを得る。しかし、激しいポジション取りで選手たちが交錯しあいなかなかプレーが始まらない。
15分、ウェズレイが右足でゴールに向かうボールを蹴っていったが、壁に当ててしまい、チャンスを生かせなかった。
16分、左サイドを浦和・エメルソンが抜け出してきてゴールライン際でシュートに来るがこれはラインの外へ。
17分、クライトンのハーフウェイラインからの縦パスにウェズレイが飛び出すが、ボールは相手GKの下へ。
18分、右からドリブルで上がってきた永井が中へと入って左足でシュートに来るがこれは楢崎がポストの右に弾き出す。
19分、競り合いでこぼれ出たボールを左で拾った浦和・田中が持ち上がって中へと入れてくるが、これは右に入ってきたエメルソンの後ろに抜ける。
20分、相手エリア内左でボールを持って相手DFを引きつけたウェズレイからのボールを中央で貰った中村がダイレクトで左足シュートは惜しくもクロスバーの上へ。
22分、中央でボールを持ってエメルソンが上がってきて外からシュートに来るが、ここはDF陣がしっかりとついていって阻止し、最後、中谷が落ち着いてボールを奪う。
24分、自陣左深くでの浦和のFK。三都主が短く流したボールを山田が外からミドルシュートを蹴ってくるが、これは押さえが効かず、クロスバーの上へ。
26分、相手陣内中へと入ったところでマルケスがファウルで倒され、FKを得る。ウェズレイが意表をついて外へ出そうとしたが壁に入っていた山田がこれに反応、弾かれてしまう。
27分、ウェズレイが相手選手を引きつけたところで中央にスペースが空くと、ここにクライトンがフリーで走り込んでパスを受けるとシュートにいったが、これは相手GKの正面に打ってしまい弾かれてしまった。
29分、右からのCKのボール。ショートコーナーのボールを三都主がゴール前へと入れてくると、ネネが頭であわせてくるがこれはクロスバーの上へ抜けてゆく。
31分、自陣右中程での浦和のFK。三都主のゴールに向かって曲がるボールを蹴ってきたが楢崎が飛び出して、がっちりとキャッチ。
34分、自陣左は言った位置での浦和のFKのボールを中央で浦和・長谷部が持ち込むと、最後、エメルソンを使おうとしてくるが、ここはDF陣が落ち着いて処理する。
36分、中村が戻ってボールを受けると、右に上がってゆく角田へと出してゆこうと、大きく縦に蹴っていったが、相手DFにタッチの外へ弾かれてしまう。
39分、後ろからボールを持って上がってくる浦和・アルパイをクライトンが後ろから倒してしまい、浦和にFKを与えてしまう。サントスが左足でファーサイドに上がっていたアルパイを狙って蹴り出してきたが、これはオフサイドに。
【得点】
40分、自陣からのカウンターで中村が抜け出すと、ゴールライン際で折り返したボールを相手DFをかわしてマルケスが中央で飛び込んであわせて、ゴールネットを揺らし、名古屋が浦和サポーターの目の前であざ笑うかのように見事な先制点を決める。
43分、自陣左やや入った位置で浦和のFK。山田が入れてきたボールは落ち着いて弾き返してゆく。
44分、山田がゴール前へ入れたボールを大森がクリアしたところに詰めたアルパイがダイレクトで左足シュート。しかし、楢崎が好セーブを見せ、外へとはじき出す。更にこれにネネが押し込もうしたボールは左サイドネットの外へ。
ロスタイム1、闘莉王のパスを中谷がカット、フリーでこれを持ち上がり、最後、ゴール前へと流し込むとウェズレイがシュートに行くが、相手DFに足下への守備で倒され決めることが出来なかった。
ロスタイム2、前半で厳しいタックルを受けたマルケスがここでピッチを去ることに。
ロスタイム3、名古屋1人目メンバー交代:マルケス→平林
そして、ここで前半が終了。前半だけで名古屋5枚・浦和2枚とイエローカードが乱れ飛び、試合の激しさを物語る内容となった。しかし、名古屋はワンチャンスを落ち着いて決め、前半を1−0と優位にして折り返すことができた。後半はより一層、相手の攻撃が厳しくなるとは思うが、しっかりと凌いで試合を押し切ってゆきたい。
後 半
エンド入れ替わり、浦和のサポーターの激しい声を背に左にエンドを取った名古屋のクックオフで試合再開。
1分、右にボールを持って永井が上がってくるが、ここは中谷がしっかりとついていって中へ入れさせず、CKにさせる。右から三都主が短く出してくると、最後ゴール前へと放り込んできたが、秋田が気迫で弾き出してゆく。
2分、ゴール前へ入ってきたボールを詰めていたエメルソンが落としたボールを三都主が右足でシュートを放ってくるがここは楢崎がしっかりと反応、ボールを押さえ込む。
4分、自陣中程ゴール正面での浦和のFK。距離があるが三都主が流したボールをエメルソンがシュートに来るが、ボールはクロスバーの上へ。
6分、左サイドタッチ沿いを三都主が上がってくるが、中村がしっかりと寄せて行き、中へとは持って行かせなかった。
7分、自陣中央でボールを持ってコースを前に向けた浦和・田中の外からのシュートは、力が無く、楢崎が難なくキャッチ。
9分、相手陣内でクライトンが浦和・鈴木をかわして抜け出そうとしたが、相手へのファウルを取られ、チャンスにすることが出来なかった。
11分、相手DFがボールの処理をもたつラインの外へ出してしまい、CKを得る。中村の左からのボールは一旦は弾かれるが、こぼれ球を相手DF陣が落ち着きを見せず、あわやオウンゴールに。
13分、またしても相手守備の乱れで左からのCK。中村のゴール前へのボールに角田が詰めていたが、相手GKが先にキャッチ。
14分、自陣でエメルソンを倒して、早いリスタートをした時に大森がエメルソンを倒したとして退場になってしまう。名古屋は残り時間30分、1人少ない10人で戦うことを余儀なくされてしまう。
15分、名古屋2人目メンバー交代:平林→井川
16分、三都主のボールをカットししたクライトンが縦に出すと、ウェズレイが上がってゆくがDFの足下へのスライディングでボールを外へと弾かれてしまう。
18分、自陣中央中程での浦和のFK。ゴール正面の危険な位置で、三都主の蹴ったボールは壁に当たって右からのCKに。
20分、自陣右中程での浦和のFK。三都主の左足でのボールはゴール前で詰めていた選手には誰も触れず、外へと出てゆく。
22分、ボールを持ってきたアルパイが残っているところに、左から上がってきた三都主へと繋がったボールがゴール前にはいって来たところにヘディングシュートに行くが、楢崎ががっちりと押さえる。
23分、浦和1人目メンバー交代:長谷部→岡野
自陣右中程での浦和のFK。三都主がタイミングを外して打ってきたが、楢崎がしっかりと押さえる。
24分、自陣からカウンターのボールで、フリーで抜け出したウェズレイがGKと1対1になると、最後、右にかわしてシュートに行くが、慌てたのポストの右に外してしまう。決まってれば楽になっていただけに残念でならない。
26分、右サイドで代わって入った岡野がドリブルで上がってきたが、古賀がしっかりとついて行き中へのボールは弾いてゆく。浦和の右からの三都主のCKのボールはウェズレイがしっかりとDFしてゆく。
27分、左からの浦和のCK。立て続けでセットプレーが続くが、ここはがんばって最後まで集中力を切らさずプレイして欲しいところ。
28分、右に抜け出したウェズレイが速攻で上がってゆくと、最後ゴール前で待つクライトンへと折り返してゆく。しかし、シュートは相手GKが弾いてしまい、決めることが出来なかった。いよいよのこり時間は15分を切ってきた。このまま最後まで浦和の攻撃を凌ぎたい。
31分、ゴール前に右から三都主が放り込んでくるが、ここは全員が集中してこれを弾いてゆく。
【得点】
32分、右からの名古屋のCK。中村がファーサイドに上がっていた古賀へと蹴ってゆくが、浦和の高い守備に弾かれてしまった。しかし、クライトンが左で右に持ち替えて放り込んだ相手ゴール前へのボールを角田がDFと競り合いながらも右足で押し込み、この時間帯になって2得点目を見事決める。浦和はこれで絶対に勝つために、2点を追いかけ、最後まで攻撃の手を緩めないはず。厳しい状況も残り10分。頑張れ、頑張れ!36分、左で永井が三都主とのパス交換で抜け出してこようとするが、井川・角田が集中してこれを押さえ込む。
37分、中央でDF前に上がってきていた浦和・アルパイが縦パスをそのままへディングシュートに来るが、ボールは楢崎が正面でキャッチ。
39分、左でエメルソンがシュートに入ってこようとするが、ここはついていった井川がしっかりとこれを押さえ、ゴールには打たせなかった。
浦和2人目メンバー交代:三都主→平川
40分、ペナルティ内へのドリブルで仕掛けてきたエメルソンを倒してしまい、PKを与えてしまう。更にこの判定に納得がいかないと言うクライトンに対しイエローが出され、大森に続きこの日2枚目となり退場にある。ついに名古屋は9人で残り時間を戦わなければならなくなってしまう。
【失点】
43分、このPKの場面、エメルソンが自らで蹴りに来ると、これを決め、浦和が1点を追いつきスタジアムの雰囲気が変わってしまう。
44分、浦和が一気に押し上がってくると、右から岡野の放り込んできたボールは秋田が体を張って外へ弾くと、これをウェズレイが大きくクリアしてゆく。
ロスタイム1、永井が左から放り込んできたボールに、上がっていたネネがへディングシュートに。しかし、これもクロスバーの上へ。浦和は何としても自力優勝がしたいため、GKをのぞいて全員が上がってくる。なんとしても名古屋はそれだけは阻止したい。そのためにもじっくりと時間をかけ、浦和のプレイをしっかりと凌いでゆきたい。
ロスタイム2、ゴール前に入ってきたボールがこぼれたところを田中が外からシュートに来るが、楢崎が正面でしっかりとキャッチ。
ロスタイム3、楢崎が大きく蹴り出したところで主審の笛が鳴り、試合終了に。この時点でG大阪が敗戦のため浦和の優勝が決まってしまったが、名古屋は見事な集中力と意地を見せ、2人少ないという厳しい試合を乗り切り、見事に浦和を2−1で下して、リーグ戦を5連勝、天皇杯を含めると5連勝を飾る。さらには念願の関東での久し振りの勝利という結果を挙げることが出来た。最後まで応援ありがとうございました。