第84回天皇杯サッカー選手権大会4回戦
 午後12時25分、厚い雲が上空を覆う、瑞穂のピッチに選手たちが登場すると、スタンドから大きな声援がわき起こる。いつもであれば大きな声とともに、鳴り物が鳴り響き賑やかな雰囲気包まれるスタジアムだが、今日は声だけでの応援が中心のようで、選手の名前を1人1人と呼びかけることもなく、会場内にはざわめきとBGMとなり、選手たちの蹴るボールの音が聞こえて来るという、いささかのどかな、試合直前の雰囲気となった。
 しかし、ネルシーニョ監督以下、名古屋の選手は気を緩めた様子もなく、厳しい表情を浮かべながら、ウォーミングアップを繰り広げている。J1チームの貫禄を見せつけるという意味でも、中途半端な試合はサポーターには見せられないというのも本音のところだろう。JFLの中では攻撃的は布陣で定評のあるHondaFC。そうはいってもJ1相手と言うこともあって、守備的に出て来る事は予想される。名古屋としては、DF陣は勿論、クライトン・吉村の2人が相手の攻撃を早く潰して、前線にボールを早く展開させる等、ウェズレイ・マルケスという強力2トップをきっちりとサポートする働きを見せてくれることが重要となってくるはずだ。
 12時45分、約20分ボールをしっかりと蹴り合いながら、しっかりと体を温め、気持ちを高めた選手たちは、最後にゴール周辺で思い思いにシュートやパスを繰り返し終えると、芝生の感触に満足した選手順に、ピッチを後にしていった。
〜前半15分
両チームの選手が入場し、集合写真を撮り終え、ピッチへと散らばり始めるとようやく両チームのサポーターから鳴り物入りの、元気な応援がわき起こるようになる。
右にエンドを取った、上下とも白いユニフォームのHondaFCに対し、いつも通り赤のユニフォームに身を包み、左にエンドを取って右へと攻め上がる名古屋。前半はHondaFCのキックオフで試合開始。
GK楢崎、DFは大森・秋田・古賀、MFは右から角田・吉村・クライトン・中谷、トップ下に中村。FWはウェズレイ・マルケスという、ベストな布陣で臨む。
2分、Honda・柴田が縦にパスを入れてこようとするが、競り合ったDFへのファウルでマイボール。
 
 
3分、中谷が左で縦に長く出すと、これをマルケスが追いかけるが相手DFがカットし、早速左からのCKに。中村のニアへの早いボールはマルケスが詰めていたが相手DFが先に弾いてしまう。
4分、右で角田の蹴ったボールが短くなったのをHondaFC・柴田に奪われると、中央で鈴木にパスが繋がり、これを右に流れながら持ち込んでくる。古賀がついていってシュートまではいかせなかったが、こぼれ球を拾ってシュートに。枠にはこなかったものの、出足ではHondaFCが良く、名古屋としてはしっかりと集中したいところだ。
7分、自陣からの大森の大きく出した縦のボールにウェズレイが追いついてクロスを入れていったが、中央に入っていった目留消す野頭上を越えてしまう。
8分、左サイドをマルケスが抜け出してゆくと、ついてきた中村へとパスを繋ごうとするがHondaFCの戻りが早く、ボールをカットされてしまう。
 
 
10分、中盤で両サイドにパスをチラシながら、前を伺うがなかなかボールを前線へ出せないと見ると、秋田が大きくDFの裏を狙って蹴り出してゆく。これに中村が上がっていったが、相手GKが先にボールをキャッチしてしまう。
12分、左に上がってゆくマルケスからのパスを中村が貰って左に流れながらゴール前へ入れてゆく。中央でウェズレイがタイミング良く飛び込んでいったが、相手DFが体を先に入れ、カットされてしまう。
13分、右サイドで角田が相手DFをかわして自ら持ち上がってゆこうとしたが、これは相手選手を倒してしまい、ファウルに。
14分、戻ってボールをもらい前線を伺っていたウェズレイが、HondaFC・宇留野にボールを奪われると、そのまま持ち上がってきてシュートを打ってくるが、楢崎の正面。
 
〜前半30分
16分、自陣中程でHondaFC・柴田が中盤でボールを持ってパスコースを探すところを、吉村が狙ってボールを奪い、チャンスを作らせなかった。
18分、自陣左サイドを抜け出したHondaFC・宇留野がゴール前へクロスを入れてくるが、ここは秋田が体を入れて待っていた相手選手を押さえ込み、ボールをクリアしてゆく。
20分、右サイドでマルケスが左から大きく出したボールを中村が拾って上がってゆこうとしたが、相手DFがボールをカット、チャンスにすることが出来なかった。
 
 
21分、DFの裏へボールを左で通されると、最後、HondaFC・鈴木が入ってくるが、秋田が辛うじて追いつき、ボールをはじき出してゆく。
23分、左に持ち上がってきたHondaFC・川崎の早いクロスは、ゴール前で待っていた選手の上に抜けるが、ボールへの寄せの早いHondaFCがチャンスとなるとドンドンと攻め込む場面が目立ち、守勢に回ってしまっていることもあって名古屋サポーターからはブーイングがわき起こっているこの時間帯。早く先制点を奪って試合の主導権を手に入れ、有利に試合を進めたいところだ。
 
 
26分、右サイド高い位置までクライトンが上がると、角田からの縦パスを貰って上がってゆこうとしたが、寄せてきたHondaFCのDF2人に阻まれてしまい、ボールを見失ってしまう。
27分、右サイドで相手選手と競り合いながらクライトンがタッチライン際を上がってゆこうとしたところでボールがラインを割ってしまう。マイボールと思われたが、HondaFCのボールに腹を立てる。なかなか上手く試合が運ばない事への苛立ちが見て取れる。ここは落ち着いて欲しいところだ。
 
〜前半終了
31分、右サイドで中村からのパスを受けて角田が上がってゆくとするが、ボールが流れたところを相手にカットされ、チャンスに結びつけることが出来なかった。
32分、左でボールを持ったウェズレイが前を向こうとするが、相手DFの厳しいマークにボールを持ちあがれず、苦し紛れに右サイドへと大きく出していったが、角田は追いつけず。開始から続いたHondaFCの攻めあがりも収まり、名古屋が徐々にボールを持つようになり前へと攻めあがろうとするが、今度は守備的な、硬いHondaFCのDFに苦しめられる状況が続いている。
34分、左サイドを攻めあがってきたHondaFC・宇留野が押し上がってきた川崎へと繋いでくるが、ここは秋田が守りきる。
 
 
35分、ウェズレイがドリブルで中央をスピードにのって持ち上がると、相手ペナルティエリア内へと入ったところでシュートに行くが、これは相手GKがシュートに反応、ボールを押さえてしまう。
37分、左サイドで中谷からのパスを受けたマルケスが切り返してエリアの外からシュートにいったが、これは相手GKの正面に。
39分、相手陣内中程中央でマルケス・ウェズレイが短くパス交換を繰り返しながら相手ペナルティ内へと入ってゆくが、最後のところでパスを弾かれ、シュートまで行くことが出来なかった。
40分、左サイドで中谷が中村からのスルーパスに抜け出して、ゴール前へとクロスボールを入れてゆくが、相手GKの正面に。
 
 
42分、ルーズボールをクライトンが左に流すと、これを中谷が縦に早いボールを出してゆこうとしたが、相手DFがパスコースに足を出し弾かれてしまう。
43分、右からのCKのチャンス。中村の早いボールが相手GK正面へと入ってゆくが、相手DFが先に外へと弾いてゆくと、ファーサイドでフリーで古賀が待っていたすぐ前を通過してしまった。
44分、右から角田の入れたクロスが中村の前にこぼれると、ゴール正面でフリーでシュートのチャンスに。思い切り振り抜いたボールはコースに入った相手選手に当たって弾かれてしまい、決めることは出来なかった。
 
 
ロスタイム1、左からのCK。中村が入れていったボールは簡単にクリアされてしまい、チャンスは潰されてしまう。そして、ここで前半が終了。戻ってくるイレブンにストレスの溜まった名古屋サポーターからブーイングが飛び交う。前半途中からは押し気味だった名古屋だが、相手の守備が固く攻めきれない状況で終わってしまった事への苛立ちか。後半は早い展開で先に点を奪い、試合の主導権を握り、挽回しようとして攻めざるを得ないよう相手を引きずり出させることで、固い守備を崩して、さらなる得点を狙ってゆく、という展開が必要だろう。後半に期待しよう。  
〜後半15分
1分、左でボールを持ったHondaFC・川崎が右足でクロスを入れてこようとするが、ボールは大きく反対に流れてゆく。
2分、左サイドでボールを持った吉村が縦に上がっていたクライトンに向け早いボールを出すと、これをヒールで流してDFの裏へと抜け出そうと狙うが、ボールが寄せていたDFに当たってしまい、チャンスにすることが出来ず。
4分、右から大きく出たボールを中谷が左サイドで縦にヘディングで出してゆくと、マルケスがこれに抜け出していったがオフサイドに。
6分、右に抜け出していった角田がライン際から折り返そうとしたが、DFが体を入れてしまいCKに。
7分、右からのCK。中村の入れたボールが相手に弾かれファーサイドの古賀がこれを頭で中へと戻してゆくが、これはGKがキャッチしてしまう。
 
 
 
8分、左サイド深い位置でボールを持った中村が中へと戻りながらドリブルで入ってゆくと、最後右足を振り抜いてシュートを相手ゴールに叩き込み、ようやく先制点が決まる。
10分、相手陣内左深くペナルティエリアのすぐ外でウェズレイが倒されFKに。みずからゴール右奥を狙い澄まして蹴っていったが、相手GKが片手1本ではじき出してしまい、惜しくも追加点は奪うことが出来なかった。
1点を奪ったことで名古屋の選手が動くようになり、相手選手へのプレッシャーも目立つようになる。ここで一気に相手を突き放すためにも、追加点を狙いたいところだ。
【得点】
後半8分:中村 直志(名)
 
13分、中村が右で相手パスをカット、クライトンとのワンツーで抜けようとしたが、惜しくも相手DFがこのパスを足に当てて弾かれてしまい、チャンスに繋がらなかった。
15分、HondaFCの右からのCK。柴田の左足からのボールはニアのクライトンが頭で大きく弾き出してゆく。
 
〜後半30分
17分、左からのHondaFCのCKは大森がクリアしてゆく。
18分、左でボールを受けた中村が中谷に預けると、スペースに抜け出しを狙うマルケスの前へと出してゆくが、ボールが長く相手GKの下へいってしまった。
 
 
 
20分、中央を相手選手を振りきってクライトンが突破してゆくと、右に上がってきたウェズレイへパスを出す。これを左に大きく展開。最後、マルケスが左足でシュートを落ち着いて決め、追加点が決まる。こうなったら更にたたみ掛けてゆきたい。
21分、自陣で相手の攻め上がりのボールを奪ってカウンターに出ると、左から持ち上がったマルケスのペナルティ内でのゴール前への折り返しに正面から中村が詰めていったが、僅かにタイミングが合わず、相手DFがカットしてしまう。
23分、相手陣内深くゴール正面の、好位置でFKを得ると、ウェズレイが右隅に狙って蹴っていったが、惜しくもコースを読んだ相手GKにキャッチされてしまう。
25分、右にポジションを変えていたマルケスからのゴール前へのボールに中谷があわせに行ったが、相手DFがクリア、CKに。
【得点】
後半20分:マルケス(名)
 
 
26分、右からの中村からのCKのボールを中央で角田が相手選手をはじき飛ばす勢いで飛び込んでヘディングシュートを決め、3−0とする。 【得点】
後半26分:角田(名)
29分、中央をドリブルでクライトンが上がってゆくと、右に上がってくるウェズレイに展開。右足でエリアに入ったところからシュートに行くが、僅かに左に流れ、ポストの左へ外れてしまう。 【交代:後半28分・本】
鈴木 滋吉村 和紘
鈴木 弘大里見 仁義
〜試合終了
31分、右サイドで角田からの縦へのボールにタイミング良く抜け出したウェズレイがそのまま持ち上がると、最後相手ゴール正面に詰めてきたクライトンにあわせて入れてゆくが、戻ったDFがボールを弾いてしまい、4点目は挙げることが出来なかった。  
 
33分、DFの裏へのボールにHondaFC・吉村が頭で落として抜けようとしたが、ここは秋田ががっちりと押さえ込み、プレイさせなかった。
34分、ドリブルでフリーで持ち上がっていったウェズレイが、GKと1対1になると、右足でシュートを正面から打っていったが、GKに当ててしまい惜しくも決めることは出来なかった。攻めざるを得ないHondaFCのボールを再三奪ってカウンター攻撃に移る名古屋。こうなったら正に格の違いを見せつける内容で更に追加点を奪いにゆき、そしてきっちりと完封で試合を終えたいところだ。
37分、右サイドに出たボールを相手DFが拾ったところをウェズレイが執拗に奪いに行くが、体格の差からか相手を押し倒してしまい、ファウルになってしまう。
39分、自陣でボールを持ったウェズレイが中村の走り出しに合わせて縦にスルーパスを出すと、タイミング良く抜け出してゆく。最後エリア内へと侵入したところで中央に詰めてきたマルケスへと出していったが、これは戻ってきた相手DFが先にボールに追いついてカットしてしまい、決めることが出来なかった。
42分、左でパスを受けたウェズレイが中へと流れながら右足でシュートをエリアの外から放っていったが、これは相手DFに当たってしまい、惜しくも枠には届かなかった。
3点差を付けられ意気消沈してしまったのか、HondaFCたちの動きもほとんど無くなり、名古屋の選手たちが好きなようにプレイさせて貰っているという感じの雰囲気となっているこの時間帯。
【交代:後半32分・本】
柴田 潤一郎増田 勝文
 
ロスタイム1、クライトンからのパスを貰って中へと入ってきたところで中村が倒されると、好位置でFKを得る。ウェズレイが右足で振り抜いたボールは左に綺麗に抜けていったが、ポストに弾かれてしまい、惜しくも決まらず。
ロスタイム2、左からのCK。中村の入れていったボールは惜しくもゴール前に詰めていた秋田には届かず、反対へと流れてしまう。そして、試合は終わってみれば名古屋の3−0という、堂々の横綱相撲でHondaFC相手に勝利し、5回戦へと駒を進めることに。前半は相手選手の癖が読み切れず、苦しい展開となったが、後半からは動きも良くなり、相手の攻撃は問題なく押さえ込み、FWの違いを見せつける形で追加点を重ねることが出来た。今の名古屋の勢いであればこの結果は妥当といっても間違いないはずだ。最後まで応援ありがとうございました。
後半44分:川島 啓吾