2004 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 2nd Stage 第12節
 じっとしているだけでも汗ばんでくる、秋とは思えない程の強い日差しの下で、選手たちはウォーミングアップを繰り返している。スタンドからは、選手1人1人に向け、大きな声援が湧き起こり、選手たちもその声に応えてスタンドに向けて大きく手を振る。しかし、その表情は前節・清水戦の結果が満足が入っていないのか、笑顔は全くない。特に1stでは同胞として一緒に戦っていたチームとの対戦ということもあって、井川の表情は、かっての仲間に下手なプレイを見せられないこともあってだろう、一際、厳しい雰囲気漂ってくる。彼には古巣・広島をきっちりと押さえ込んでもらおう。
 前節、定位置のはずの左サイドを大森に奪われる形となり、ベンチを温めることとなった中谷も珍しく真剣な表情でボールをさばいている。どちらかといえば寡黙な印象の彼だが、試合に限ってはレギュラーポジションは取られたくない、という闘志の現れだろう。ベンチで見守るネルシーニョ監督に向け、しっかりとアピールするためにも、持ち前の豊富な運動量と果敢な攻め上がりで、マルケスとの絶好のコンビネーションで攻撃チャンスをドンドン演出して欲しい。
 試合も終盤に入ってからの交代出場が多く、プレイ時間も少ないながら、その技術の高さから、クリエイティブで、センス溢れる個人技を幾度となく見せ、徐々に監督の信頼を勝ち得始めた平林。彼も試合前の練習で気合いが入っている選手の1人だ。長らく怪我で思うようにプレイできなかった彼だったが、今後はますますプレイに磨きがかかるはず。これからも大きな期待を寄せてゆきたい。
 午後1時45分、じっくりとウォーミングアップを繰り返してコンディションを整えた選手たちは、タップリと汗を浮かべながらロッカーへと足早に消えていった。ホーム・瑞穂でのリーグ戦はこの日が最後となる。サポーターの前で今後に繋がる、最高のパフォーマンスを選手たちには見せて欲しい。
前 半
鮮やかな緑の芝生の中で揺れる応援旗に迎えられて、両チームの選手がちびっ子を従えて入場してくると、それまでのんびりとしていたスタジアムの雰囲気が一転、緊張感が走る。ともかく今日は絶対勝利しかないはず。開始から気を緩めることなく、広島相手に厳しく攻め立てて欲しい。
右エンドの広島に対し、左から右へと攻め上がる名古屋。前半は広島のキックオフで試合が始まる。
GKは楢崎、DFは右から井川・秋田・大森、MFは角田・吉村・クライトン・中谷の順で、ひとつ前に中村。そして、FWはウェズレイ・マルケスの2人という布陣だ。
2分、中村が浮き球を頭で前に弾くと、これをウェズレイがマルケスとともに一気に持ち上がろうとするが、ここは広島の選手がしっかりと詰め、ボールを奪われてしまう。
3分、相手陣内中程右よりの位置でのFKを得る。ウェズレイのゴール前への早いボールは秋田が詰めていったが、僅かに合わず反対に抜けてしまう。
4分、広島が早い攻め上がりを見せると、最後、森崎(浩)がドリブルからDFの裏へと出してくるがオフサイド。
【得点】
7分、中村が右に開いた位置にマルケスからのパスが通ると、これをすぐに中へと折り返してゆくと、中央で詰めていたマルケスがワンタッチで裁いて右足で素早くシュートに。そして、これが見事に相手ゴールネットを揺らし早くも先制点を挙げる。
9分、中村からのパスを右に流れながらヒールで中へと流すマルケスのボールは、中央で待ち受けたウェズレイには僅かに届かず。
10分、中に寄せていた角田が縦に走るマルケスへとパスを出すと、今度は左に流れウェズレイにヒールで流してゆくが、これはタイミングが合わなかった。
11分、広島・盛田がドリブルで中央を突進してくるが、ここは秋田が落ち着いてボールを押さえ、広島の攻撃の芽を摘む。
12分、右のスペースへの縦パスをウェズレイが軽快な走りで追いつくと、中へと折り返してゆくが、相手DFが頭でカットしCKに。
【得点】
13分、右からの中村のCKのボールをニアのマルケスが頭で中へと流し込むと、ファーサイドで詰めていたウェズレイが右足でこれを押し込み、ついに待望の、ウェズレイの復活弾が相手ネットに突き刺さる。これで早くも今日は2得点。この調子で気を緩めることなく、更に攻め込んで欲しい。
17分、ドリブルで上がって来た広島・森崎(和)からの縦パスに森崎(浩)が裏へと抜け出そうとしてくるが、ここは井川が厳しいマークでこれを阻止、ボールに触らせることはなかった。
19分、右で持ち上がった角田からの裏へのボールに抜け出したウェズレイが右から早いボールを中へと入れてゆくと、中央でマルケスがあわせに行くが、これは相手GKがボールに触れ、押し込むことが出来なかった。さらにこぼれたところに中谷が詰めていったが、押し込むことが出来なかった。早々と2得点を決めたことで選手たちにも余裕が見え、ポジションチェンジを繰り返しながら相手陣内へと良い攻め上がりを見せているこの時間帯だ。
22分、自陣で相手ボールをクライトンがカットすると、カウンターに。中央で付いていった角田がクライトンにもらったボールを右に上がってゆくウェズレイにだすと、これを素早くゴール前へと放り込んでゆく。しかし、左から詰めていたマルケスには僅かに届かなかった。
25分、広島・李が遠目から意表をついてミドルシュートを放つと、これが枠内へ。しかし、楢崎が片手で外へと弾き出してゆく。
26分、右からの広島のCK。森崎(浩)の曲がるボールは簡単に縦に弾いてゆく。
27分、自陣中程ほぼゴール正面の位置での広島のFK。森崎(浩)の浮かしたボールを森崎(和)がループでシュートを打ってくるが、ボールはクロスバーの上に消えてゆく。
30分、ウェズレイが右のスペースに早いタッチでボールを出すと、これを中村が反応、追いかけてゆくが、広島DFに体を入れられてしまいボールに触れることが出来ず、チャンスに結びつけることが出来なかった。
32分、広島・森崎(和)がボールを持ったところに中村が詰めてゆくと、激しい寄せでボールを奪い、一気にカウンターへと思われたが、その前のプレイでファウルを取られてしまう。
34分、左サイドを中谷がマルケスに当てて上がってゆこうとしたが、マルケスのパスを相手DFにカットされてしまう。
35分、右サイドでクライトンがボールを持ち上がろうしたが、タッチ際に抜けたところで相手選手に足を引っかけられ、倒されてしまう。
37分、広島・大木がDFの裏へ抜け出そうとするが、秋田が頭でボールを弾き返し、チャンスを作らせなかった。
38分、右からの広島のCK。短く出した森崎(和)のボールを森崎(浩)が戻すと、マイナスに戻したボールを寄せてきた選手がゴール前へ入れようとしたが、これは精度が低く、ゴールラインの外へ大きく外れる。
39分、クライトンが左にフリーで上がる中谷へパスを通すと、これをマルケスに渡して、今度は中へと切れ込んでゆこうとしたが、ボールが流れてしまい、タッチを割ってしまう。
【失点】
40分、左サイドに抜け出した広島・服部にパスが通ると、寄せていった中村がかわされ、左足でクロスを放り込まれる。これに中央で頭から飛び込んできた大木に決められてしまい、広島に失点を許してしまう。一瞬の気の緩みからの失点となってしまった。ここは気持ちを引き締めなおして、これ以上の失点を防ぎたい。
43分、広島・李が中央でボールを持つと、そのままDFをかわして右足で強烈なミドルシュートを打ってくるが、楢崎がこれは好セーブを見せ外へとはじき出し、ピンチを逃れる。広島が1点を挙げたことで勢いづいている時間帯だけに、ここは集中してゆきたい。
ロスタイム1、左サイドでスペースへのボールに広島・服部が猛スピードでこれを拾って持ち上がろうとするが、しっかりと付いていった角田が足下のボールをタッチの外へと出して、チャンスを作らせなかった。そして、ここで前半が終了。開始から良い形で攻め込み、2得点を決めそのままいくかと思われたが、広島も徐々に盛り返し、1点を追いつく展開となった。後半は1点のリードを忘れて、更に相手陣内へと攻め込んで、追加点を挙げ、広島の勢いを奪って主導権を掴み、試合を楽に進めたいところだ。
後 半
後半はエンド代わって、右から攻め上がる名古屋のボールで後半がキックオフ。
名古屋メンバー交代:井川→藤田
後半は開始から、井川のポジションには角田が下がって、右サイドに藤田が入る形に。前半途中からスペースを付いて上がってくる服部のケアを考えてのことだろう。久し振りの出場となった藤田は良いところを見せて欲しい。
2分、クライトンからの縦のパスへウェズレイが抜け出そうしたが、僅かに相手DFの戻りが早く、パスをカットされてしまう。抜けていたら1対1になれただけに惜しいところだ。
4分、右サイドでポジションを替えていた中谷が持ち上がって、付いてきた藤田に繋ぐと、これをエリア内へと持ち込もうとしたが、相手DF2人に挟まれてしまい、ボールを奪われる。
5分、相手DFのクリアミスのボールを拾ったマルケスが右から中へと放り込んでゆくと、ファーサイドに詰めていたクライトンが右足でシュートに。しかし、これはクロスバーの上へ外れてしまう。
7分、右から広島・駒野が持ち上がってくると、中へと放り込んでくるが、これは待っていた選手がオフサイド。
8分、左サイドを広島・服部がドリブルで持ち上がってくると、中へと入れてこようとするが、これは楢崎が難なくキャッチ。この時間帯は広島の選手の方が運動量が多く、名古屋がなかなかボールを持たせてもらえない時間帯が続いている。ここを何とか凌ぎきって追加点を狙いたいところだ。
13分、左で粘ったマルケスが中へと入れると、一旦は相手DFがカットするが、最後浮いたボールをウェズレイがオーバーヘッドを狙ってゆく。しかし、ボールは上手くミートせず、相手GKがキャッチしてしまう。
14分、左サイドで広島・大木がボールを持つと、ゴール前へと狙ってボールを入れようとするが、これは精度が悪く、大きく右に流れてゆく。
16分、右サイドに出たボールを広島・大木が拾うと、エリア内へと入ってくるが、角田がこれにしっかりと付いて行きプレイさせなかった。
17分、広島の早い攻撃で裏へと抜けた李がシュートを打ってくる。楢崎の脇を抜けたボールだったが左のポストに当たって弾き帰り、運に助けられる形となる。
19分、右から上がってきた広島・駒野がゴール前へと早いクロスを放り込んでくるが、ここでも詰めてきた選手の前に角田が体を入れ、ゴールを阻止する働きを見せる。
22分、右で藤田が相手ボールをカットするとすかさず寄せてきた中村へと繋ぐ。これを一気に持ち上がってゆくと、縦に走るウェズレイへとパスが通る。最後ゴールライン際で右足で中へと放り込んでいったが、中央に詰めていったマルケスの頭上に抜けてしまった。
24分、左の服部が高い位置で右のスペースへと蹴り入れてくると、これにフリーで森崎(浩)が抜け出して拾いに来るが、間一髪、楢崎がパンチングでこれを前に弾きピンチを逃れる。
26分、自陣中よりゴールほぼ正面での広島がFK。ここはなんとしても失点を阻止したいところだ。森崎(浩)が右で蹴ると見せかけて、森崎(浩)が左足でグラウンダーのボールを入れてきたが、右のポストの外へ外れる。
27分、広島1人目メンバー交代:盛田→中山
28分、自陣右から角田が縦に走る中村にタイミングを合わせて蹴り出してゆくが、これは中にいた選手がオフサイドを取られてしまう。
29分、広島・中山がクライトンがカットしようとしたボールを更に奪って中に流すと、森崎(浩)が左足でエリアの外からシュートに来る。しかし、これは楢崎が正面でがっちりと押さえる。
2ndボールをなかなか奪えず、広島に流れが傾き始めているだけに、ここはしっかりと集中したい時間帯だ。
31分、広島2人目メンバー交代:李→前田
32分、左サイドで代わって入った広島・前田がドリブルでエリア内へと進入してこようとするが、角田が体を張ったプレーでこれを防ぐ。
33分、名古屋2人目メンバー交代:ウェズレイ→平林
34分、広島・中山がDFの裏へのボールに抜け出してくるが、ここは秋田がしっかりと付いて行き、ボールに触れさせなかった。
35分、右に持ち上がってきた広島・駒野のクロスに左から服部が飛び込んできたが、ボールが上手く当たらず、ポストの左に外す。
37分、中央でボールを受けた広島・大木がワンタッチで裏へ出すと、右から広島・前田が抜けてこようとしたがこれはオフサイドに。
38分、左に上がってきた広島・森崎(浩)のクロスは誰も触れることなく反対に抜けてゆくが、こぼれ球に詰めた駒野がそのまま外からシュートに来る。しかし、これはクロスバーを大きく超えてゆく。相変わらず広島が押し込む時間帯が続いており名古屋にとっては苦しい状況だが、ここは何とか堪え忍んでチャンスを待ちたい。
41分、左に抜けてエリア内へと入っていった中村からのクロスは誰も触れることが出来なかった。このこぼれ球を拾った藤田が反転して、右足でゴール正面に入れていったが、今度は相手DFが弾いてしまった。
42分、名古屋3人目メンバー交代:中村→豊田
43分、自陣からの楢崎のフィードを左で拾ったマルケスが中へと入っていってマイナスに戻したボールに平林が寄せていってシュートに行くが、これは相手選手に当たって弾かれてしまう。
ロスタイム1、マルケスから絶妙の裏へのボールに豊田が抜け出そうとしたが、エリアから飛び出してきた相手GKが先にクリアしてしまう。
ロスタイム2、自陣から大森が裏へと出したボールにマルケスが拾いに行こうとするが、これはタッチを割ってしまう。そして、試合はこのまま2−1という結果で終了を迎える。名古屋としてはこれで2連勝することが出来たが、後半は広島が攻撃の選手を増やして、ドンドン押し込んできたこともあって後手に回る場面が目立ち、攻撃でも消極的な部分があったところは課題の残るところだ。しかし、何はともあれ1つ1つ勝利を重ねて行き続けるという意味では、今日のこの勝ち点3は、大きな意味のあるものといえよう。最後まで応援ありがとうございました。