2004 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 2nd Stage 第11節
 細かい、肌を打つ冷たい雨が降る、ここ日本平スタジアム。そのピッチに午後2時2分過ぎ、名古屋の選手が、アウェイのスタンドに詰めかけたサポーターに出迎えられて登場してくる。スタジアムに屋内でのウォーミングアップスペースが無いこともあり、いつもより早い登場となった。
 先発メンバーは2組に分かれると、早速ボールを使ってアップを開始する。チームが勝利から遠ざかってしまっていることもあって、どの選手も表情が険しい。市原戦で復帰を果たしたウェズレイも、チームが低迷している原因のひとつが自分の出来に影響していることに責任を感じているのか、物静かで彼らしくないといっても良いだろう。しかし、その後、2グループに分かれてのボール回しでは軽快な動きを見せ、体調は戻ってきていることが分かる。彼にはチームやサポーターの前に立ちはだかる、イヤな雰囲気を払拭させる、目の覚めるようなスーパーゴールを決めて欲しい。
 対する清水のスタンドも、チーム状態が悪いことに据えかねたのか、サポーターの悲痛なメッセージが掲げられており、こちらももう負けられないという、追い込まれている状況が伝わってくる。両チームそれぞれに抱える問題・状況は違うと思うが、ともかく、今日の試合は絶対勝利が条件となっているようだ。きっと激しい内容の試合が展開されることが予想される。
 雨で濡れて、滑りやすくなっているピッチのコンディションを念入りにチェックを繰り返した選手たちは、午後2時50分、ウォーミングアップを終え、上気した表情でピッチを後にした。
前 半
朝から降り続いている雨も、この時間になると雨脚を弱めたものの、日が当たらないこともあって、気温が低く、見ているサポーターにとっても、ピッチでプレーする選手たちにとっても厳しいコンディションとなりそうだ。左にエンドを取った、ホーム・清水に対し、名古屋は右から左に攻め上がる。前半はその名古屋のキックオフで試合開始。
GKは楢崎、DFは井川・秋田・古賀、MFは角田・吉村・クライトン・大森、トップ下の位置に中村、FWはウェズレイ・マルケスという布陣だ。
1分、相手陣内右でのFK。ウェズレイが左に展開するとすぐに前線へと上がってゆき、入ってくるボールに合わせようとしたが、これは先にDFの頭に弾かれてしまった。
2分、クライトンが得意の右足アウトサイドに欠けたボールを相手DFの裏へ出すと、これに右からウェズレイが抜け出すも、惜しくもオフサイドになってしまう。
4分、右で角田がクライトンからの大きなサイドチェンジのボールを受けると、中村に当ててさらに上がってゆこうとしたが、相手DFに詰められ、ボールを弾かれてしまい、繋ぐことが出来なかった。
5分、左サイドか清水・久保山がDFを1人かわしてシュートをエリアのすぐ外から打ってくるが、これは楢崎がジャンプしてしっかりと押さえる。
6分、右で角田が寄せてきた選手を裏に出して上がってくると、相手ゴール前へ早いボールを入れてゆくが、中央に詰めていったウェズレイの足には僅かに届かず。
8分、左サイドを縦のボールに清水・平松が出てくるが井川がしっかりと足下へのスライディングでボールをタッチの外へ出してゆく。
9分、右からのCKのチャンス。中村からのゴール正面へのボールは待っていた秋田には届かずクリアされる。こぼれ球を拾って右に展開すると、中村が入れていったが、これも清水のDFに弾かれてしまう。最後、このこぼれ球を拾った吉村のミドルシュートはクロスバーの上へ。
11分、縦に清水・チョに入ったボールをダイレクトで落とすと、これに伊東が詰めてきて、左足でフリーのシュートを打ってくるが、ボールが上手くミートせず救われる。
13分、クライトンのDF裏へのふわりと浮いたボールにウェズレイが飛び出すが、僅かにタイミングが合わず、オフサイドに。
15分、清水の右からのCK。平松のニアへのボールはウェズレイがクリアしてゆく。このボールが前線の中村へと通ると、一気にドリブルで上がってゆくが、最後エリアの中でシュートに行こうとしたところで追いついてきた選手にボールを奪われ、決めることが出来なかった。
16分、清水の左からのCK。平松の入れたボールはしっかりとクリアしてゆく。
17分、左に上がってきた久保山が左足で入れてこようとしたが、吉村がしっかりと付いて行き、クロスの精度を落とさせると、ボールは楢崎が正面で簡単にキャッチする。
19分、右のスペースへのクライトンからの中村へのパスは清水DFが先に詰めて、クリアしてしまう。
20分、自陣左中程での清水のFK。平松のボールがこぼれたところをシュートを打たれるが、楢崎が好反応、外へとはじき出す好セーブを見せる。
22分、ウェズレイが相手エリアのすぐ外をドリブルで右から左へと流れながら、コースを探すが、清水DF3人に囲まれてしまい、シュートに持ってゆくことが出来ず、チャンスを生かせなかった。
24分、自陣から右のスペースへ秋田が長いボールを出してゆくと、中村がこれを拾いに行くが、ピッチに滑ったボールにタイミングが合わず、タッチの外へ出してしまう。
25分、自陣深く左エリアのすぐ外での清水のFK。平松の直接狙ったボールはウェズレイがクリアしてゆく。
27分、左の深い位置へクライトンが出したボールにマルケスが拾いに行くが、トラップしようと止めたところで体勢を崩してしまい、相手選手にボールを持ち去られてしまう。
28分、右に持ち上がってきた平松からのゴール前へのボールを待ていた清水・チョがへディングシュートを狙ってくるが、ここは秋田がしっかりと体を寄せて打たせなかった。
30分、自陣からの早い展開でクライトンが持ち上がると、右に展開。これを中村がDFをかわしながらエリアの中へと入ってゆくと、左足でゴール前へと入れてゆくが、詰めていたクライトンに届く前にDFにカットされてしまった。
32分、右のスペースへ出たボールを清水・チョが拾いに行くが、古賀がしっかりとこれをマークし、チャンスを作らせなかった。
35分、クライトンからのパスを右で受けた角田がそのまま前を向くと、ミドルシュートを蹴っていったが、これは精度が悪く、クロスバーを大きく超えてしまう。ここまでは清水の攻守の切り替えが良く、マルケスに良い形でボールが繋がらず、名古屋はなかなか攻撃の形を作らせてもらえない展開が続いている。
40分、自陣から頭で吉村が大きく出したボールをマルケスがさらに頭で右のスペースに出してゆこうとするが、これは相手選手が先に拾ってしまう。
41分、吉村がまたも自陣から今度は左にスペースへと大きく出してゆくと、これに早い動き出しを見せたウェズレイが追いつこうとしたが、清水DFの壁にはじき返されてしまった。
42分、相手陣内深く左のスペースへ出たボールをマルケスが拾って早いクロスを入れていくと、中村が待っていたが、ここもDFに弾かれ触れることが出来なかった。
【得点】
43分、相手陣内ゴールライン際左の位置でのFK。ウェズレイが相手の注意をゴールに向けさせておいたところで右の空いたエリアに軽く出すと、これにマルケスが走り込んで左足でシュートをたたき込み、見事に先制点を挙げる。
ロスタイム1、自陣中程やや左での清水のFK。チョが直接狙おうと強いボールをけってくるが、低い弾道のボールとなり、壁の選手が簡単にはじき返してゆく。そして、ここで前半が終了。終了間際という良い時間帯での得点は、攻めあぐねて苦しんでいた前半のイヤなイメージを払拭するのにふさわしい、ナイスゴールといえよう。後半はこれでやりやすくなったはず。今日はやってくれそうだ。
後 半
前半は清水の早い動き出しに苦しんだものの、守備陣がこれを凌ぎきると、終了間際の先制点が生まれ、良い雰囲気で試合を折り返した名古屋。後半はこの得点をしっかりと守り、課題である先制後の失点を防いでゆきたい。
後半は右にエンドを入れ替えた清水のキックオフで試合再開。
清水1人目メンバー交代:久保山→澤登
1分、エリアのすぐ外左で清水のFK。代わったばかりの清水・澤登が右足でカーブのかかったボールを蹴ってくるが、楢崎がしっかりと反応、これをはじき返し、ピンチを凌ぐ。
2分、左サイド自陣深くでスローインのボールを拾った・平松が中へと入ってこようとするが、井川の執拗なマークを嫌い、ボールをゴールラインの外へと出す。
3分、左をドリブルで大森が果敢な上がりを見せるが、相手DFのタックルに倒されてしまう。
4分、右からのCKのチャンス。中村が短く出したボールをウェズレイが戻すと、これを左足でゴール前に入れていったが、DFに弾かれてしまった。
6分、左からの清水のFK。澤登の落ちてくるボールは楢崎が前に出てパンチングで弾き出す。
【得点】
7分、右に抜けていった角田からの早いクロスボールを中央でマルケスが合わせて、これが見事に相手ゴールネットを揺らし、2点目を決める。
9分、左サイドでボールを持って前を向いた澤登がシュートを打ってこようとするが、秋田が前に立ちはだかり、ボールを体で弾き返してゆく。
11分、清水・平松がスピードに乗って右から入ってくると、左足でシュートにこようとするが、ここでも秋田が体で止めに入り、ボールを阻止する。
12分、右に展開したボールをマルケスが早いクロスで中へと入れてゆくと、ウェズレイが頭でコースを替えて、そのままゴールへと放り込み、3点目が決まったと思われたが、これは惜しくもオフサイド。
清水2人目メンバー交代:村松→アラウージョ
14分、中央でボールを持ったクライトンが右に走っていた中村の前のスペースへとボールを出そうと蹴り出していったが、これはオフサイドに。
【失点】
15分、清水・澤登がDFの裏へのボールに抜け出し、楢崎と1対1になると、最後、これをかわして無人のゴールへとボールが入ってしまい、清水に1点を返される。
1点を返したことで清水が息を吹き返し始める。
16分、左からのゴール前へのクロスにチョが飛び込むが、ここは楢崎がヘディングシュートを押さえ、ゴールを死守する。
18分、自陣からのボールを中村がワンタッチで落として前に上がってゆくと、マルケスが前のスペースへと出してゆくが、これは惜しくもオフサイドに。
19分、右からの角田の早いクロスは、中央を入っていったウェズレイ・マルケスに届く前にDFが頭で弾き出してしまう。
21分、楢崎からのフィードを大森が縦に繋ぐと、これをマルケスが反転して縦に抜け出そうとしたが、これはタッチを割ってしまう。
23分、自陣からの縦に中村が出したボールを持ち上がっていったウェズレイが相手ゴール正面に上がってゆくマルケスに狙って斜めに入れていったが、飛び出してきた相手GKが僅かに早くボールを押さえられてしまい、3点目を決めることが出来なかった。
24分、右からのCKのチャンス。中村が入れていったボールが相手DFのクリアが小さく、ゴール前にこぼれると、マルケス、ウェズレイと押し込みに行くが、バーに嫌われてしまい、決めることが出来なかった。
26分、中央でウェズレイがマルケスとの華麗なワンツーで上がってゆくが、最後、エリアの外でもう1つ抜け出そうとしたところを押さえられてしまった。
28分、左サイドで清水・高木がDFをかわして上がってくると、ゴール前へとクロスを放り込んでくるが、吉村がこれを弾いて、浮いたボールを楢崎がしっかりとキャッチし、このピンチを凌ぐ。
30分、右から角田が相手DFを1人2人とかわして入ってゆくと、最後エリア内でシュートにゆくが、これは相手DFに当たってしまい決めることが出来ず。
32分、左からの清水のCK。澤登の右足からのゴール前へのボールは楢崎が直接キャッチ。
33分、右サイドで相手陣内深い位置で突破を図ったか角田が倒され、好位置でFKを得る。中村の蹴った早く低い弾道のボールは相手DFが弾き出してしまう。
34分、左サイドで清水・アラウージョがドリブルで抜け出してこようとするが、しっかりと秋田がついて行って、これを阻止する。
36分、清水・澤登がエリア内に抜け出すと、パスを受けて左足で角度のないところからシュートに来るが、これはクロスバーの上へ抜け、救われる。
37分、右のスペースに出たボールを中村が放り込んでゆくと、ファーサイドで待ちかまえていたウェズレイがボレーを狙いに行くが、その前で相手DFが先にカットしてしまった。
38分、右にこぼれ出たボールを清水・太田が拾って中へと繋いでくるとこれを後ろから詰めてきた平松がミドルシュート。しかし、これはジャストミートせず右に大きくはずれる。
39分、清水3人目メンバー交代:太田→北嶋
40分、相手陣内ゴール正面やや中程でボールを受けたウェズレイが前を向いて左に流れながら左足でシュートにいったが、相手GKの反応に合い、弾かれてしまった。
43分、クライトンが中央をトラップで上がってゆくと、右に展開。これをウェズレイが右足でシュートに行くが、相手DFが弾き出す。ファーサイドでマルケスがダイレクトで打っていったが、相手GKに弾かれてしまった。
ロスタイム1、清水の右からのCK。ゴール前へ早いボールが入ってくるが全員が集中してこれに対応、清水にゴールを割らせることはなかった。
ロスタイム2、自陣での浮き球が中央フリーの場所にこぼれたとこを伊東が詰めてきてシュートに来るが、これはポストの左に外れる。
ロスタイム3、左サイド深い位置で清水・アラウージョがスローインのボールを受けて中へと入ってこようとしたが、ここは井川がしっかりと体を寄せてプレイさせることはなかった。そして、長い長いロスタイムを経て、名古屋は久し振りの勝利、そして、勝ち点3をがっちりと手にすることが出来た。後半途中の得点で、清水の動きが俄然良くなり、名古屋は守勢を強いられることになったが、楢崎・秋田を中心に、全選手の気迫溢れるプレーでしっかりと最後まで2点を守りきり、チームは勝利を迎えることが出来た。時にカウンターからの早い攻め上がりで、ウェズレイ・マルケス・クライトン等の迫力ある攻撃で相手ゴールを脅かし、両チームサポーターを驚かせる場面も何度も演出し、見応えのある内容の今日の1戦となった。最後まで応援ありがとうございました。