2004 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 2nd Stage 第10節
 スタンドの下のウォーミングアップエリアで体をしっかりとほぐした選手たちは、この日のアップの仕上げをするために、ピッチへと登場すると、スタンドに詰めかけたサポーターの大声援に迎えられる。
 髪を短く刈り上げて気合い十分のウェズレイ。マルケスとともにボールを蹴り合っている姿からは、一ヶ月以上試合から遠ざかり、久しぶりの公式戦の出場ということにもかかわらず、オーラすら見える程の気迫溢れる雰囲気が漂っている。
 ボール回しを行う時でも、久しぶりの瑞穂の芝生の上でボールを扱うとは思えぬ程、軽快に左右に捌き、マルケスやクライトンと何事もないようにパスを交換していた。
 最後、ペナルティエリアの外で自らボールを流しながらシュート練習をするときも、自信たっぷりの様子で何本もボールを枠に向けて飛ばし、時に強烈なボールがGK楢崎の脇を抜けて枠に収まった時は、スタンドから大きなどよめきが聞こえてきた。
 タップリと時間をかけてシュート練習を終えたウェズレイは、慌てることなく堂々とした足取りでロッカールームへと向かってゆく。この時のスタンドからは、彼への活躍を期待するサポーターから、どの選手に対するよりも大きな拍手を送られていた。頼むぞ〜、ウェズレイ!今日こそはゴールシーンを見せてくれ!!
キックオフ前、月間ランクル賞の表彰が行われ、秋田選手が受賞しました。
前 半
午後3時、西に傾きかけた太陽の光を受けながら両チームの選手が、ちびっ子が掲げるチームフラッグに迎えられて入場してくると、スタンドに詰めかけた両チームのサポーターから大きな拍手が送られる。
右にエンドを取った市原に対し、名古屋は左にエンドを取り、右に攻め上がってゆく。試合は市原のキックオフで開始となる。
名古屋は、GK楢崎、DFは大森・海本(慶)・古賀、MFは右から角田・吉村・クライトン・中谷、トップ下の位置に中村。FWは復活・ウェズレイとマルケスの、久し振りのコンビだ。
2分、左に上がってきた市原。村井の左足のクロスは、中央で海本が右足でクリアしてゆく。
3分、自陣に下がっていたウェズレイからの左のスペースへの長いボールはマルケスに届く前に相手DFがカット。
4分、市原・羽生がサンドロとのパス交換で抜け出して中を狙って左から入れてくるが、このボールも海本が簡単に右足でクリアしてゆく。
6分、楢崎からのボールを中村が頭で落とすと、このボールを右で拾ったウェズレイが相手DFの足下を抜いて中へとスルーパスを出してゆく。これをマルケスがDFの間から飛び出して拾おうとしたが惜しくも副審の旗が上がってしまう。
8分、市原・羽生の早いゴール前へのクロスにサンドロが飛び込んで来るが、今度は海本が頭で弾き出してゆく。
9分、右からのCK。中村が短く出したボールをウェズレイが戻すと、ファーサイドに上げてゆくが頭の上を抜けてしまう。
10分、相手陣内左深い位置で古賀が倒されFKを得る。ウェズレイが早く低いボールをニアに入れると、詰めていたマルケスがDFをかわしてゴールに向かって飛び出すが、これもオフサイドを取られてしまう。
12分、中央でボールを拾ったクライトンが右サイドを上がってゆく大森の前のスペースへボールをはたいてゆくが、球足が速く追いつけず。
13分、相手ボールを拾った中谷が中へと流れながら味方にパスを出そうとするがこれは相手選手に当たってしまい、チャンスに繋げることができなかった。
15分、自陣からの長い縦の、裏へのボールを抜け出したウェズレイがダイレクトでシュートに。惜しくもポスト右に外れてしまい決めることは出来なかったが、復活を示す力強いシュートだったことは見逃せない。
16分、右に抜け出し上がっていった中村からのクロスは相手DFの頭に弾かれてしまった。
17分、相手陣内中程でボールを持った中村がファーサイドに上がっていくマルケスに向けてロングボールを蹴っていったが、これもオフサイドをとられてしまう。
19分、右に上がる角田の前のスペースを狙ってクライトンがボールをけって行くがこれは相手DFに詰められ、中へと持ち込むことが出来なかった。この時間帯は名古屋が中盤でのボールの支配率で勝り、相手陣内へと攻め上がる場面が目立っている。
21分、左でボールを持った市原・村井の右に大きく展開したボールは精度が悪く、駆け上がってきたサンドロを超えてタッチの外へ。
23分、右で市原・羽生がボールを持つと追い抜かしていった坂本の足下を狙ってパスを入れてくるが、ここは古賀がしっかりとついていってそのままゴールラインを割らせる。
24分、市原の右からのCK。村井の左足から早いボールは吉村が右足でクリアしてゆく。
26分、ゴール前でのこぼれ球を市原・サンドロがDF陣を振り切って左足でシュートに来るが、このボールはクロスバーに当たってはじき返され救われる。
27分、自陣中央ゴール正面での市原のFK。左の村井をおとりになってタイミングを外し、阿部が右足で蹴ってくるが、ボールは壁に当たる。
29分、吉村のDFの裏への浮き球をウェズレイが右足をのばして当ててシュートを狙うが、GKの正面にボールが行ってしまい、惜しくも弾かれてしまう。
30分、相手陣内でのこぼれ球を、ほぼゴール正面で拾った吉村がそのままミドルシュートに。しかし、これは僅かにクロスバーの上へ。
31分、市原1人目メンバー交代:斎藤→水野
33分、左に上がってきた市原・茶野のクロスに右からサンドロが飛び込んでくるが、体勢が悪く当たったボールは右に抜けてゆく。
34分、左に持ち上がってゆく中谷から中央の中村へパスが出ると、これを前線のウェズレイへと出してゆこうとしたが、戻りの早い市原の守備陣にカットされてしまう。
35分、右からのCKのチャンス。中村からの、早いゴール前へのボールは市原のDFが頭で弾き出してしまう。
36分、相手陣内深く左の位置でドリブルで相手DF3人をかわそうとしてマルケスが倒され、好位置でFKを得る。この場面でウェズレイがゴール前を直接狙って蹴っていったが、飛び出した相手GKがキャッチしてしまう。
37分、早い展開から右に上がるウェズレイにパスが通ると、中央に上がってきたマルケスに合わせて、右サイド深い位置から折り返しを入れていくが、惜しくも相手DFに体を挟まれ、シュートに行くことが出来ず、ボールは反対サイドに抜けてしまった。ここまでは派手なシュートシーンこそ少ないが、名古屋はペナルティエリアまでボールは運んでゆくものの、市原のDF陣に攻撃を封じられる状況が続き、逆に、市原は早い動き出しでスペースを付いて仕掛けてくるものの、最後の精度が悪く、得点までには至らないという、どちらにとっても息詰まる展開が続き、試合の主導権を早く握ろうとする、両チームのせめぎ合いが続いている。
43分、楢崎からの長いフィードのボールをウェズレイが追いかけてゆくが、相手DFが体を入れてしまい、チャンスに持ってゆくことが出来なかった。
ロスタイム1、相手陣内左中程でのFK。中村が今度はゴール前へ狙って蹴っていったが、市原のDFにはじき返されてしまった。
ロスタイム2、右のスペースへウェズレイから出たボールを角田が拾って中へと入れてゆこうとしたが、相手DFに阻まれてしまう。しかし、このこぼれ球を中村が拾って左足で中へと入れてゆくと、中央でこれを受けたマルケスだったがDFにしっかりと体を寄せられ前を向かせてもらえなかった。
ロスタイム3、右サイドをドリブルで持ち上がってきた市原・水野がそのまま中へと切れ込んでシュートに来たが、これはエリアの外からということもあり、楢崎が正面でしっかりと押さえる。そして、ここで5分近くのロスタイムを経て前半終了の笛が鳴る。厳しい拮抗した展開の前半戦。このピリピリとした雰囲気を早く払拭させるためにも、早く、名古屋の先制点が、それもエース・ウェズレイのゴールが見たいところだ。
後 半
後半は、エンドを入れ替え、右から左へと攻め上がる名古屋のキックオフで試合が再開する。
市原2人目メンバー交代:サンドロ→結城
1分、相手陣内中程ゴール正面の位置でのFK。ウェズレイが念入りに芝の状態を確認して右足で直接狙って蹴ってゆくが、惜しくもポスト右に僅かに外れてしまい、決めることが出来なかった。
2分、左サイドで中谷がボールを持つと縦に出してゆこうとするが、市原・水野がジャンプでボールを押さえられてしまう。
4分、左から市原・村井が持ち上がってくると、ファーサイドへと上げてくるが、ここは守備に戻った中谷が体を張ったDFで相手のファウルを誘う。
6分、楢崎のパンチングでこぼれたボールを市原・佐藤が左足でダイレクトで打ってくるが、これはDFがコースにしっかりと入り、ボールをはじき返してゆく。
【失点】
8分、左サイドへ上がってきた市原・村井が個人技で大森をかわし、そのままシュートを放つと、これが決まってしまい、ついに均衡が破れ、市原に先制点が先に入ってしまう。
10分、相手陣内入って右の位置でのFK。中村が蹴ってゆくが、前を阻んだ壁に弾かれてしまった。
13分、右でボールを持った市原・水野がすかさず前を向くとゴール前へ入れてくるが、これは楢崎が前に出て、しっかりとキャッチ。
14分、マルケスが左で中谷とのパス交換で抜け出そうとしたが、市原の選手の早い寄せにボールを弾かれてしまう。
15分、名古屋1人目メンバー交代:中谷→平林
16分、左サイドで相手DFのボールを奪ったマルケスがそのまま持ち上がり中へと入れてこようとするが、相手の厳しいマークに倒され、入れることが出来無かった。
17分、相手陣内深く右でのFK。中村がファーサイドに上がっていた海本を狙って蹴ってゆくが、合わせたヘディングは相手選手の足下に落ち、クリアされてしまう。
19分、左からのCKのチャンス。中村のニアへの早いボールは相手選手が頭でクリアしてしまう。
20分、左サイドで角田が処理をもたついたボールを市原・羽生にさらわれると、これを持ち上がってクロスを放り込んでくる。最後、吉村が戻ってクリアするが、相手がもう一人上がってきており、相手が数的に有利な場面だっただけに救われる。
23分、相手陣内へと攻め込むと、クライトンが縦に入れたボールを平林が右で受けてそのまま強引に持ち込んでエリア内へと入って行き、シュートに持ち込もうとしたが、足下のボールへの厳しいチェックに倒され、シュートすることが出来なかった。
24分、左のスペースへのボールを、DFの裏へ上手く抜け出したウェズレイが左足でダイレクトにシュートを狙ったが、これは枠には飛ばず、左のポストの外へと外れてしまう。
26分、自陣左深い位置での市原のFK。阿部の直接狙ったボールは吉村がしっかりとはじき返してゆく。
29分、左サイド相手陣内深くでマルケスが倒されながらも粘りを見せてファウルを誘うと、絶好の位置でFKを得る。ウェズレイがゴール前へと入れたボールにファーサイドから飛び込んでゆくが、相手DFが頭でクリアしてしまった。
31分、右に上がってきた角田からのクロスにファーサイドで受けたマルケスがダイレクトに折り返すと、これを中央で待っていたウェズレイがオーバーヘッドに。しかし、これは相手DFに対しての危険なプレーとしてファウルを取られてしまう。
33分、名古屋2人目メンバー交代:中村→岡山
34分、市原の右からのCK。水野のボールにゴール正面で待っていた選手がヘディングシュートを枠に飛ばしてくるが、ここは楢崎が弾き出してゆく。
【失点】
35分、市原の左からのCK。水野のボールをゴール正面にいた阿部に頭で決められ、市原に追加点を奪われてしまう。
37分、市原・結城が退場し、1人少なくなる。
38分、左からのCK。珍しくこれをマルケスが蹴ってゆくと、正面で待って居たウェズレイがヘディングシュートに行こうとするが、その前に詰めた相手DFに先にカットされてしまった。
39分、相手陣内中央で角田がボールを持つと、DFの間に抜けていった岡山が作ったスペースを狙ってシュートを外から打っていったが、これはクロスバーの上へ抜けてしまう。
41分、クライトンが左からマルケスに預けて自ら上がってゆこうとするが、このボールは相手選手に弾かれてしまう。
42分、相手陣内エリアの外でのこぼれ球に詰めた吉村がスルーパスを出すと、これをマルケスがタイミング良く抜け出していったが、これは相手GKが飛び出して止めてしまう。
43分、相手陣内エリア近くへと攻め上がると、クライトンが右に上がってきたウェズレイを狙ってボールを入れてゆくが、これは惜しくもオフサイドに。
ロスタイム1、右からのCK。角田が蹴ってゆくが、相手選手に簡単に弾かれてしまい、このチャンスを生かすことが出来なかった。
ロスタイム2、左に上がっていた大森が蹴ったボールが相手に当たって浮き上がると、これが上がっていた海本へ。これを頭で落とすと岡山が正面に詰めて右足でシュートにいったが、相手DFに当たって弾かれてしまった。
ロスタイム3、左から攻め込んだマルケスが入れたボールが弾かれたところに詰めたクライトンが体を倒しながらも中へと折り返してゆく。このボールに右からフリーで詰めてきた平林が右足ダイレクトで打ったシュートはクロスバーの上へ。思わずスタンド中から大きなため息が漏れる。そして、試合はこのまま、0−2で得点を上げることもなく、市原の、最後まで衰えることのない運動量に屈してしまい、走りきられてしまって敗戦を喫してしまう。最後まで応援ありがとうございました。