2004 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 2nd Stage 第9節
 午後2時40分、強い西日が差し込む、日立柏サッカー場のピッチに選手たちが登場すると、ブーイングと声援とが入り交じり、まもなくキックオフとなる試合への期待の大きさを感じさせてくれる。そんな中、一際大きな声援を、メインスタンドから受けていたのが中村だ。地元出身ということもあり、知人たちも数多く詰めかけているようだ。彼の、いつも通りの落ち着いた表情の裏には、この試合にかける意気込みが熱く燃えているはずだ。
 屋内エリアでしっかりと体をほぐし、タップリと汗の浮かんだ表情で現れた選手たちは、早速ピッチに散らばると、先発陣はボール回しをスタートする。久しぶりの先発となった岡山・大森は気負っている様子を感じさせることもなく、飄々とした表情でボールを追いかけている。
 ボール回しを終えた選手たちは、その後、各自でボールを持ちながら、ピッチのコンディションをチェックしてゆく。エリア周辺ではマルケス・クライトン等が切り返しを繰り返しながら、柏のサポーターの怒号の中でも、何も聞こえないかのようにマイペースだ。彼ら2人は、中村・岡山をしっかりと引っ張ってもらい、チームの勝利を引き寄せる立役者としての活躍を見せてもらおう。
 約15分程のウォーミングアップを終えた選手たちは、さらに汗を浮かべ、気合い十分の表情でピッチを後にしていった。
前 半
照りつける西日に向かって、BGMと、黄色い旗のはためく中、両チームイレブンが入場してくる。
左にエンドを取った柏に対し、名古屋は右から左へと攻め上がってゆく。前半は柏のキックオフで試合開始。
GKは楢崎、DFは右から大森・海本(慶)・古賀、MFは角田・吉村・クライトン・中谷、トップ下には岡山、FWは中村・マルケスだ。
1分、右に上がる角田からの中へのボールを中央で受けた岡山がシュートを狙いに行くが、ここは体ごと守備に戻った柏・明神に弾かれる。
2分、右のスペースに出たボールを柏・大野が拾うと、そのまま持ち上がり、中央にスルーパスを入れ、柏・羽地に走り込ませようとしたが、大森が先に体を入れ、ファウルを誘う。
4分、左から柏・玉田がドリブルで入り込んでこようとするが、大森がしっかりとついて行って、ボールを奪う。
5分、中谷からの縦のボールをマルケスが拾いにゆくが、柏DFに先にボールに詰められ、カットされてしまう。
6分、左に持ち上がったマルケスが切り返して、クロスボールをゴール前に入れてゆくと、角田がヘディングシュートに行くが、惜しくもボールは右のポストの外へ。
8分、自陣中程左での柏のFK。大野が低いボールを蹴ってくるが、詰めていた吉村が頭で簡単にクリアしてゆく。
9分、左に出たボールを拾ったマルケスが中央に上がる中村へと出すと、これを右の角田に。このボールをゴール前へと入れてゆこうとしたが、ボールはゴールを越えてしまう。
10分、相手陣内左深くエリアのすぐ外という、好位置でFKを得る。中村が直接狙って蹴っていったが、クロスバーの上へ外してしまう。
11分、右サイドを上がってゆく吉村めがけてクライトンが縦に出していったが、これはDFにクリアされてしまう。
12分、左をスピードに乗って上がってゆくマルケスだったが、中へ入れようとしたボールはDFの厳しいスライディングに弾かれてしまう。
14分、左からの柏のCK。大野のニアへのボールは詰めていた岡山がカット。
15分、右からの柏のCK。玉田の入れたボールはファーサイドに流れ詰めていた選手がゴールラインの外へと出してしまう。
16分、左で中谷がDFの裏へ出したボールにマルケスがタイミング良くフリーで抜け出そうとしたところで、副審の旗が上がりオフサイドに。
18分、なかなか攻め手が見つからない名古屋。海本(慶)が右に大きく蹴り出してゆくが、これは上がってゆく角田が追いつく前にタッチの外へ。
19分、左に上がってゆく岡山からの中への折り返しに中村が中央で抜け出してゆくが、これも惜しくもオフサイドに。
20分、相手の攻め上がりのボールを奪うと、DFの裏へフリーで抜け出したマルケスにパスが通る。これを戻ってきたDFを切り返しでかわして右足でシュートに行ったが、慌てたのかポストの右に外してしまう。
21分、相手陣内ゴール正面エリアの外でボールを持って仕掛けてゆこうとしたマルケスが倒され、絶好の位置でFKを得る。
22分、このFKを中村が横に流したところをマルケス直接狙って蹴っていったが、ボールは壁の上を抜け、そのままクロスバーの上へ。
24分、クライトンの縦パスをマルケスがヒールで流すと、これを左で上がっていった中谷が受けると、そのまま中へと持ち込んでゆこうとしたが、DFに足下へのスライディングで倒され、ボールをカットされてしまう。
25分、右からの柏のCK。玉田のゴール正面へのボールを楢崎が正面にこぼすと、これに大野が詰めてこようとしたが、DFが落ち着いてこれを大きく蹴り出してゆく。
28分、右のスペースへと大きく海本(慶)が出したボールはそのままタッチの外へ。
29分、右からの柏のCK 。玉田が短く出したボールを増田が戻すと、これを受けた玉田の裏へのボールは増田がミスキック、ゴールラインの外へ。
チャンスは巡ってくるものの、なかなか得点に結びつけることが出来ないここまでの展開。何とか前半のうちに、1点でも2点でも得点を奪い、試合を楽にしたいところだ。
31分、ミドルシュートのボールを弾いた楢崎のこぼれ球に右から柏・玉田が詰めてくると、豪快に左足でシュートを放ってくるが、ここは楢崎が絶好の反応を見せチームのピンチを救う。
【得点】
33分、左に上がっていったマルケスからの折り返しを中央に詰めてきた角田がヘディングでシュートを落ち着いて決め、ようやく先制点が決まる。
35分、中谷とのパス交換でクライトンが上がってゆこうとしたが、相手選手に蹴られてしまい、チャンスにすることが出来なかった。
36分、相手ボールを高い位置でカットした中村がそのまま持ち上がると、最後ゴール前へ上がってきた岡山へパスを出してゆく。これを落ち着いて枠を狙って蹴っていったシュートはコースに入ったDFに弾かれ、CKに。
37分、左からのCKのチャンス。中村のゴール前へのボールに詰めていた角田がヘディングでもう1点取ろうと積極的にあわせに行ったが、僅かに頭の上を抜けてしまった。
39分、自陣中程左での柏のFK。大野のゴール前へのボールは海本(慶)が頭で弾いてゆく。
40分、攻め上がっていた柏のボールをカットしたクライトン大きく左のスペースへと出してゆくと、これを拾ったマルケスが右から上がってきた中村へとパスを通してゆくが、戻ってきた柏のDFにコースを消されてしまいシュートにゆけず、もう一度ボールをマルケスに戻す。これを左で受けたマルケスが、最後、相手GKの右上を狙ってシュートにいったが、これはジャンプしてキャッチされてしまう。
44分、相手陣内でのパスをカットした岡山がDFの裏を狙って蹴り出すと、これに中村が上手く反応し、走り込んでゆくが、僅かにタイミングが早くオフサイドを取られてしまう。
ロスタイム1、右でボールを持ち込んでゆこうとした中村。DFに前を阻まれると、中へと流れていって強引に左足で最後シュートに行ったが、柏の厚い壁にはじき返され、決めることが出来なかった。そして、ここで前半が終了に。柏の攻撃はDF陣がしっかりと押さえ込んでいるものの、名古屋も攻めあぐねていた前半の展開。しかし、実際のところは、角田の先制点でようやく楽になったというところ。チャンスは圧倒的に多かった名古屋。後半はそのチャンスを生かして、早めに追加点を奪い、試合の主導権をしっかりと握って、試合をものにしたいところだ。
後 半
前半からチャンスを掴むものの、なかなか決めきれなかった名古屋だが、楢崎の好セーブやDF陣の踏ん張りで、柏の攻撃をしのぎ、角田のへディングで先制し、試合を自分たちのものの。後半もこの勢いを続けたいところだ。
エンド変わって、左から攻め上がる名古屋のボールで後半がキックオフ。
柏1人目メンバー交代:増田→谷澤
1分、右の柏・羽地からの中へのボールを大野がフリーで受けようとしたが、しっかりとこれを呼んだ大森が体を張りながらもカットしてゆく。
3分、相手ボールを中央で拾った角田がそのまま持ち上がると、右に付いてきた中村へと繋ごうとするが、このボールは勢いが無く、DFにカットされてしまい、このチャンスを潰ぶされててしまう。
5分、右からドリブルで谷澤が入ってこようとするが、寄せていったクライトンが相手の動きを押さえながら、しっかりとボールをカットしてゆく。
6分、右からの柏のCK。玉田のファーサイドへのボールは楢崎が指先に当てはじき出す。
7分、左に上がってきた柏・谷澤が角田をかわしてゴール前へ入れてくる。このボールをフリーで詰めた玉田がダイレクトでシュートに来たが、ボールは辛うじてクロスバーの上へ抜け救われる。
9分、左から玉田が持ち込んでくると、切り返そうとしたところで芝に足を滑らせ転倒。ピンチを免れる。
【失点】
10分、自陣右の深い位置で柏・波戸を倒してしまい、危ない位置でFKを与えてしまう。この場面で玉田の左足のファーサイドへのボールを柏・明神が頭で合わせたボールが決まってしまい、同点に。
【失点】
12分、右サイドを突破されると、最後左から詰めてきた柏・大谷にヘディングシュートを決められ、柏に逆転を許してしまう苦しい展開に。ここは浮き足立たないよう落ち着いて気持ちを切り替え、まずは同点を狙いたい。
16分、中央でボールを持ち上がったクライトンからの右のスペースへのボールを中村が中央へと折り返すと、これを詰めていった吉村がエリアの外からシュートに行くが、これは相手選手に当たりゴールラインを割ってしまう。
18分、自陣中程ゴール正面での柏のFK。これを柏・玉田が流してパラシオスが蹴ってくるが、角田が気合いの入ったスライディングではじき返してゆく。
20分、名古屋1人目メンバー交代:中谷→平林
21分、右から持ち上がった中村が中にいた吉村とパス交換ではいってゆこうとしたが、ここは相手DFにパスをカットされてしまう。
23分、自陣左すぐの位置で柏のFK。波戸が出したボールをゴール前へと繋がれると、玉田が落としたボールを押しこもうとしてくるが、これはDFがしっかりとカット、クリアしてゆく。
25分、マルケスが左で岡山とのワンツーでスペースに抜け出してゆこうとするが、相手DFにボールをカットされ、チャンスに出来ず。
26分、柏2人目メンバー交代:大野→茂原
27分、右で角田が抜け出すと、中へと低いボールをけり込んでゆく。ニアで待っていた平林が、意表をついてダイレクトでこれをゴールマウスに飛ばすが、惜しくも相手GKの正面に。ここで監督は大森を左に回し、守備を4バックにと入れ替えてくる。
31分、左からの柏のCKのボールはニアの選手がクリアしてゆく。柏が逆転したことで選手たちの動き出しが良くなり、守備にもしっかりと戻るようになり、名古屋は攻め手がなかなか見つからない。
33分、相手陣内右で角田が相手DF2人に囲まれながら何とか抜け出そうとするが、ファウルを受けてしまい、チャンスに結びつけることが出来なかった。
35分、右から中村が相手選手を振りきって抜け出すと、ゴール正面へと早いクロスを入れてゆくが、詰めていったマルケスは僅かに届かず、飛び出した相手GKがキャッチしてしまう。
36分、角田がボールをキープしたのを見て海本(慶)が抜け出してゆくと、裏へとボールが出てくるが、これを拾おうとしたところへ、先に飛び出してきた相手GKがボールに触れ、チャンスをいかすことが出来なかった。
39分、名古屋2人目メンバー交代:岡山→ジョルジーニョ
40分、ジョルジーニョがキープしたボールを受けた中村がDFの裏へとはたいてゆくと、ジョルジーニョが自ら抜け出していったが、これはオフサイドになってしまう。残り時間が少なくなってきた今、早く前へ前へとボールを送り込んで、得点に結びつけてゆきたいところだ。
43分、柏3人目メンバー交代:羽地→宇野沢
自陣左入った位置での柏のFK。短く出したボールを谷澤が持ち込もうとするが、これはボールをタッチの外へとクリア。
44分、右から角田が中村が落としたボールに詰めて外からシュートに。しかし、これは惜しくもポストの僅かに右に外れてしまう。
【得点】
ロスタイム1、左深くでの大森のスローインのボールをマルケスが受けると、相手DFを2人かわして中へ入って行き、マイナスに折り返す。これを混戦の中で拾ったジョルジーニョがシュートを見事に押し込み、同点弾をたたき込み、とうとう同点とする。
ロスタイム2、エリア内でのこぼれ球を押し込まれそうになるが、DF陣が踏ん張りこれを掻き出してゆくが、エリアの外、左で拾った柏・茂原がシュートに。しかし、ボールはクロスバーの上へ抜けて行き、何とか相手のミスに救われる形で失点を免れる。そして、ここで約3分のロスタイムを経て、試合の終了を告げる主審の笛がピッチに鳴り渡る。またしても勝ちきれず、名古屋としては前半から押し込んでいただけに、実に勿体ない、勝ち点3を取り逃がしてしまう。下位に低迷していた柏と勝ち点1を分け合うという、残念な結果となってしまった。最後まで応援ありがとうございました。