2004 Jリーグ ヤマザキナビスコカップ・準決勝
 午後2時30分、抜けるような青空の下へ、浦和の選手より5分程遅れて、名古屋の選手がウォーミングアップへと登場すると、名古屋のサポーターから大きな声援が送られるが、その声に勝るとも劣らない程の大ブーイングが浦和のサポーターで埋まったアウェイ側のスタンドから湧き起こる。
 そんな不穏な雰囲気の中、ピッチでウォーミングアップを始める選手たち。台風による延期のため、予定外の休養を取ることができたことからか、選手たちの表情には、これからの熱い戦いへの気負いも無く、良い表情が伺える。そんな中で、DF陣の表情だけはちょっと雰囲気が違う。既に気合い十分のようで、海本(慶)・古賀・井川等は、浦和の強力攻撃陣と戦えることが楽しみなのか、ピッチ横で見ていても、活き活きとした雰囲気が漂って来ている。
 しかし、相変わらずマルケスだけがいつも通り、表情を変えることなく、黙々とボールを弄んでいる。彼にはエメルソンに負けない程のプレーで、遠く関東から駆けつけた浦和サポーターを失意のどん底に突き落としてほしい。
 約20分間、しっかりと体をほぐし終え、臨戦態勢の整った選手たちは、芝生の感触を簡単に確かめると、足早に名古屋のサポーターの声を背に、ロッカールームへと消えていった。ともかく、今日は勝つ、それしかない。そして、11月3日、国立の地に立つことだけを想いながら、最後まで熱戦を繰り広げて欲しい。
前 半
名古屋・浦和の両サポーターの応援でBGMが聞き取れない程の熱狂で埋まった、瑞穂陸上のピッチに両チームの選手が入場すると、ボルテージは一気に最高潮へと上り詰め、見ているだけでも手に汗がにじみ始める。br右にエンドを取った浦和に対し、左から右へと攻め上がる名古屋。前半は名古屋のキックオフで試合開始。brGK川島、DFは右から井川・海本(慶)・古賀、MFは右に海本(幸)・吉村・クライトン・左に中谷、トップ下は中村、FWはジョルジーニョとマルケスの2人、という布陣だ。浦和は山田をトップ下に置き、3トップの超攻撃的布陣で臨んできた。br1分、浦和・闘莉王がDFの裏へと長いボールを蹴ってくるがこれはゴールラインの外へ。
3分、自陣から古賀が縦に蹴り出してゆくと、ジョルジーニョが相手DFと競り合うが、高さで負けて、ボールには触れない。
4分、DFの裏へのボールに浦和・エメルソンが抜け出そうとしたが、ここは川島が落ち着いてボールを処理してゆく。
5分、自陣でのスローインのボールを持ち去ろうとしたエメルソンを倒してしまい、左深くの位置でFKを与える。山田がカーブのかかったボールをGKとDFの間に入れてくるが、判断良く飛び出した川島がパンチングで弾き出してゆく。
6分、ゴール前ペナルティボックスの外でエメルソンがドリブルで右に流れながらシュートにくるが、これはDFが前に立ちはだかり、はじき返してゆく。
7分、右のスペースにでたボールを中村が拾って中へと折り返してゆくが、中央の闘莉王が頭で弾き出してしまう。
8分、浦和・平川の縦に入れたスローインのボールに田中が走り込んでくるが、海本(慶)がしっかりと体を入れて、これを阻止、ゴールキックにする。
9分、縦パスを相手DFがこぼしたボールをジョルジーニョが拾うと、中央を走りマルケスへと繋ぎ、これを前を向いてシュートに行こうとしたが、寄せてきたDFに阻まれ、枠まではとばせず。
11分、左でフリーで上がってきた浦和・平川の中へのボールを受けた田中が右足でシュートにくるが、川島がきっちりとこれはキャッチする。
13分、浦和・鈴木が右のスペースに長いボールを出してくるが、これは精度が悪く、そのままタッチラインの外へ。
14分、左の中谷とスイッチする形で外に流れながら、中央に入っていった中谷からのパスをフリーで受けたマルケスだったが、惜しくもこれはオフサイドに。ここまでは、両チームとも決定的な場面は見られず、鍔迫り合いの状態といったところだ。
16分、自陣で相手の攻撃のボールを奪うと一気にカウンターで押し上がってゆく。しかし、左に流れながら中谷からでたパスをもらおうとしたクライトンへのパスは角度が悪く、外へ出してしまう。
18分、左からのCKのチャンス。中村のファーサイドへのボールに古賀が詰めていたが浦和DFがカットしてしまい、今度は右のCKに変わる。中村のゴール正面へのボールは相手DFが弾き出しサイド右からのCKに。もう一度中村が長いボールを蹴っていったが、これは長すぎてしまい詰めていた古賀の頭の上を惜しくも抜けてしまう。
20分、右サイドでフリーでボールを持ち上がっていった海本(幸)が平川に倒され、相手陣内右すぐの位置でFKに。中村がゴール正面に待っていたジョルジーニョに向けて蹴っていったが、これはDFに簡単に弾かれてしまう。
22分、自陣左すぐの位置での浦和のFK。山田が浮き球を入れてくるが、古賀が頭ではじき返してゆく。
23分、吉村が意表をつくミドルシュートを放つと、これに相手GKが慌てるが、惜しくもゴール右に弾かれてしまった。
24分、相手陣内でドリブルで縦に上がっていったマルケスがはじき飛ばされる形で倒され、ゴール正面の位置でのFKを得る。中央やや相手ゴールに近い位置でのFK。距離はあったがジョルジーニョが直接狙って蹴ってゆく。しかし、ボールは正面で相手GKにキャッチされてしまう。
【失点】
26分、右サイドを浦和・永井に中谷が振りきられるとゴール前へとクロスを放り込まれると、中央で待っていたエメルソンにヘディングシュートを決められてしまい、浦和に先制を許してしまう。ここまでしっかりと押さえ込んでいただけにこのゴールは残念だ。しかし、ここは早く切り替えて相手ゴールへ攻め込んで、同点にしてゆくことを早く考えてゆきたいところだ。
29分、自陣中程左の位置での浦和のFK。山田の右足で蹴ったボールはそのままゴールの右に消えてゆく。
31分、右からのCKのチャンス。中村の右足からの早いボールに海本(慶)・古賀が飛び込んでゆくが、あせることはできず、反対に抜けてしまった。
【失点】
33分、自陣ゴール前での浮き球を競りあうと、これが上手くクリアできずペナルティボックスの外でこぼれたところに詰めた田中が右足でシュートを放つと、これが川島の指先をかすめて決まってしまい、2点目を決められてしまう。
34分、右からのCKのチャンス。中村のニアへのボールは相手DFが頭ではじき返してしまう。
36分、相手陣内深くでボールを繋いでシュートを伺うが、なかなかコースを空けてもらえない。最後、クライトンが右のスペースを狙って出してゆくが、海本(幸)とはタイミングがあわず、タッチを割ってしまう。
38分、右のスペースへとでたボールを浦和・永井が中へと入れてこようとしたが、ここは古賀がこれをしっかりとよんで縦にカットしてゆく。
40分、右にポジションを変えていた浦和・田中が縦にドリブルで抜け出してゆくと、中へとクロスを入れてくるが、このボールは川島が飛び出してキャッチする。
42分、中央をスピードに乗ったドリブルでエメルソンが上がってくると、最後右に付いていた山田にパスを出してゆく。これを右足でシュートを狙ってきたが、ここはDFが足に当て、CKへ変えてゆく。
44分、相手陣内深くでボールを回すと、最後ジョルジーニョの落としたボールを中村がミドルシュート。ボールは枠へと向かったが、相手GKがしっかりとこれに反応、外へと弾かれてしまい、決めることができなかった。
ロスタイム1、相手GK前へのボールにジョルジーニョが飛び込んでゆくが、闘莉王が体を入れてしまい、触らせてもらえなかった。そして、ここで前半が終了。まさかの2失点での折り返しは厳しいところだが、まだまだ試合は予断を許さない状況。ただ、名古屋としては、押さえ込まれている両サイドをもう少し活かして、攻撃への活路を見いだしたい。そして、後半の早い時間帯に得点を奪って試合の流れを上手く掴んで主導権を握り、その勢いで、一気に同点、逆転へと試合を進めてゆきたいところだ。
後 半
相手FW陣のゴールへ向かうどん欲さの違いによる0−2という前半の結果。名古屋としては、ナビスコ杯決勝に向かうためにも、もっとシュートを打ってゆくことが必要だろう。
名古屋1・2人目メンバー交代:海本(幸)→角田、ジョルジーニョ→平林
後半は、エンド入れ替わり、左の浦和のキックオフで試合再開。
1分、右のスペースへと上がる平林にボールが出てくるが、これは相手DFに押さえ込まれ、ボールを失ってしまう。
2分、右で相手選手と競り合いながら中村がボールを持ち出そうとしたが、ここは相手選手を倒してしまい、相手ボールに。
5分、自陣で縦パスをもらったマルケスが中へと繋ごうとしてゆくがこのパスはカットされてしまう。
6分、左のスペースへのボールを持ち上がったマルケスが相手DFを切り返してかわすと、右足でシュートに行くが、これは相手DFに阻まれてしまった。
7分、右からのCK。中村からのボールを古賀がファーサイドで頭であわせようと待っていたが、前には飛ばさせてもらえず。
9分、相手陣内で相手選手の厳しいマークをかわしてスペースにボールを出したクライトンが倒されFKになると、身近味方が出したボールを遠目からクライトンがシュート。しかし、これはクロスバーの上に。
11分、右からドリブルでエメルソンが突破してこようとするが、ここは海本(慶)がしっかりとコースに入りこれを阻止する。
【失点】
13分、右に流れたエメルソンのゴール前へのクロスがこぼれたところにエリアの外でボールに詰めてきた田中がダイレクトで右足でシュートを放つと、これがゴール左隅に決まってしまい、追いつこうとしていた名古屋は、浦和に逆に突き放されてしまう形となってしまう。
14分、名古屋3人目メンバー交代:井川→岡山
16分、自陣左深くでの浦和のFK。山田が直接狙って蹴ってきたが、このシュートは川島がしっかりと読み、クロスバーの上へと弾き出してゆく。左からのゴール正面へのCKのボールは簡単にクリアしてゆく。
18分、右で平林が落としたボールを岡山が持ち上がって中へと入れてゆこうとするが、ついてきた浦和・酒井に阻まれてしまい、チャンスにすることができず。
20分、相手陣内深くで岡山、平林、吉村とパスがつながると最後DFの裏へとでたボールに平林が抜け出だしてゆくが、ここはボールに追いつけず、ゴールキックになってしまう。
21分、中央をドリブルで岡山が仕掛けてゆくが、相手選手に体を挟まれる形となり、トラップしたボールを縦に流してしまい相手ボールになってしまう。この時間帯に来て、3得点したことで浦和は前に3選手を残し、ほとんどが戻って守備にあたり、名古屋にとっては厳しい状況になり始める。焦りたくはないが、1点でも早く奪い返して、試合の流れを掴みたいところだ。
25分、浦和1人目メンバー交代:酒井→堀之内
27分、右に上がった岡山からのクロスに中央で平林が飛び込むが、相手DFにクリアされ、CKに。右からのCKのボールをゴール前でこぼれたところをシュートに行くが、浦和のDF陣の壁にはじき返されてしまい、決めることができなかった。
29分、右からのCKのチャンス。中村のニアへのボールは簡単にクリアされてしまう。
浦和2人目メンバー交代:山田→千島
30分、中央の中村から左のスペースへと長いボールが出ると、中谷がこれを拾いに行くが、ボールには追いつけず、ゴールラインを割ってしまう。
【得点】
31分、中央を抜け出した中村がそのままドリブルで持ち上がってゆくと、右足で振り抜いたボールが見事相手ゴールネットに突き刺さり、ようやく名古屋に得点が入る。
32分、左で持ち上がってきた中谷からのボールをもらったマルケスが中へと入ってゆきながらシュートにいったが、これが相手DFに当たり、DFの裏へとこぼれ岡山が拾いに行くが、オフサイドになってしまう。
34分、左に抜け出していったマルケスは中谷からのボールを縦に持ち上がると、ギリギリのところからループ気味のクロスを入れてゆくが、これには誰も詰め切ることができなかった。しかし、1点を奪ったことで、名古屋の選手の動きが目に見えて良くなりだす。ここは一気にたたみ掛けてゆきたい。
37分、中央に持ち上がった角田の左のスペースへのボールをマルケスがもらうとゴール前へと切れ込んでシュートに。しかし、これは相手GKに弾かれ、決めることができなかった。
38分、右に出たボールを浦和・千島に折り返されるが、エメルソンに詰められる前にDFがここは上手くクリアし、ピンチを救う。
【失点】
39分、ペナルティ内へ浦和・田中にドリブルで持ち込まれると、ファウルを怖がったDF陣が譲り合う形となってこれを止めきれず、そのままシュートを決められ、4得点目が決まってしまう。
40分、浦和3人目メンバー交代:永井→岡野
左からのCKのチャンス。中村のニアへの早いボールは相手DFが頭で弾き出してしまう。
42分、相手DFが蹴り出したボールをDFが折り返して相手陣内へと戻すと、これがDFの裏へこぼれ、平林が抜け出して押し込もうとしに飛び出してゆくが、相手GKが先にこれをクリアしてしまい、CKになってしまう。中村のファーサイドへのボールは待っていた古賀の前で相手DFが頭でクリアしてしまう。ここでロスタイム4分の表示がでる。名古屋としてはまだまだチャンスは残されている。最後まであきらめず、前を向いてシュートを狙っていって欲しい。
ロスタイム1、左で中谷が短くDFの裏へと出したボールをマルケスがもらって切れ込んでゆこうとしたが、オフサイドに。
ロスタイム2、相手ボールを体に当てて縦にこぼしたクライトンがこれを持ち上がると、左に上がるマルケスに繋いでゆく。最後、右足でゴール右隅を狙ってシュートに行くものの、ボールは僅かに右のポストの外へ。
ロスタイム3、右からのCKのチャンス。中村のファーサイドへのボールを古賀が折り返そうとしたが、体を寄せられ当てるのが精一杯に。そして、ぴったり4分のロスタイム後、主審の長い、試合終了を告げる笛が瑞穂陸上に鳴り渡ると、名古屋の2004年度:ナビスコ杯は終焉に。残念ながら、今の浦和の勢いは、相性の良さだけでは駄目だったようだ。名古屋は中村のゴールによる一矢は報いたものの、攻撃陣の差を見せつけられる形の試合結果となってしまった。最後まで応援ありがとうございました。