2004 Jリーグ ヤマザキナビスコカップ・準々決勝
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午後6時20分、小雨の降る瑞穂のグラウンドに選手達が登場すると、スタンドのサポーターから惜しみない声援が沸き起こる。その声に応えるようにスタンドに向けてサインボールを投げ入れた選手達は、ピッチ内へと向かうと早速、ウォーミングアップをスタートする。多少の蒸し暑さは残っているものの、ここへ来て気温がようやく下がり始めたのか、心なしか涼しさが感じられるようになる。
ピッチ内では、全選手が直前の雨で滑りやすくなったピッチを気にすることもなくウォーミングアップをじっくりと行うと、控えの選手と分かれ、GKの2人がキーパー練習を行う場所から離れた位置で、狭いエリアを使ったボール回しをスタート。調子の良さの現れなのか、マルケスは濡れたピッチを全く気にもとめずに、まさに軽やかという表現がぴったりな程の、軽いステップでボールを捌いている。
午後6時40分、10分程ピッチコンディションを確認しながらのボール回しを終えた選手達は、自分の持ち場となるスペースでボールをドリブルしたり、何度も味方の入れるボールに反応してのトラップでゴールの流れる方向を見極めたりしている。FWの1人、マルケスはボールを転がしながらエリア周辺の駈ける横では、ウェズレイがFKを川島相手に納得ゆかないのか、何本も蹴り入れている。
6時45分、先発メンバーでは最後迄残っていたウェズレイが、ペナルティアークの直ぐ外においたボールを鋭く蹴りこんでウォーミングアップを終えると、じっくりとピッチを後にして、ロッカールームへと消えていった。
前 半
試合開始直前になって再び雨が降りだし、瑞穂陸上の緑の芝と、スタンドに詰めかけたサポーターを濡らし始める。そしてちびっ子の掲げるチームフラッグに迎えられて、両チームのイレブンが入場してくる。
右にエンドを取った鹿島に対し、左から右へと攻め上がる名古屋。前半は鹿島のキックオフで試合開始。
1分、右サイドで鹿島・野沢からのパスを抜けて抜け出してきた内田がエリア内へと入り込んでくるが、ここは川島が飛び出して押さえ込み、鹿島の右からのCKに。フェルナンドの入れたボールは川島がパンチングで大きく弾き出して行く。
3分、右のスペースに吉村が出したボールを抜け出した中村が拾って上がって行くと、長いボールを折り返して行く。相手DFが体を入れてきたこともあって、左サイドにいたウェズレイは体勢を崩し、何とか前へと弾くのが精一杯だった。ここへきて雨が激しさをまし、横からの風を伴って瑞穂のグランドを激しく濡らし始める。
5分、右に出たボールを受けたウェズレイが相手DFが戻る足下を狙って、斜めにスルーパスを入れてゆこうとしたが、これは読まれてしまい、カットされてしまった。
6分、右サイドでボールを持って前を向いた鹿島・野沢。そのままDFの裏へと入れてこようとしたが、ボールは風に乗って川島が正面できっちりキャッチする。
8分、自陣中央で鹿島・本田がバロンに当ててゆこうとしたが、秋田がしっかりと体を寄せて、このボールを奪う。
9分、左からの鹿島のCK。野沢の早いボールに中央でバロンが飛び込んでくるが、体に当たったボールは大きく右に外れる。ここで雨が激しさを増し、叩きつけるような強さになり、ピッチ内の選手達を容赦なく濡らし始める。
11分、右でボールを持った鹿島・野沢がゴール前へと入れてこようとしたが、ボールはそのまま左に流れ、ゴールラインを割る。ここまでは雨で濡れたピッチのせいもあってか、鹿島がボールを支配することが目立っているが、名古屋も落ち着いて対応しており、危なげは全くない。
13分、自陣中程左よりの位置での鹿島のFK。フェルナンドの左足からの低い早いボールに相手選手が反応が遅れ、ボールはダイレクトでゴールラインの外へと外れる。雨は相変わらず強く、スタンドで声援するサポーターの声をかき消すほどの勢いだ。
16分、中村がエリアの外やや右でボールを持って前を向くと、そのままシュートに行ったが、ボールは惜しくもクロスバーの上に抜けてしまう。
17分、右サイドで角田がボールを持って抜け出してゆこうとしたが、鹿島・石川の厳しいチェックに前に行かせてもらえず。
18分、左に抜け出したマルケスがライン際から折り返したボールに右からウェズレイが飛び込んでゆくが、僅かにタイミングが合わず。
19分、相手陣内左中程でのFKのチャンス。距離はあるもののウェズレイが長いボールを相手GKとDF間を狙って蹴ってゆくと、何人かが抜け出してゆくが、惜しくもオフサイドになってしまう。
21分、左サイドでとこぼれたボールを拾った鹿島・フェルナンドがダイレクトで中へと折り返してきたが、中央で詰めた選手があわせる前に古賀が先にけり出してゆく。
22分、左からのCKのチャンス。鹿島サポーターの強烈ブーイングを背にウェズレイがニアのマルケスに低く蹴っていったが、体を寄せられていたため前に大きく弾いてしまう。
24分、中央にポジションを変えていた鹿島・新井場の右に出したボールを内田が放り込んでこようとしたが、付いていった中谷がボールをはじき返してゆく。
25分、左に抜け出した鹿島・石川のクロスに中央で待っていたバロンがヘディングシュートを打ってくるが、川島が正面でしっかりとキャッチ。
27分、鹿島の右からのCK。フェルナンドのボールに鹿島・青木が合わせようとしたが、しっかりと付いていって前を向かせなかった。
28分、右から持ち上がったウェズレイの大きなサイドチェンジのボールを受けたマルケスが相手DFをかわしてシュートに行く。枠を捕らえたものの相手GKの好セーブに合い弾かれてしまい、先制点を決めることができなかった。雨でボールが扱いにくいこともあってか、なかなかチャンスが作れない両チーム。名古屋のイレブンは、ここは慌てず、ボールをしっかりとキープして自分たちのリズムを早く作って、試合の主導権を握りたいところだ。
31分、右からのグラウンダーの裏へのボールに鹿島・バロンが抜けてこようとしたが、秋田がその前に大きくクリアしてゆく。
32分、相手陣内中程ゴールほぼ正面でのFKのチャンス。これをウェズレイが気合いを込めて蹴っていったが、塗れたボールは左へと流れてしまう。
34分、左からボールを持ったウェズレイがドリブルで仕掛けてゆこうとしたが、ここは鹿島・大岩が足下のボールをカットしてしまう。
35分、鹿島の左からのCK。野沢のニアのボールは詰めていた角田が頭ではじき返してゆく。
36分、右に流れたマルケスからの早いクロスに中央で中谷、左でウェズレイが飛び込むが、これはDFが足に当ててCKに。
【得点】
37分、左からのウェズレイのゴール前へのCKは一旦は弾かれるが、左で拾った中谷のパスを受けたウェズレイが大きく入れてゆくと、ファーサイドで待っていた角田が頭で折り返したボールをゴール前にいた井川が頭で押し込み、名古屋が先制点を決め、ついに均衡を破る。激しい雨のため、苦しい展開が続いたが、良い時間帯での得点で選手達の気持ちにもようやく落ち着きが見えだしたと言っても良いだろう。
43分、相手陣内からの石川の長いボールに、詰めていたバロンが頭で落としたボールを野沢が拾って持ち込んでゆこうとしたが、吉村がしっかりと詰めてボールを中へと入れさせず。
44分、左サイド縦に出たボールを鹿島・新井場が持ち上がろうとしたが、井川がしっかりと押さえに行き、ボールをタッチの外へと出させる。
ロスタイム1、ここへきて雨はようやく落ちつき出すものの、今度は雷が鳴り始め、まだまだこの後の天候は予断を許さない、という雰囲気だ。しかし、名古屋としてはいい形で奪った先制点をしっかりと守って、後半開始からの油断しやすい時間帯をしっかりと集中して凌ぎ、一気に試合を進めて、勝利に向かいたい。
後 半
激しい雨のため、ボールがうまく収まらず、攻撃には苦しめられた前半だったが、しかし、鹿島の攻撃には守備陣がしっかりと対応、失点することなく終えることができた。後半もこの集中力を維持して、無得点で試合を終えたい。
エンド入れ替わって右から左へと攻め上がる名古屋のボールで後半開始。
開始早々、マルケスが縦パスをDFの裏へとはたくと、これをもらったウェズレイが遠目からシュートに行ったが、ボールがうまくヒットせず、ポストの左に流れてしまう。
1分、中谷のスローインのボールをワンタッチでマルケスが縦に流して抜けて行こうとしたが、ボールが塗れたピッチに滑り、タッチラインの外へと出てしまう。
2分、中央でボールを持ったクライトンが左のスペースへと出すと、これを中谷が柔らかいタッチのボールをゴール前へ。中央で詰めていたウェズレイがこれをヘディングシュートに行くが、ボールは惜しくもポストの右。
5分、左サイドで中谷からの縦パスに抜け出したマルケスがそのまま中へと持ち込んでゆこうとしたが、ここは鹿島DFに前を阻まれ、中に入れさせてもらえなかった。
6分、DFの裏へのボールに抜け出したマルケスがペナルティ内で飛び出してきた鹿島・曽ヶ端に倒させるが、これはPKは認められず、スタジアムが騒然となる。
7分、右からのウェズレイによるCKのボールはゴール前の相手DFが前に弾いてしまい、決めることはできなかった。
9分、こぼれ玉を拾った中谷が持ち込んでゆこうとしたが、エリア近くでの相手DFの厳しい寄せにボールを弾かれてしまう。
12分、右の縦のスペースに出たボールを鹿島・野沢が拾いに来るが、古賀がしっかりと体を入れて相手に渡さず、ファウルを誘う。
14分、中盤でボールを持ったクライトンが右に上がるウェズレイに出すと、これをさらに右から上がる中村へと繋いでゆく。最後、遠目からシュートを狙ったが、ボールは惜しくも相手GKの正面に。
15分、ウェズレイが中央でマルケスとのワンツーで抜け出してゆこうとしたが、コースを読まれ、ボールをカットされてしまう。
17分、中村がDFの裏へと抜け出してゆこうとした吉村に向けてボールを縦に放り込んでゆくが、これは僅かにタイミングが合わず、オフサイドに。
鹿島1人目メンバー交代:バロン→中島
【失点】
19分、鹿島2人目メンバー交代:青木→深井
左に抜け出した鹿島・深井が折り返したボールをマークがずれてフリーでいた、鹿島・中島にヘディングで押し込まれ、ついに同点とされてしまう。
21分、自陣から中谷が中央へと早いボールをけり出してゆくと、マルケスがスルーしたところにウェズレイが受けようと走っていったが、これは相手DFが足を伸ばしてカットしてしまった。
23分、長い縦のボールを鹿島・金古と競り合いながら抜け出そうとしたマルケスが倒されるが、ここでもファウルはもらうことができなかった。
24分、相手陣内深く左の位置でマルケスがボールを受けたところで倒され、絶好の位置でFKを得る。ウェズレイの回転のかかったボールはそのままはいるかと思われたが、鹿島GKに前に弾かれ、追加点は奪えなかった。
【得点】
25分、相手陣内直ぐの位置でウェズレイがファウルで倒されると、マルケスが素早いリスタート。このボールを受けた受けた吉村からのの折り返しをマルケスが落ち着いてシュートを決め、ついに相手を突き放す得点が決まる。
27分、左からのCKのチャンス。ウェズレイが短く出したボールを吉村が戻すと、強烈にウェズレイが相手ゴールに向かって蹴っていったが、これはゴールを越えてしまう。
29分、右に抜け出して行ったウェズレイの折り返しのボールは、相手GKがパンチングで前へと弾きだしてしまう。
30分、鹿島3人目メンバー交代:石川→岩政
左から持ち上がったマルケスの中への、シュート気味のボールを相手DFが弾くと、これを詰めていたクライトンがシュートに行ったが、これは相手DFが弾いてしまう。
31分、右からのCK。ウェズレイのファーサイドのボールを秋田が頭であわせてゆくが、惜しくもGKの正面だった。
33分、左サイドでマルケスが軽妙なステップで相手DFを翻弄するが、最後深く入ってきた相手の足を引っかけることとなり、惜しくもファウルになってしまい、チャンスを作るまでには至らなかった。
34分、左で中谷の縦パスを受けて抜け出していったマルケスだったが、ペナルティ内へ入り込もうとしたところでボールが滑ってゴールラインを割ってしまう。
35分、名古屋1人目メンバー交代:中谷→山口
36分、相手DFの裏へ出たボールにタイミング良く抜け出しフリーになったマルケスがゴール正面からシュートを狙うが、これは惜しくも飛びだした相手GKに阻まれてしまい、決めることはできなかった。
37分、マルケスの出したDFの裏へのボールをフリーで受けた中村がシュートに行ったが、これも相手GKの好セーブにあい弾かれてしまう。この時間帯はほとんどの場面で名古屋がボールを支配し、鹿島に自分たちのプレーをさせていない。この勢いで最後まで突き進んでほしいものだ。
39分、右サイドで深くで鹿島・深井がこぼれ玉をねらいにくるが、ここは変わって入った山口が溌剌としたプレーで相手の前に体を入れファウルを誘う。
41分、ハーフウェイラインまで上がっていた古賀の裏へのボールは、マルケスが残り形となってしまい、オフサイドに。
42分、鹿島・金古が縦に長いボールを出して、中島を走らせようとしたが、山口がしっかりとこれをケア。ボールを拾わせなかった。
43分、DFの裏へと抜けてきた鹿島・深井が川島と1対1に。ここで飛び出していった川島が深井を倒して退場となり、この時間帯きての、まさかのPKになってしまう。
44分、名古屋2人目メンバー交代:中村→広野
ロスタイム1、鹿島・フェルナンドが左足で蹴ったPKのボールは、好判断で飛びつく広野の指先を超え枠の外へ。スタジアムは大声援というよりも、大興奮に包まれる。
ロスタイム2、相手ボールを自陣でクライトンがカットすると、これをウェズレイにパス。そして、時間をかけてキープして、左に上がる山口へと出したところで試合が終了。名古屋は苦しみながらも、最後まで試合の主導権を握り、最後PKの場面も代わって入った広野の気迫迫るが相手のミスを誘うなど、正に力の差を見せつけての勝利といえる。これでいよいよ準決勝進出が決定。こうなったら決勝まで行って、絶対優勝を狙ってゆくぞ〜!最後まで応援ありがとうございました。