2004 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 2nd Stage 第1節
午後6時35分、つい数週間までは厳しい西日が照りつけていたはずなのに、お盆を迎え、少しずつ日の長さは短くなり、今日の上空はこの時間になると、薄暗さが増し始め、薄く覆う雲の形にも秋の気配が漂い始めている。しかし、試合前の練習で選手達がピッチに登場してくると、待ちかねたサポーター達の大きな声援が、熱気を伴ってスタジアムに溢れ、たちまち、熱くヒートアップする。
2ndステージの開幕戦と言うこともあってか選手達の表情は皆厳しく、今日の試合の意味を知ってのことだろう、笑顔を見せるような選手は一人もいない。彼らが現れる前から川島と共に芦川コーチの下、黙々とゴールマウスの前でボールを受けている楢崎に至っては鬼気迫る表情と言っても良い。確かに彼にとっては久し振りのホームでの試合出場。ましてや怪我のため、代表で招集されても常に控えに甘んじることが多かった楢崎。これまでに溜まった様々な思いや鬱憤を今日はタップリと発散するような、好セーブを連発してチームの勝利に貢献して欲しい。
クライトンの来日以降、その相方として選ばれた吉村もここ数試合、良いパフォーマンスを見せ、コンディションの良さを伺わせる。海本(幸)とともに、攻守にその有り余る運動量で、スタンドに詰めかけたサポーターを沸かせるようなプレイを披露してくれると期待したい。そして、やはり最後はこの人・ウェズレイ。気持ちが入っている時は髪型を変えてくると語っていたように、短く刈り込みながらも、1本横から後ろにかけて筋を入れて、正に気合い充分なのが伺える。昨年同様、2ndステージは大爆発をしてくれるはず。これからの彼のプレイは絶対に見逃せない。そのために、まずは今日の試合で得点をしっかりと決めて貰おう。昨日の練習後も居残ってFK練習を汗をタップリ流しながらやっていたウェズレイ。果たして今日はどんなゴールを見せてくれるのか、キックオフの笛が待ち遠しいばかりだ。
キックオフ前、月間ランクル賞の表彰が行われ、中村選手が選ばれました。
前 半
右にエンドを取った大阪に対し、左から右に攻め上がる名古屋。満員で溢れるスタンドからの大きな声援を聞きながら、主審の試合開始の笛が鳴り前半が始まる。br前半は大阪のボールで試合開始。名古屋は、GK楢崎、DFは右から海本(幸)・井川・古賀・渡邊、MFはボランチに吉村、右寄りにクライトン、左は大野、トップ下の位置に中村、FWはウェズレイ・マルケスと言う、4−4−2のシステムだ。br1分、大阪・大黒がDFの裏へ出たボールに抜け出してくるが、ここは飛び出した楢崎がしっかりとボールを押さえ込み、大黒をはじき飛ばす。
3分、右でボールを持った井川が縦に出すと、これを受けたクライトンがワンタッチで縦へと出して行くが、詰めていたウェズレイはDFに前を阻まれ抜け出せず。
5分、右のスペースへと出たボールを中村が追いかけて行くが、大阪・遠藤に先にこれを拾われ、チェックに行くものの奪うことは出来なかった。
6分、右で大阪・橋本が渡邊の裏へと抜け脱すとそのまま持ち上がり、縦に中山を走らせる。これをシュートに来ようとしたが、古賀がしっかりと寄せ、枠には飛ばさせなかった。このサイドは渡邊がまだ経験が少ないこともあり狙われるはず。彼には自信に繋げてゆくためにも、しっかりとプレイして欲しい。
8分、左から中へ流れながら中村が右に上がっていたクライトンに出すと、これを簡単に縦にはたいて行く。これをウェズレイが右に流れながら中へと入れていったが、このボールは誰も詰め切れず。
10分、左タッチ際でボールを持ったマルケスが縦に上がる渡邊の前に長いボールを出すとこれを追いかけるが、ここは寄せてきたDFにコースに体を入れられてしまう。
【失点】
11分、大阪・二川に右から裏に抜け出されると、そのまま右足でシュートを決められてしまい、先制を許してしまう。
12分、右サイドを大阪・渡辺が抜け出してくるが、今度はしっかりと戻った渡邊が中へと入れようとしたボールをカットして行く。
13分、ハーフウェイラインからの長いボールを裏へと入れてくると、これに大阪・中山が抜け出してくるがトラップして落としたボールはハンドの判定で救われる。
14分、右のスペースへと早いボールが出るが、ここは選手が全体に左に寄っていたため、中村が追いかけるものの、追いつくことは出来ず。
16分、縦にボールを貰ったウェズレイが右足でコースを変えてスペースに抜けて行こうとしたマルケスに狙って出して行くが、ここは詰めていたDFがボールを足でカットしてしまう。
17分、右からの大阪のCK。大阪・フェルナンジーニョのボールに大阪・山口が頭であわせてくるが、ボールはポストの右に外れる。
18分、右に上がってきた選手のケアで左サイドが空いたところを狙われ、フリーでボールを受けた大阪・二川が右足でシュートを打ってくるが、これは慌てたのか精度を欠き、楢崎の右に大きく外れる。
20分、左のスペースに出たクライトンからのボールを渡邊が拾って中へと入れると、ウェズレイが詰めて行くがこれはシュートまで持って行けず。
21分、右に出たボールを持ち込んだ中村がクライトンに渡すとDFをかわしてファーサイドに詰めたウェズレイへと入れて行く。これをヘディングシュートに行ったが相手GKの正面で弾かれてしまう。更にこぼれ球を再度ウェズレイが頭で押し込もうとしたが、これも止められてしまい、惜しくも決めることが出来なかった。
23分、大野の出したボールをマルケスが縦に出して行こうとしたが、ここはファウルを受けてしまった。
24分、右を突破されると、ゴール正面へと流し込んだボールを大阪・大黒がシュートに来るが、これは楢崎が好セーブでしっかりと押さえる。
26分、右サイドタッチ際に早いボールを海本が出して行くと、これを中村が走りながら受けようとしたがタイミングがあわなかった。
27分、大野からの縦パスをゴール正面で受けようとしたウェズレイが倒され、好位置でFKを得る。この場面でもちろん蹴る人はウェズレイだ。慎重に壁の位置を見極めて蹴っていったが、僅かに低く、ジャンプした右端の選手に当たって弾かれてしまった。
30分、吉村からの右のスペースへと出たボールを中村が胸で落として中へと入って行こうとしたが、芝に足を取られボールを相手に渡してしまう。
31分、中盤でボールを持った中村が左足で意表をつく縦パスを出して行くが、これは味方も反応が遅れ、そのまま相手GKの下へと抜けてしまった。得点こそ先に許してしまったが、途中からは守備にも安定感を増し、試合の主導権は徐々に名古屋へと傾き始めているこの時間帯だけに早く同点にしたいところだ。
32分、大野からの右のスペースへのボールを海本が持ち込むと、そのまま縦に出して行く。マルケスが良い形で受けて反転しながらシュートに行ったが、これはDFに当たって弾かれてしまった。良い流れが来ているだけに、このセットプレイは慎重に守りたい。
34分、右からの大阪のCK。大阪・遠藤のニアへのボールは中山が合わせに来たが古賀がクリアして行く。
35分、左サイドでボールを持った大阪・中山が中へと折り返しをしたボールを大阪・フェルナンジーニョがシュートに来るがこれは楢崎が正面でしっかりとキャッチ。
36分、右に流れたボールをゴールライン際で受けた中村が中へとマイナスに入れると、ウェズレイが相手DFを2人背負いながらも強引に左足でシュートに行ったが、これは相手GKの正面だった。
38分、大阪・遠藤が右から中へと入れたボールを大阪・二川がシュートに来ようとしたボールを古賀が倒されながらも、体を張って奪い取る。
40分、右から大阪・フェルナンジーニョが長い距離を上がってくると、最後、DFの裏へとパスを出してくるものの、これはオフサイド。
41分、相手陣内で左でこぼれたパスを大野がダイレクトで裏へと入れていったが、これはマルケスがオフサイドポジションのため反応できず。
【失点】
42分、左のスペースに出たボールを大阪・中山が拾うと中央へと折り返し、これを遠藤が流したところを、大阪・大黒が拾って、詰めていった古賀がかわされたところで、シュートを打たれると、これ決決まってしまい、追加点を奪われてしまう。せっかく良い雰囲気出来ていたところだけに、ここは早く切り替えてこれ以上の失点を凌ぎたいところだ。
44分、相手陣内エリアの直ぐ外ゴール正面の位置でウェズレイが相手選手に倒されてFKか、と思われたが、これはシミュレーションとされて、逆にファウルを受けてしまう。約1分のロスタイムを経て、前半が終了。まさかの前半での2失点という予想しない展開で終わった前半。攻撃の起点の1人であるマルケスがしっかりと押さえ込まれているだけに、相手をなかなか崩し切れていない状態が目立った。後半は中村や大野にも、もう少しボールを集めて、DF陣を崩して攻撃のバリエーションを増やして行きたいところだ。後半の奮起を期待しよう。
後 半
前半は、予想した高さを生かした攻撃ではなくスピードを生かした展開に2失点を許した名古屋。後半は早い時間帯でまずは1点を取って、試合の主導権を掴んで同点、そして逆転と行きたいところだ。
名古屋1人目メンバー交代:大野→秋田
後半はエンド代わって右から左に攻め上がる名古屋のボールで試合再開。ネルシーニョ監督はこれ以上の失点を避けるためにも、秋田を入れ、慣れた3バックに戻してきた。
1分、中村から左に出たボールを拾った渡邊が折り返したボールはDFに当たって左からのCKに。
2分、左からのCKのチャンス。ウェズレイの短く出したボールを渡邊が入れて行くと、ニアの選手に当たってゴール前にこぼれるが、これは詰めていた選手が押し込もうとしたが、相手選手の人数が多くコースが無く、弾かれてしまった。
3分、秋田が短く縦に出したボールを大阪・中山にカットされると、そのままシュートに来るがこのボールは右に大きく外れる。
4分、左で渡邊がDFの間を狙って出したボールをマルケスが左にはたくと、これを左に流れていたウェズレイが貰って右足でシュートを狙うが、上手くミートしなかったのか、力無いボールが相手GKの下に行ってしまった。
7分、右から海本がドリブルで深く持ち込むと中へと折り返して行く。これを中村が受けて前を向くものの、大阪のDFの早い寄せにコースを阻まれ、シュートまで行けず。
9分、ハーフウェイライン近くでのFKのボールが左のスペースへとく出たところをマルケスが抜け出していったが、これはオフサイドに。
11分、左から大阪・フェルナンジーニョに持ち込まれると、DFをかわして中へと入れようとするが、これは古賀が縦にクリアして行く。しかし、これを再度拾われるとも右のスペースにいた遠藤にフリーで渡るが、シュートコースはしっかりと入って、チャンスは作らせなかった。
13分、DFの裏へと出たボールを大阪・フェルナンジーニョが抜け出してエリア内へとは行ってくるが、戻ったDFが何とかクリアして行く。
14分、左から渡邊の出したボールを中村がエリアの外からミドルシュートに。惜しくも枠は捕らえられず、左に外れたものの、積極性は他のメンバーも感じたことだろう。
15分、左のスペースに出たボールを拾ったウェズレイが中へと流れて行こうとしたが、ここも厳しいチェックに倒されボールを奪われてしまう。
16分、名古屋2人目メンバー交代:吉村→岩本
中盤で精力的に動いていた吉村を代えて岩本を入れ、ネルシーニョ監督はついに勝負に出たと言えるだろう。
18分、左に出たボールをウェズレイが中に流し込むと、詰めていたマルケスが体を入れ替えながら前を向こうとするが、厳しい相手DFの寄せに倒され、ボールを持たして貰えなかった。
20分、左サイドをマルケスが個人技で抜けて行くと、中に流れた渡邊がこれをトラップして入り込もうとしたが、DFにこれをカットされ、チャンスを生かし切ることが出来なかった。
21分、大阪の右からのCK。遠藤の入れたボールは縦にクリアして行く。右に出たボールをウェズレイが持ち込んでいってシュートに行くが、これはついてきた相手DFに当たってしまい、中には入らなかった。
22分、名古屋3人目メンバー交代:渡邊→中谷
大阪1人目メンバー交代:渡辺→森岡
24分、左に上がる中谷を追い越して上がった岩本の足下へのボールをゴール前へと入れて行くが、これは相手DFの頭に弾かれてしまう。
25分、相手陣内左中程でのFK。短く出したボールをマルケスがファーサイドに上がった海本に狙って蹴って行くが、このボールは僅かに届かず、頭上を抜けてゴールラインを割ってしまう。
27分、岩本の縦に出したボールを受けたマルケスが中へとダイレクトで折り返すと、これをウェズレイがファーサイドで受けようとしたが、伸ばした足には僅かに届かず、相手DFに拾われてしまう。
28分、大阪がカウンターで右の森岡が持ち上がってくるが入れてきたボールはクライトンがクリアして行く。
30分、大阪2人目メンバー交代:フェルナンジーニョ→宮本
30分、古賀が縦に出したボールを岩本が拾いに行くが、これは詰めてきたDFに奪われてしまう。
31分、中村からの縦に出たボールをマルケスが貰ってエリア内へとは行って行くと、切り返して体を入れ替えようとしたところで倒され、見事PKを得る。
【得点】
33分、このPKの歩み寄った選手はウェズレイ。じっくりと足場を整えると、ゆっくりとした足取りから強いボールをゴール右隅に決め、ついに待望の得点が決まる。
34分、大阪3人目メンバー交代:中山→吉原
左に出たボールをマルケスが拾って中に上がる中村にと繋ぐと、更に右に展開しようとするが、海本が上がって出来たスペースに出してしまい、タッチの外に出してしまう。しかし、得点を奪ったことで名古屋のリズムが良くなり始める。
36分、左に上がるクライトンがマルケスに繋ぐと、これを中央へと流し込んで行く。ウェズレイが体を入れ替えながら詰めていったが、ボールを先にDFにカットされてしまった。
38分、中央でボールを持ったマルケスが右にフリーの海本に出すと、これを中へと入れて行くが、ニアの選手に頭で弾かれ、ゴール前で詰めていたウェズレイ、マルケスには届かなかった。残り時間がいよいよ少なくなってきたが、名古屋としては、何とか同点にと早く持って行きたい。
39分、右サイドから持ち込まれると、最後中へと折り返したボールに大阪・吉原が詰めてくるが、ここは楢崎が果敢に飛び出して、このボールを押さえ、ピンチを救う働きを見せてくれる。
40分、右サイドで海本が中村に当てて上がろうと試みるがこれはDFにパスをカットされてしまう。
41分、縦に大きく秋田から出たボールを右の海本が中へと入れると、このボールをマルケスが独特のステップでDFをかわして縦にと抜け出すが、ボールが流れてしまい、最後チャンスに繋げることが出来なかった。
43分、右サイドをドリブルで抜け出してきた大阪・森岡がそのままシュート気味のボールを中へと蹴ってきたが、これは誰も詰めてきておらず、救われる。
ロスタイム1、左サイドでボールを持つと大阪・吉原が入ってこようとしたが、ここはクライトンが厳しくいってファウルを奪われるもののこれを阻止する。
ロスタイム2、右サイドでボールを貰ったウェズレイが縦にと出して行くと、中村がこれを追いかけようとするが、芝に足を滑らせボールを奪われてしまう。そして、試合はこのまま名古屋は同点に追いつくことが出来ないまま、声を沈めるサポーターが見守る中で試合終了の長い笛を聞くことになってしまった。残念ながら、数多く詰めかけたサポーターに開幕戦の勝利はプレゼント出来ませんでした。最後まで応援ありがとうございました。