第83回 天皇杯全日本サッカー選手権大会 3回戦
午後12時20分過ぎ、試合前のウォーミングアップのため選手達がピッチに登場すると、熱心なサポーターからの声援が送られる。さすがに天皇杯の3回戦、相手もJ2の横浜相手と言う事もあり、リーグ戦とはうって変わって、少々寂しい観客のため、冷え冷えとした豊田スタジアムでの今日の試合となった。
ピッチを縦に半分に横切る屋根の陰を避けるように、選手達は日の当たる場所で、入念なストレッチングを交えて、黙々とボールをけり合う。この時期は、リーグ戦が終わったということに加えて、来期に向けての契約更改の時期を選手達は迎えていることもあって、なかなか良いコンディション・モチベーションを保つ事が難しい時。しかし、試合開始の笛が鳴ってゲームが始まってしまえば、選手達はそんな事も忘れていたかのような、気迫溢れるプレイをきっと見せてくれると信じている。
1時50分、アップを終えた選手達が順にロッカーへと消えてゆく。その表情には気迫がこもっている事が伺えた。今日はやってくれそうだ。
悲願のリーグ優勝を来年こそ手に入れるためにも、溜まってしまった今年のうっぷんを晴らすべく、快勝して、天皇杯目指して駆け上がっていって欲しい。
前 半
午後1時、両チームの選手達が入場してくると、名古屋のサポーターで埋めつくされた自由席から大きな声援が沸き起こる。前半は右にエンドを取った横浜に対し、左から右に攻め上がる名古屋。横浜のキックオフでいよいよ試合が始まる。
1分、横浜が自陣右中よりの位置でFK。短く出すと、ゴール前へ放り込んでくる。上がっていた横浜・河野があわせに来るが、これは楢崎がジャンプして直接キャッチ。
3分、中央をドリブルで横浜・マシューが抜いてくると左サイドの横山に繋いでくる。これを中へと折り返してきたボールは、詰めていた岡山がカットしてゆく。
5分、右の森からのファーサイドへのボールを拾った中谷がマルケスに短く出すが、これは相手DFに弾かれる。しかし、こぼれたところにウェズレイが詰めてシュートに行くが、これは相手DFに当たってはじき返されてしまった。
7分、左サイドを横浜・小野が突破を図るが、ここは森が執拗に食らいつき、ミスを誘う。
9分、自陣からパナが相手DFの裏を狙って長いボールを蹴っていったが、これには誰も抜け出せず、相手ボールとなってしまう。
10分、横浜の左からのCK。内田のニアへのボールは一旦はクリアするものの、小さくこぼれたところを拾われ、再び右からゴール前へ放り込んでくる。詰めていた選手が頭であわせるものの、古賀が体を密着させていたため、力無いボールはクロスバーを越える。
12分、味方からのDFの裏へのボールにウェズレイがタイミング良く抜けて頭で縦に繋ごうとしたが、これはオフサイドに。
13分、横浜・マシューがエリアの外でボールを持つとそのままミドルシュートに。しかし、これはヒットせず、ボールはポスト左に外れる。
15分、自陣左深い位置での横浜のFK。ここは危険な位置だったが、簡単にゴール前に放り込んできたボールを楢崎がキャッチする。
なかなか試合の主導権の取れない名古屋。普段対戦した事のない相手だけにどうしても様子を見てつきあってしまっているところもあるが、そろそろエンジンをかけて、試合を動かしてゆきたいところだ。
17分、左サイドをマルケスがドリブルで上がってゆくと、中へと入れてゆこうとするが、横浜のDFに押さえられボールを戻してしまう。
18分、前線への長いボールにウェズレイが抜け出して拾いに行くが、これは相手GKの方が早く、先にボールを拾ってしまう。
20分、横浜・増田が右から中谷をかわして放り込んでくるが、ここはDFが落ち着いてこれを弾き出してゆく。
21分、左で中村が前に張っていたマルケスに出してゆくが、ここはボールをカットしようとした相手DFへのファウルを取られ、チャンスに出来なかった。
22分、右で岡山からの縦パスを受けた森が抜け出そうとしたが、相手のスライディングにあい、ボールを奪われてしまった。
24分、左サイドでドリブルを仕掛けてきた選手を倒してしまい相手にFKを与えてしまう。横浜・内田の高く上がったゴール前へのボールは楢崎が直接キャッチ。
26分、横浜・小野がエリアのすぐ外ゴール正面でボールを持つと、シュートを放ってきたが、これはポストの左に外れてゆく。
28分、ドリブルで仕掛けようとしたマルケスが相手ペナルティすぐ外で倒され、好位置でFKを得る。あわやPKかと思われたが、僅かにエリアの外の判定。
29分、この場面でウェズレイが枠を狙って蹴っていったが、ここは相手GKのパンチングで弾かれてしまった。しかし、こぼれ球をパナが拾って大森に繋ぐと、相手DFとGKの間へ放り込んでゆく。古賀が頭であわせようとするが、詰めてきた相手GKと交錯、ボールは止められてしまう。
32分、右に抜け出したウェズレイがゴール前へと入れてゆくと、マルケスがニアに流れながらこれを右足でシュートに。しかし、相手DFが体を寄せていた事もあって、ボールを浮かしてしまい、クロスバーの僅か上へ外してしまう。
34分、自陣左深い位置で横浜にFKを与えてしまう。これを横浜・横山がゴール前を横切るように早いボールを蹴ってきたが、これは誰に触れる出もなく、反対に抜けていってしまった。
36分、中盤で岡山がウェズレイと短く繋いでチャンスを作ろうとしたが、パスを読んだ相手選手にボールをカットされてしまう。
38分、相手陣内右サイドで岡山、森、中村とパスが繋がってゆくと、最後森が抜け出そうとしたが、その前のパスでオフサイドを取られてしまう。
40分、横浜・増田が右サイドで古賀をかわして1対1で攻め込んでくると、楢崎が飛び出してゆくが、これをかわされシュートを打ってくる。しかし、ボールの来る位置を予想してゴール前にポジションを取っていた大森が、これを大きくクリアし、チームのピンチを救う。
41分、中央で岡山の縦パスをマルケスがはたいてこれをウェズレイが拾って抜けようとしたが、ボールは相手DFにカットされてしまった。
42分、相手陣内右でのFKのチャンス。ウェズレイが上がっていたパナに合わせて蹴っていったが、ボールが僅かに高く、ファーサイドに抜けてしまい、相手選手がクリアして、このチャンスを生かす事が出来なかった。
44分、左サイドで中谷が相手ボールを奪うと、ニアで待っていたマルケスにパスを入れてゆく。これを中で待っていたウェズレイへと繋ごうとしたが、相手DFにコースを阻まれ、パスのボールを弾かれてしまう。約2分のロスタイムを経て前半が終了。横浜の守備陣が集中している事もあってか、なかなか攻撃の糸口を見つけることができない名古屋。後半は、もう少し相手守備陣を脅かすような工夫を見せた攻撃展開が必要かもしれない。後半の奮起に期待しよう。
後 半
名古屋1人目メンバー交代:マルケス→氏原
1分、右サイドで森が中からのパスを受けて抜け出そうとするが、相手の厳しいマークにあい倒されてしまう。
2分、横浜・増田の右からのゴール前への折り返しはニアのパナがクリアーする。
3分、横浜の右からのCK。内田のボールに飛び込んできた選手がダイレクトで合わせて来たがこれは精度を欠き、クロスバーの上へ。相変わらずボールへの動き出しがよい横浜にボールを拾われ、押し込まれる展開が続いている。
5分、自陣からの縦パスに抜け出したウェズレイが左に上がってゆくと、これを右に詰めてくる氏原へ上げてゆくが、ボールは長すぎてしまい、そのままゴールラインを割ってしまう。
7分、ウェズレイとのワンツーで抜け出した中谷が左から折り返してゆこうとしたが、ここは相手DFにコースに入られてしまいCKに。左からの中村のCKのボールは中央で待っていたパナの頭の僅か上に抜けてしまう。
9分、右サイド深い位置での森からのスローインのボールを岡山がダイレクトで中へ繋ぐと、2列目から飛び出してきた中村が右足でシュートに。しかし、これは僅かに左に流れ、ポストの外へ外れてしまう。
11分、自陣深く右の位置で横浜にFKを与えてしまう。短く出して、グラウンダーのボールをゴール前へと入れてきたが、ここは楢崎が落ち着いて正面で押さえる。
12分、楢崎のGKのボールを氏原が頭で縦に出すと、これに岡山が詰めてゆくが、その前に相手GKにボールを拾われてしまう。
14分、自陣左中程の位置での横浜のFK。早いリスタートでゴール前を狙ってきたがここはパナがしっかりとこれを読み、誰にも触らせなかった。
16分、横浜の右からのCK。内田のボールを頭で繋がれると、最後、横浜・山尾がヘディングシュートに来たが、これは楢崎の正面に。
17分、名古屋2人目メンバー交代:中谷→滝澤
18分、横浜1人目メンバー交代:増田→北村
19分、代わって入った滝澤からのクロスに岡山がエリアの外で受けると、相手DFの寄せてきたところを狙って裏へ出してゆくが、これは誰も抜け出せず。
20分、横浜・重田の右からの早いクロスに、交代した横浜・北村がニアで飛び込んでくるが、これはパナが付いていってこれを阻止。
21分、右からドリブルで持ち込んだ森が果敢にシュートを打ってゆくが、これは相手GKに弾かれてしまう。
22分、右からのCKのチャンスはパナ、古賀と詰めていたが、簡単に相手DFにクリアされてしまう。
24分、名古屋3人目メンバー交代:岡山→藤本
25分、左サイド深い位置でボールを拾ったウェズレイが中央で待っていた藤本にパスを繋ぐと、これをシュートに行ったが相手DFにコースを阻まれてしまい、弾かれてしまった。
26分、右サイドからドリブルで入ってきた横浜・北村がフリーでシュートを打ってきたが、ここは楢崎が好セーブを見せ、このピンチを救う。
27分、ゴール前で浮き球を藤本がヘディングシュートに行くが、これは相手GKが正面でキャッチしてしまう。
29分、自陣からのカウンターで藤本が左に上がる森に繋いでゆくと、これをドリブルでエリア内へ入って行く。相手DFをかわして上げてゆこうとしたボールを相手DFの手に当たり、ハンドの判定。PKを得る。
【得点】
30分、ウェズレイがこのPKの場面で、落ち着いてゴール左隅にシュートを決め、ついに均衡が破れる。苦しみ抜いて得た、まさに値千金の得点といえる。
33分、ハーフウェイラインでボールを持った藤本がDFの裏へとパスを出すと、これにウェズレイが飛び出すが、僅かに先に飛び出した相手GKが早く、ボールを拾われてしまう。
35分、相手陣内でボールを持った中村がエリアの外でDFの間を狙ってミドルシュートに。しかし、これはバランスを崩したのか、ポストの左に外してしまう。
38分、横浜2人目メンバー交代:重田→大久保
残り時間も僅かになってきて、芝のコンディションも良くない事もあってか、足を取られて倒れる選手も目立ち始める。ここは危ないエリアでの不用意なファウルは気を付けたいところだ。
40分、裏へのパスで抜け出し、ドリブルで上がっていった左の滝澤からのゴール前のボールに氏原が相手GKと競り合いながら前を向いてシュートに行こうとしたが、これは最後、お互いに倒れながら争ったが、シュートには行けなかった。
42分、横浜3人目メンバー交代:小野→レーマン
44分、左サイドに出たボールを横浜・河野がシュートにこようとしたが、戻った森が体を張ってこれを阻止する。
ロスタイム1、左サイドでフリーでボールを持ったウェズレイがじっくりと時間をかけて上がってゆくと、中に入っていったところで相手DFの足元を抜いたスルーパスを藤本に出してゆく。これを右足でシュートに行ったが、慌てたのか、僅かに左に流れたボールは、枠の外へ行ってしまう。およそ3分のロスタイムの後、無事、名古屋のイレブン・サポーター等は、試合終了の主審の笛を勝利の中で聞く事が出来た。しかし、この勝利でリズムを掴んで、次へと繋いで欲しい。最後まで応援ありがとうございました。