2003 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 2nd Stage 第15節
 午後1時25分過ぎ、最後の試合に応援に駆けつけてくれたサポータ席に向かって、全選手がグッズの投げ入れにピッチに登場すると、多くのサポーターから声援が沸き起こる。久しぶりの先発となる藤本に対して一際大きな声援が届いていた。
 ピッチ内では、各選手ともリラックスした様子で、ウォーミングアップを行っている。数日前に、無事入籍を果たした古賀などは、他の選手から声をかけられると、普段なら緊張気味の面もちなのが、今日は笑顔を見せ、うれしさを隠せないようだ。彼には大森不在の分、選手会長としての責任を果たす意味でも、パナ・富永英と共に、清水の攻撃をきっちりと押さえ込も、気迫あるプレイを見せて欲しいと思う。
 得点王のかかっているウェズレイも、今回は気負った様子もなく、盟友・マルケスと共に、さすがに笑顔こそ無いものの、落ち着いた雰囲気の中で、練習をこなしている。先日来から磨き上げていた“必殺技”のFKの場面を、今日は期待して見てゆきたい。
前 半
午後2時、雨も上がり、風もほとんどないピッチ上に両チームの選手が入場してくると、スタジアム内は大きな興奮と緊張感に包まれる。リーグ最後の試合となる今日の1戦。正に最後にふさわしい、最高の試合を見せて欲しい。左から攻め上がる清水に対し、右から左へと攻め上がる名古屋。前半は清水のボールで試合が始まる。今日の名古屋の布陣は、GK楢崎、DFは右から富永・パナ・古賀、MFは右から、海本・鄭・中村・中谷、トップ下には藤本が入る。FWはお馴染みのウェズレイとマルケスの2人。
1分、相手ゴール正面ペナルティエリア内にマルケスがドリブルで侵入するが、清水DF陣が一気に包囲し、パスを出させてもらえない。
2分、中央でボールを持った清水・伊東がDFの裏へ抜ける澤登にパスを通すと、これを持ち上がって中へ入れてこようとしたが、ここはついていった富永がしっかりとコースを阻み、パスを入れさせなかった。
4分、右サイドを清水・トゥットがドリブルで上がって仕掛けてくるが、パナがしっかりと寄せたところを古賀が詰めていってボールを奪う。
6分、自陣右中程での清水のFK。澤登のゴール前へのボールは鄭 容臺が頭で弾き出す。
7分、清水の左からのCKは相手選手がボールを弾いてゴールラインを割り、ゴールキックに。
9分、左サイドのスペースに出たボールにウェズレイが取りにゆくと、これを中へと折り返しを狙うが、ここは戻ってきた清水のDFに阻まれ、強引に抜いて入れたボールはゴールラインを割ってしまう。開始早々、清水が押し気味だったが、ここへ来て名古屋も落ち着きを見せ、攻撃の機会を作れるようになってくる。
11分、右サイドに抜け出した清水・トゥットがドリブルで上がってくるが、ここは中谷がきっちりと付いて行き、CKに。
12分、右からの清水のCK。三都州の入れてきたボールは楢崎がパンチング。こぼれ球を再度拾って入れてきたボールは、パナが競り勝つ。
13分、左でドリブルを仕掛けたマルケスが戻したボールを受けた中村が、距離はあるもののミドルシュートに。相手GKが正面で止めるものの、濡れて滑りやすいボールをファンブルするものの、押さえてしまった。
16分、左サイドをドリブルで抜けてゆこうとした、マルケスだったが、切り返そうとしたところで、濡れた芝に足を取られてしまい、ボールを奪われてしまった。
17分、右サイドを藤本のパスを受けた海本が突破を図るが、相手DFにボールを弾かれ、CKになってしまう。
18分、右からのCKのチャンス。藤本の入れたボールは弾かれるものの、こぼれたところにパナが詰めていったが、バウンドがあわずシュートには行けなかった。
19分、中村がボールを持つと上がってきた中谷に倒されながらもパスを出す。これをドリブルで上がっていって相手DFの間を狙ってマルケスに出してゆこうとしたが、これはコースを読まれ、カットされてしまった。
22分、藤本からのパスを受け右を上がってゆく海本だったが、相手DFのマークをかわそうとして、上げていったボールはゴールラインを割ってしまう。
23分、自陣からのパナの長いパスにウェズレイが拾いにゆくが、ここは清水のDFのマークにあい、ボールを手に入れる事が出来なかった。
25分、左サイドをドリブルで仕掛けてきた清水・安を倒してしまい、清水に危険な位置でセットプレーを与えてしまう。清水・三都主の入れてきたボールはDFが頭で弾いてゆく。
27分、中央の鄭 容臺からのパスを右で受けた藤本がワントラップして、縦に抜けてゆくが、最後折り返す事は出来ず、相手DFに阻まれボールをGKに奪われてしまう。
28分、右の前線のスペースに出たボールにウェズレイが拾いにゆくが、清水・エメルソンと交錯して倒れ、チャンスを作る事が出来なかった。
31分、中央のマルケスからのボールを右で受けたウェズレイが、ドリブルからそのまま積極的にシュートにゆくが、これは僅かにポストの右に外れ、決める事が出来ず。
33分、自陣左サイドで縦に出たボールを清水・三都主が拾いに来るが、ここは富永がコースに入り、シュートさせる事はなかった。
34分、相手ペナルティエリアすぐ外左でこぼれ球を中村がシュートにゆくが、相手DFの足に当たって弾かれる。しかし反対サイドにこぼれたところを、今度は藤本がダイレクトでシュートに行ったが、これはクロスバーの上へ外してしまう。
【失点】
36分、清水の右からのCK。清水・三都主短く出すと、これを澤登が戻したボールをゴール前に蹴ってくると、そのまま楢崎の横を抜けて決まってしまい、まさかの失点を許してしまう。
38分、中央をドリブルで上がってきた清水・安がミドルシュートを狙うが、これは上手く当たらず、力無く転がるボールは楢崎がキャッチ。先制して気を良くしたのか、清水の押し上げが増え、守勢を強いられる名古屋。ここはこれ以上の失点を抑える意味でも、残り時間僅か、しっかりと集中して守ってゆきたい。
41分、左サイドを上がってゆく中谷めがけてロングボールをパナが蹴っていったが、これは相手DFにボールを弾かれてしまい、攻撃に繋げる事が出来なかった。
43分、左から中へとドリブルで入っていった中谷からのパスを受けたマルケスが、相手GKのポジショニングを見てループ気味にミドルシュートにゆくが、上手くドライブが掛からず、クロスバーの上を抜けていってしまう。
44分、藤本の相手DFの裏へのボールにウェズレイが抜け出すが、ボールに追いつく前に相手GKにボールをキャッチされてしまった。
ロスタイム1、相手ゴール前でボールをもらったウェズレイだったがDF4人に囲まれ倒れてしまうが、こぼれ球を拾ったマルケスがシュートに。しかし、ボールは惜しくも相手GKの正面だった。そして、ここで前半が終了。濡れて滑りやすい芝と、相手DFの厳しいマークに手を焼くFW陣。前半はなかなか攻めきれなかっただけに、後半はこの辺りを工夫してゆきたいところだろう。後半に期待したい。
後 半
前半は、ちょっとした油断から失点を許してしまった名古屋としては、後半早い時間帯でまずは同点にして、チームのムードを変えてゆきたいところだ。エンド代わって名古屋のボールで後半が再開。開始早々、左に流れていた藤本からのパスを受けたマルケスがダイレクトでDFの裏へ出すと、これにウェズレイが詰めるが、先に詰めた清水DFが大きくクリアしてしまう。
1分、相手陣内入ってすぐやや左の位置でFKを得ると藤本が大きく右の前線へ蹴ってゆくが、待っていた古賀は相手DFに押さえ込まれ、これを受ける事が出来なかった。
2分、左サイドでボールを持った中村がグラウンダーのボールをゴール前へ入れてゆくと、これにウェズレイ飛び込んでいったが間に合わず。
3分、自陣で相手ボールを奪うと一気にカウンターへ。中央のウェズレイからのボールを受けたマルケスが中へと入れてゆくと、ウェズレイが走り込んでいったが、その前に相手DFに弾かれてしまう。
6分、左の藤本からのパスを受けたウェズレイが右からシュートに行ったが、これは相手DFにカットされてしまいCKに。藤本の入れたボールはそのまま相手GKに。
7分、右でボールを受けた海本が縦に藤本を走らせたが、これはボールが流れてしまい、追いつけず。
10分、中央をドリブルで上がってゆく海本だったが、右に走るウェズレイに出そうとしたところで相手DFが詰めてきたため、目を離したところでボールをカットされてしまう。
12分、清水・鶴見が安とパスをかわして抜けてこようとしたが、ここはパナが粘ってボールをカットしてゆく。
13分、左からのCK・藤本が短く出したボールをマルケスが左足で上げていったが、これは誰も触れる事が出来なかった。
14分、右からのCKのチャンス。藤本が早いボールを入れてゆくとパナが頭であわせに行ったが、ボールは反対サイドへ流れてしまった。
16分、相手陣内で中村のパスを受けたところでウェズレイが倒され、エリアすぐ外左寄りの好位置でFKを得る。ずっと練習していた場所でのこの場面で、ウェズレイは狙い通りの位置に自ら蹴ってゆくが、僅かに高く、クロスバーに当たって外に弾かれてしまった。う〜ん残念。
18分、名古屋1人目メンバー交代:中村→石塚
19分、右からの海本のゴール前に放り込んだボールにマルケスが左から飛び込んであわせに行くが、これは上手く合わせる事が出来ず弾いてしまい、こぼれたところをDFにクリアされてしまった。
20分、清水1人目メンバー交代:澤登→平松
相手陣内での浮き球を鄭が縦に出すと、これをウェズレイがダイレクトでシュートを打っていったが、これは相手GKの正面だった。
21分、清水の右からのCK。代わって入った平松が入れてくるが、これは簡単にクリアしてゆく。
23分、右に出たボールを持ち上がったウェズレイがゴール前へと流し込んでゆくが、これは誰も間に合わず、相手DFにカットされてしまう。
24分、清水・吉田が安→三都主と繋がってきたパスを受けてミドルシュートに来るが、これは精度を欠き、大きくゴールを越えてゆく。
25分、右に出たボールを藤本がゴール前へと放り込んで行くが、ヘディングに行ったウェズレイの頭には僅かに届かず。
27分、名古屋2人目メンバー交代:中谷→滝澤
清水・高木がDFの裏へパスを放り込んでくるが、これは楢崎が先にキャッチ。
29分、右サイドで清水・平松が縦のボールに抜け出してくるが、これは追いつくのが精一杯。止めたボールは古賀が奪ってゆく。
31分、相手陣内深く左の位置でのFKのチャンス。ウェズレイがこれを蹴ってゆくが、これは集中力を欠いたのか、大きく外してしまう。
【得点】
33分、右の藤本からのファーサイドへのクロスにドンピシャリで飛び込んだウェズレイが、得点王を引き寄せる、見事ヘディングシュートを決め、とうとう清水のゴールをこじ開け、同点に!34分、清水の右からのCK。三都主の蹴ったボールはニアでカット。
36分、右からのCKのチャンス。藤本に短く入れたボールは詰めていた選手にカットされてしまった。
37分、清水2人目メンバー交代:鶴見→太田
38分、左サイドを突破してきた滝澤が中へと入れてくると、ウェズレイが受けるものの、相手DFに阻まれてしまったため詰めてきた石塚にパス。これをダイレクトで打ってゆくが、シュートは外れてしまい、惜しい追加点のチャンスを失ってしまった。
【失点】
40分、右からドリブルで侵入してきた清水・平松をエリア内で倒してしまいファウルを取られPKとなってしまう。ここで三都主がこのPKをゴール右に決め、清水にまたしても離されてしまう。
42分、清水3人目メンバー交代:トゥット→北嶋
44分、左からのCKのチャンスは、簡単に相手にカットされてしまい、生かせず。
ロスタイム1、石塚がDFの裏へと浮き球を放り込むと、これにウェズレイが抜け出したが、拾う前にDFがカットしてしまう。
ロスタイム2、相手陣内中程左でのFKのチャンス。ウェズレイがゴール前へ放り込んだボールは相手GKがパンチングで弾き出してしまう。
ロスタイム3、石塚の縦パスを受けたウェズレイがさらに縦に繋いでゆこうとしたが、清水の選手にこれをカットされてしまう。最後のボールを大きく縦に蹴り出したところで主審の試合終了の笛が鳴ってしまい、残念ながら最終節を白星で飾る事は出来なかった。しかし、見事1得点を決め、得点王に輝いたウェズレイには大きな拍手を送りたい。そして、今年も最後まで応援いただき、誠にありがとうございました。