2003 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 2nd Stage 第14節
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午後1時20分、瑞穂のピッチにGK楢崎・本田が登場すると、名古屋サポーターに負けじと浦和サポーターから激しいブーイングが響き渡る中、スタンドにグッズを投げ入れて、試合前の練習へと向かう。楢崎にとっては、今日の浦和の攻撃を凌ぐことで頭がいっぱいなのか表情は厳しい。
10分ほど遅れて、残りの選手がグッズ投げ入れに登場すると、またしても激しいブーイングが浦和サイドから届く。しかし、今度は名古屋のサポーターも承知していたのか、圧倒的な声援で名古屋のイレブンを後押しする。試合開始前から既にサポーター同士は、熱い戦いが始まっていることようだ。
前日の雨の天候が嘘のように朝から晴れ渡った今日の名古屋。しかし、ピッチ上には冷たい風が吹き抜け、じっとしていると体温を奪われ、震え上がるほどだ。そんな中、黙々とウォーミングアップに余念のない名古屋の選手たち。楢崎同様、今日の試合の意味をよく知っているDFの3人は、表情が厳しい。大森・パナ・古賀ともに気合い十分で今日に臨んでいる事がピッチから伝わってくる。次節・清水との最終節を残してはいるものの、ホーム・瑞穂では今日の試合が最後。浦和のサポーターに負けない応援を送り届けてくれる名古屋サポーターの後押しを味方に、最高の試合を見せて最後を飾ってほしい。
試合前に、11月の“月間ランクル賞”表彰が行われ、大森選手が選ばれました。
前 半
西に傾きだした太陽で、ピッチの中程までスタンドの陰が覆い始めた、午後2時。両チームのイレブンがちびっ子のサポートを伴って、審判団に続いて入場してくる。スタンドいっぱいにびっしりと詰めかけた観客の前で、どんなパフォーマンスが見られるのだろうか。前半は、風下の右にエンドをとった浦和に対し、左から右に攻めあがる名古屋。試合は浦和のボールでキックオフ。GK楢崎、DFは大森・パナ・古賀、MFには右から海本・吉村・中村・中谷、ひとつ前に岡山、FWはウェズレイ・マルケスという名古屋の布陣だ。開始早々、相手陣内深く左の位置でFKのチャンスを得る。ウェズレイがゴール左隅を狙って蹴っていったが、これはGKに止められる。
2分、右サイド深い位置でのFKをまたも得ると、今度はウェズレイが短く縦に出して岡山を走らせるが、相手DFの厳しい寄せにパスを繋げず。
 
3分、DFの裏へのボールに浦和・田中が抜け出そうとしたが、ここはパナが体を入れて、これを倒れながらも止める。
4分、自陣からの相手DFの裏への長いボールにマルケスが飛び出すが、これはオフサイドの判定。
5分、相手陣内深く左の位置で相手ボールを奪ったマルケスがドリブルでは切れ込んで行くと、マイナスにパスを出す、これにウェズレイが詰めていったがここは相手DFに阻まれ前を向けない。
6分、右にドリブルで入っていったウェズレイが海本の上がりを待ってヒールで流すと、これに中村が詰めて行くが、これは相手DFにカットされてしまった。
8分、浦和・長谷部がエリアの外左からミドルシュート。しかし、これは楢崎がはじき出す。左からの浦和のCKは、こぼれ球を拾われそうになるが、先に詰めた吉村が弾き出して行く。
10分、中盤で相手ボールを奪った海本が中央をドリブルで上がると、そのまま抜け出してシュートに。しかしGKに弾かれCKに。右からのCK。短く出したボールを吉村がファーサイドに入れていったが、上がってきたパナの頭には僅かに届かず。ここまでは中盤での名古屋のプレッシャーが聞いているのか、浦和の攻撃陣は全くと言っていいほど、形ができていない。
13分、右の浦和・山田の右からの短い折り返しに混戦になるが、押し込まれそうなところをパナがクリアして難を逃れる。
14分、左サイドからのスローインのボールを浦和・永井がダイレクトで打ってきたが、これはポストの左にはずれる。
16分、左にでた中村がドリブルから上がってゆくと、これを中に入れていったが、正面から詰めていったウェズレイには届かず、弾かれるが、相手のファウルで、相手陣内中程ゴール正面でFKを得る。直接狙ったウェズレイのボールは壁に弾かれてしまった。
18分、DFラインを左から揺さぶられると、中央でフリーの浦和・山瀬がシュートに。しかし、これは楢崎が好反応でこれを押さえる。
19分、右からのCKのチャンス。中村がニアに低いボールを入れると海本が流し込もうとしたが、これはDFにカットされてしまう。
20分、中央の岡山のパスを右で受けた海本が上がって行こうとしたが、寄せてきた相手DFにボールを奪われ、チャンスを生かし切れなかった。
22分、自陣からパナが左の縦に長いボールを出すと、中谷が追いつきこれを折り返そうとしたが、ここは戻った浦和DFにコースを阻まれ中へ入れて行くことができなかった。
23分、中央からドリブルで仕掛けていったウェズレイだったが、浦和・坪井の厳しいマークに合い、倒されてしまうがファウルは貰えず。
25分、相手陣内右深い位置で岡山がDFを背にボールを受けると、上がってきたマルケスに流してゆくが、ここは浦和のDFにボールを弾き出されてしまう。
26分、中央で相手ボールをカットした岡山からのボールを受けた海本が縦に抜け出して行くと、ライン際から折り返して行くが、誰もこれに詰め切れず、押し込むことはできなかった。
28分、左サイドでボールを持った中村がエリアのすぐ外で張っていたウェズレイにパスを出すと、これを胸トラップからオーバーヘッドでシュートに。枠をとらえたシュートだったが、相手GKの早い反応で阻止されてしまった。
30分、大森がドリブルで上がって行くと、相手陣内深く中央でウェズレイにスルーパスを入れて行くと、これを受けたウェズレイが振り向きざまでシュートに行くが、浦和のDFに当たってしまい、弾かれてしまった。
【得点】
32分、海本の右からの折り返しをファーサイドで待っていたウェズレイがヘディングで押し込み、待望の先制点を決める。この時間帯になってほとんどを支配、押し込んでいただけに嬉しい1点だ。
35分、相手GKが前に飛び出してきてボールを弾いたところを拾ったマルケスが、DFの裏へと抜けるウェズレイにパス。これを反転してシュートにいったが、戻ったGKに弾き出されてしまった。
36分、右からのCKのチャンス。中村からのニアへの低いボールをマルケスがダイレクトで押し込もうとしたが、惜しくも右にはずれてしまう。
37分、相手ボールを高い位置で中村が奪うと岡山へ、一気にカウンターで海本が走り出し、これに出して行こうとしたが、体勢を崩しボールをタッチの外へ出してしまった。
38分、中央でボールを持った中村がドリブルで仕掛けて行くと、左にマルケス、右にウェズレイが流れて出来たスペースを見てミドルシュートを狙うが、これは相手DFに読まれ、弾かれてしまう。
40分、自陣で古賀が中谷から戻したボールを大きく縦に出すと、マルケスが抜け出して行くが、これはオフサイドの判定。
41分、中谷方の縦パスを受けたマルケスが軽くはたいて中谷に繋ごうとしたが、これは届かず。
42分、自陣中程やや左での浦和のFK。浦和・平川のファーサイドのボールに永井が飛び込んでくるが、古賀が頭でクリア。
【失点】
ロスタイム1、中谷が相手選手のプレッシャーで、味方に戻そうと出したボールが浦和・田中へのパスとなってしまうと、これをドリブルで持ち込まれる。DFを引きつけたところで、右から上がってきた永井にパスが通り、最後、パナを交わして右足でシュート。左ポストに当たったボールは、無情にもゴールの中へと吸い込まれ、まさかのロスタイムの失点で追いつかれてしまった。そして、ここで前半が終了。終始押し気味に試合を展開、待望の先制点も決め、そのまま前半を終えたかったが、いやな形で終わってしまった前半。ここは気持ちを入れ替えて、後半に臨んでほしい。
後 半
メインスタンドの陰が大きくピッチを覆い、それまで繰り広げられていた熱い試合とは裏腹に、気温はますます下がり始める。
名古屋1人目メンバー交代:吉村→ヨンデ
試合は風下の右から、左へと攻め上がる名古屋のボールで後半が始まる。開始いきなり、ドリブルで左を上がって行く中村からの早いクロスは、誰も追いつけず。
1分、スローインのボールを岡山が縦に出すと、これを受けた中村がターンして中へと入れていったが、これは上がってきた海本に届く前にカットされてしまう。
2分、左サイドを浦和・田中がドリブルで長い距離を走ってくると、パナがついて行く。ライン際で中へと折り返してくるが、ここは大森がしっかりとこれをカットして、チャンスを作らせなかった。
4分、左の岡山が流したボールを受けたウェズレイがDFを貼り付けながらシュートに。しかし、これは相手GKの好セーブに合い止められてしまう。
6分、マルケスが左から中へと抜け出すと、DFの裏へウェズレイを走らせようと、鋭いボールを入れようとしたが、相手DFの伸ばした足に弾かれ、このチャンスを生かせなかった。
【得点】
7分、左に上がるマルケスが反転して右足でゴール正面へ放り込むと、これを待っていた中村が頭で流し込み、見事ゴールを決める。ここはこの得点の勢いでさらに攻め込んで行きたいところだ。
10分、右での海本の縦パスに抜け出した中村の折り返しにファーサイドのウェズレイがヘディングシュートに行くが、これは枠を捕らえられず、ポストの左にはずれてしまう。
12分、右に抜け出した海本がドリブルから中へと入れて行こうとしたが、これは寄せてきたDFに阻まれるが、CKに。中村からのゴール前へのボールに詰めていたパナがヘディングシュート。しかし、これは詰めていたDFに止められてしまう。
16分、DFの裏へのこぼれ球にフリーの浦和・田中が詰めて行くが、ここは判断よく飛び出した楢崎が蹴り出して行く。この時間帯は、ちぐはぐだった浦和の攻撃がまとまり始め、押し込んできているだけに、風下ということも考え、セカンドボールに注意して、慎重に試合を進めて行きたい。
18分、浦和・永井がゴール前でボールを受けると、左足でシュートにくるが、これは楢崎が正面でがっちりとキャッチ。
20分、右サイドを浦和・長谷部がドリブルで上がってくると、いったん中へと折り返す。これを詰めてきた選手がシュートに来るが、前を阻んだパナがボールをけり出して行く。
21分、中央をドリブルで果敢に上がってきた海本がエリア内へと進入を図るが、ここは寄せてきた相手DFにトラップが流れたところをボールをさらわれてしまう。
23分、名古屋2人目メンバー交代:中谷→滝澤
浦和の左からのCK。ゴール正面へのボールは楢崎が直接キャッチ。
24分、浦和・ゼリッチがドリブルで上がってくると、そのまま左に流れてエリア内へ入ってきてシュートに来るが、ここでも飛び出した楢崎がこのボールを正面で止める。
26分、右からの浦和のCK。山瀬のニアへのボールは詰めていたヨンデが頭でカットして行く。
27分、滝澤の縦のボールにマルケスがDFと競り合いながら取りに行くが、これは相手DFにコースに入られ、受けることができなかった。
30分、左の滝澤が中へと流れると、中村へパスを出して行く。これをダイレクトでDFの裏へと出そうとしたが、マルケス・ウェズレイともオフサイドポジションのため反応できず。
32分、浦和1人目メンバー交代:平川→三上
ドリブルで上がってきたマルケスが右足でそのままゴール右を狙ってシュートにいったが、僅かに流れてしまいポストの外へ。
33分、左サイドで粘って最後浦和・ゼリッチがパスをもらうとシュートに来るが、これは楢崎の正面だった。
【得点】
35分、自陣パナからからの縦のボールを受けたマルケスが反転して、右足でファーサイドにあげてゆくと、これに詰めたウェズレイが頭で押し込み、浦和を突き放す決定的ともいえる、3点目を見事決める。
38分、浦和・三上が左を上がってくると、ゴール前へ放り込もんできたが、これは守っていたDFが頭で縦に大きく弾き返してゆく。
39分、浦和の左からのCK。山瀬の蹴ったボールは楢崎が直接キャッチ。
40分、滝澤からのスローインを受けたマルケスからのボールをもらったウェズレイが中へのドリブルから、積極的にシュートを狙って行くが、これはクロスバーの上へはずれてしまう。
42分、滝澤が縦に出したボールを岡山が受けると、さらに縦へ繋いで行こうとしたが、これは相手DFの寄せにカットされてしまう。
【得点】
44分、相手のファウルを早いリスタートで中村がけり出したボールにフリーで抜け出したウェズレイがドリブルから中へと入って行くと、そのまま右足で寄せてきた相手GKの脇を抜くシュートをゴール右隅に決め、先回のホーム・豊田スタジアムでの横浜戦以来のハットトリックを決める。
ロスタイム1、最後、浦和の攻撃を全員で凌ぎきり、約2分のロスタイムを経て、試合終了の笛を聞いたサポーターから大きな拍手と声援がスタジアム中に沸き上がる。最後まで攻撃の手を緩めることなく攻め続けた名古屋の、攻撃力がまさった、まさに堂々の横綱相撲といえる貫禄の勝利といえよう。さあ次節も絶対勝ってもらおう!最後まで応援ありがとうございました。