2003 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 2nd Stage 第4節
 午後6時25分、恒例のサポーター席へのボールの投げ入れが終わった選手たちは、ピッチではなく、スタンド下のウォーミングアップエリアへと戻り、柔軟等の軽いメニューをこなし始める。
 そして、6時35分を過ぎ、仙台サポーターのブーイングの中、グランパスイレブンがピッチへと登場。さすがに今日の試合の意味合いを知っているようで、全選手とも険しい表情でのウォーミングアップとなる。仙台スタジアムMCによる、ホームの選手に先駆けた、アウェイチームの選手紹介では、ウェズレイの名前が呼ばれると、昨年の屈辱を知っている仙台サポーターの激しいブーイングで、スタンド内が一時騒然となる。
 ヘディングを交えながらの軽いボールの蹴り合いを中心に黙々とアップを行う選手たち。仙台の左の岩本の攻撃を押さえ込むために、久しぶりの先発として、右サイドに起用された海本(幸)と、DFの要として怪我から復帰のパナ。どちらも久しぶりの出場とあってか、試合前の練習では、一際、力が入っているようで、まさに気合い充分と言って良い雰囲気だ。なんとしても今日は勝たなければ行けない試合のはず。ウェズレイやマルケス等攻撃陣を活かすためにも、彼らには派手な活躍を見せて貰いたい。そして、ネルシーニョ監督には相手チームを唸らせるような采配で、名古屋のサポーターを魅了し、チームを勝利に導いて欲しい。
前 半
午後7時近くになり、日も沈み、仙台スタジアムの上空は真っ暗に。湿度も高くなく、気温も下がって、ここ杜の都・仙台はすっかり秋を感じさせる雰囲気だ。夜空に仙台サポータの声がこだまする中、フェアプレーフラッグが入場。そして、大音響と共に、両チームの選手が入場を始めると、スタンドは興奮状態に。ここのサポーターはいつも熱く、アウェイチームにとっては強敵だ。名古屋のサポーターには負け気迫で応援を今日もお願いしたい。左にエンドを取った仙台に対し、右から左に攻め上がる名古屋。仙台ボールで前半がスタート。名古屋は、GK:楢崎、DFは、右から大森・パナ・古賀、MFは、海本(弟)・吉村・滝澤・中谷、一つ前に岡山、そして、FWは、右にウェズレイ、左がマルケスという布陣だ。
1分、右のスペースに出たボールを仙台・山下が拾ってシュートに来るが、これは楢崎の正面。
3分、自陣右深い位置での仙台のFK。岩本がゴール正面へ曲げてくると、仙台・金が頭であわせようとしてくるが、楢崎が落ち着いてキャッチ。
4分、右からのCK。滝澤の蹴ってボールはニアの選手が頭でカット。
5分、右でボールを受けた岡山の中へのボールは、ウェズレイが右に開いてしまい、そのまま相手ボールに。
6分、自陣エリアのすぐ外で仙台・山下にパスが繋がりそうになるが、古賀がコースを読んでこれをカットしてゆく。
7分、自陣右中程の位置での仙台のFK。先ほどよりやや遠い位置だが要注意だ。岩本のGKの前に落ちるボールに小村が飛び込んでくるが、ここは楢崎が負けず、ボールを押さえる。
9分、右サイドで岡山がドリブルでエリアの外からシュートに行くが、詰めてきたDFにカットされてしまう。
10分、中央から左に出たボールを受けたウェズレイが、トラップから左足でシュートに行くが、これは惜しくも右のポストのわずかに外へ。
11分、仙台・シルビーニョから右の山下にボールが出ると、これを中へ入れてくるが、ここは古賀がしっかりとこれを押さえ、クリアしてゆく。
12分、仙台・望月が右からアーリークロスをゴール前の金に入れてゆくが、ここは楢崎が直接キャッチ。ここまでは仙台の出足が良く、名古屋は守勢に回る展開が続いている。
14分、中央でボールを持ったウェズレイがマルケスに渡して縦に抜けようとしたが、前を阻まれ、パスを受けることが出来ず。
16分、右サイドを岡山の縦のボールを受けて上がる海本(弟)が中へグラウンダーを折り返してゆくが、これは簡単に弾かれてしまった。
17分、右からドリブルで仕掛けてきた仙台・望月が中の金へと繋いでゆくと、これを受けた金がパナに倒されたように見せかけ倒れ、PKを誘うが、ファウルはもらえず。ここは落ち着いて処理したパナの方が一枚上手だった。
18分、左のスペースに出たボールにマルケスが追いかけてゆくが、これは追いつけず。
20分、仙台の右からのCK。ニアへ直接入れてやろうという岩本の早いボールは吉村がカット。
21分、左に上がってきた仙台・岩本のゴール前のクロスがこぼれたところを金がシュートに来るが、これはクロスバーの上へ外れ、救われる。
22分、仙台・根本の左からのアーリークロスに山下があわせに来るが、これは楢崎が落ち着いてキャッチ。中盤での出足の速い仙台にセカンドボールを拾われ、押し込まれる状況が続いている。この時間帯はなんとかこれを耐えて、失点をさけたいところだ。
24分、右の海本(弟)から縦に走る岡山にパスが通ると、これを中へと放り込むとマルケスが流れながら左足であわせてシュートにゆくが、惜しくもボールはクロスバーの上へ。
26分、仙台・山下が楔になって左に出したボールを金が拾ってそのままドリブルで持ち込むと、ゴール前のスペースに放り込んできたが、これは楢崎がしっかりとキャッチ。
27分、ウェズレイが右でボールを持つと前を阻んだ選手をかわしてシュートに行くが、これは弾かれてしまう。
29分、右サイドをスピードにのったドリブルで上がってくる、仙台・岩本を古賀が倒してしまいFKを与えてしまう。自陣右入ってすぐの仙台のFKは、ゴール前に長いボールを蹴ってくると、こぼれたところを根本がシュートに来るが、ここは正面で体でこのシュートを止める。
31分、右からの仙台・望月のゴール前へのシュートにフリーで1人飛び込んでくるが、ここはパナがしっかり付いて行き、倒れながらもシュートに行かせなかった。
33分、右で粘った岡山からのファーサイドへのクロスに中谷が頭でシュートに行くが、これはDFに弾かれてしまう。
34分、左からのCKのチャンス。マルケスの入れていったボールは誰も決めることが出来なかった。
35分、中谷からの立てパスを受けたマルケスが、左サイドからDFをかわして、右足でファーサイドに上げてゆくが、詰めていた選手の頭の上を越えてしまう。
36分、自陣入ってすぐやや左の位置での仙台のFK。岩本がゴール前へ入れてきたが、これも楢崎がしっかりキャッチ。
37分、左のマルケスがマイナス気味に中へ入れると、これを受けたウェズレイが相手DFをかわして右足でシュートに。しかし、これは惜しくも相手GKの正面だった。この時間帯になって、仙台の選手も疲れが見えはじめ、名古屋が徐々にボールを持つシーンが目立ち始める。
39分、楢崎のゴールキックのボールをワンタッチで岡山が右にはたくと、これを拾った海本(弟)がドリブルで一気に走って行き、ゴール前に上げていったが、左から詰めたマルケスには残念ながら届かなかった。
【得点】
41分、左のマルケスからのボールを貰ったウェズレイがエリアの外から右足で強烈なシュートをゴール左に決め、欲しかった先制点をゲットする。
43分、左からのCKのチャンス。短くマイナスにマルケスが出すと、これを受けた滝澤がゴール前に入れて行く。右に上がってきたパナが頭で押し込もうとしたが、その前に相手DFにカットされてしまった。
ロスタイム1、仙台・シルビーニョが縦に出してきたが、これは相手選手が反応できず、ボールはそのまま楢崎の下へ。そして、前半は1−0で終了。苦しい展開が続いたが、守備陣の踏ん張りもあり、見事、仙台の攻撃を0に押さえることができた。後半もこの調子で、堅守で仙台を押さえて、勝利へと突き進んで欲しい。
後 半
前半、開始から仙台の速い出足に後手に回り、攻撃の形を作ることが出来ず、押し込まれ気味の展開が続いたが、パナが戻って落ち着きを見せ始めたDF陣の踏ん張りで、仙台の攻撃を凌ぎきった。また、欲しかった先制点も、ウェズレイがきっちり決め、いい形で折り返すことが出来た。後半もこのペースを続けて行きたいところだ。エンド代わって、左から右に攻め上がる名古屋のボールで後半開始。両チームともメンバー交代は無し。

開始早々、左サイドを上がる中谷のパスを受けた滝澤のゴール前へのボールがこぼれたところを海本(弟)が拾うと、シュートに行こうとしたが、これはコースを阻まれ、パスを出すのが精一杯。相手が弾いたところを正面で拾った岡山のミドルシュートも相手DFに当たって弾かれてしまった。
1分、自陣左深い位置での仙台のFK。岩本がゴールから逃げるようなボールを入れてくると、上がっていた仙台・ファビアーノが頭であわせようと飛び込んできたが、これは頭の上を抜けて行く。
3分、大森が右サイドをドリブルで長い距離を上がって行くと、中へと入れて行こうとしたが、これはコースを読まれ、ボールをカットされてしまった。
4分、仙台・根本からのパスを受けた山下がコースに出そうとしたが、後ろから張り付いたパナが最後までこれを許さず、ミスを誘う。
6分、自陣左、滝澤からの縦パスは、マルケスの体勢が悪く、そのまま抜けてしまった。
7分、右に上がる吉村からのボールを受けた岡山が中にいたウェズレイに短く出して行くが、タイミングが合わず、足元に入らず相手DFにカットされてしまう。ここまでは、中盤の競り合いでは仙台がボールを拾う場面が目立つが、DF陣が落ち着いて対処しており、危なげなく試合は進んでいる。
10分、仙台・金がゴール前のこぼれ球を右足でミドルシュートに来るが、これはポストの左に外れる。
12分、DFの裏へのボールにマルケスが飛び出して行こうとしたが、オフサイドに。
13分、左に上がる中谷からのファーサイドへのクロスに詰めていた海本(弟)が頭であわせるが、DFに体を寄せられていたため打ちきれず、ゴールを越えてしまう。
14分、中央で仙台・望月の裏への浮き球に止ましたが飛び出して行くが、ここもDF陣がしっかりとこれに反応、ボールをけり出して行く。
15分、左サイドで粘りを見せた中谷が、DFをかわして最後右足でシュートに行くが、これはわずかに右に外れ、枠を捕らえることは出来なかった。
17分、右サイドでDFの裏へのボールに反応した仙台・山下が右足でシュートを打ってきたが、これはポストの左に。
18分、左サイドの中谷からの縦のボールを受けたマルケスが中へ放り込もうとしたが、これはコースに入った相手DFに当たって弾かれてしまった。
19分、左サイド深い位置から仙台・根本が放り込もうとしたが、吉村がクリアして行く。仙台の左からのCK。ファビアーノがファーサイドに蹴ってくると、詰めていた小村があわせようとしたが、ウェズレイがこれを押さえ込む。
20分、仙台1人目メンバー交代:望月→福永
22分、マルケスが左サイドを中谷に当てて上がろうとしたが、トラップが流れたところを相手選手に拾われてしまった。
23分、自陣中央でのパスのボールをインターセプトした仙台・岩本がそこからミドルシュートを打ってくるが、慌てたのか、ボールは左に外れる。
24分、左サイドを縦パスを受けて上がろうとしたウェズレイだったが、仙台・ファビアーノの足元へのファウルで止められてしまう。
25分、右サイドで海本(弟)が岡山のパスを受け突破を図るが、コースを阻まれたため岡山に繋いで行く。これを今度は岡山が縦に上がって中へ折り返そうとしたが、ボールは相手DFに弾かれてしまい、チャンスを作ることは出来なかった。
28分、右サイドからの仙台のボールに逆をつかれたパナの裏へのボールに、仙台・金が反応、シュートを打とうとするが、ここは大森がしっかりとついて行き、シュートを打たせなかった。
29分、相手DFの裏へのボールにマルケスが飛び出すと相手GKのポジションを見てループシュートを打って行く。しかし、これはクロスバーのわずか上へ行ってしまい、追加点とすることが出来なかった。
仙台2人目メンバー交代:山下→福田
30分、自陣ゴール正面こぼれ球を、反転した仙台・福田がシュートに来るが、これは楢崎が正面で押さえる。残り時間15分、名古屋としては何とかこのまま試合を押し切りたいところだ。
33分、仙台・根本の左からの低いクロスは、DFが落ち着いてカットして行く。ネルシーニョ監督は、集中力高く選手たちがプレーしているため今日はまだ動こうとはしない。
【得点】
35分、右に出たボールに岡山が詰めると、ギリギリまで持ち込んで中へ放り込んで行くと、最後はゴール前で詰めていた選手たちが体ごと押し込もう形で追加点が決まる。最後は海本(弟)が決めた結果だったが、全員で決めた得点と言っても良いほどの価値ある追加点といえる。
38分、仙台3人目メンバー交代:岩本→佐藤
左サイドでマルケスのパスを受けて抜け出していった滝澤がエリアの近くで倒されるが、これはファウルを貰うことが出来ず。
39分、右に開いた仙台・福田の折り返しはDFがクリア。右からの仙台のCKはしっかりと守ってカットして行く。
40分、左サイドを上がってきた仙台・根本のゴール狭い方を狙った右足のシュートは、楢崎が正面でキャッチ。
41分、右にフリーで上がる海本(弟)が寄せてきたDFの頭越しに反対サイドにあげると、詰めてきた中谷が左足でダイレクトで打っていったが、これはうまく当たらず、ラインの外へ外してしまう。
43分、右の海本(弟)からのゴール前へのグラウンダーは、相手DFが足で弾いてしまう。
名古屋1人目メンバー交代:岡山→海本(兄)
44分、ゴール前へのボールをパナが弾いて流れたところを追いかけてきた仙台・福田がオーバーヘッド。しかしこれは枠には届かず。
【得点】
ロスタイム1、海本(兄)が左のマルケスに出して行くと、これをゴール前に入れて行く。そしてこれを正面から詰めたウェズレイが落ち着いて押し込み、仙台を突き放す、3点目を見事に決める。そして、試合はこのまま終了。名古屋は欲しかった勝ち点3を手に入れることが出来た。前半こそ押し込まれ気味だったが、後半に入って仙台の両サイドの選手(望月・岩本)の運動量が落ち始めてからは、試合の主導権を握ることができた。中谷、海本(弟)の果敢な上がりが得点チャンスを作り、見事完勝することが出来た。しかし、今日の一番の功労者は、なんといってもパナだろう。彼が戻ってきたことで守備陣が落ち着きを取り戻し、最後まで危なげなく、仙台の攻撃を凌ぎきることが出来たと言ってもおかしくない。彼の働き、復活がチームの勝利に大きく貢献した、そんな試合だったといえる。最後まで応援ありがとうございました。