2003 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 1st Stage 第14節
 午後6時25分、夕焼けに包まれた瑞穂のピッチに練習に現れた選手たちにスタンドから大きな声援が沸き起こる。競技場周りから聞こえる蝉の声とのハーモニーに夏の雰囲気がより一層高まり、スタジアム内は最高のサッカー観戦の雰囲気に。
 前節の楢崎の退場で、急遽、出番の回ってきた本田が自らを鼓舞するかのように大きな声を上げながら登場すると、サポーターからはひときわ大きな応援の声が。また、やはり前節、1人少ない状況になったため、戦術の立て直しを強いられた監督から、途中交代させられたマルケスも、今日はいつになく表情が険しく見える。活躍するまもなく代えられてしまった彼としては納得がいってなかったと言えるはずだ。同様に藤本もいつもから思うと、逆にテンションが高く見えるのは、気のせいだろうか。
 確かに、他の選手以上に、彼ら3人に課せられる課題は大きいと言える。今日の試合を勝つために、今日は絶対に活躍してもらいたい。そして、もう一人のFW・ウェズレイには、7試合連続ゴールを決めてもらい、チームの勝利に貢献してもらおうではないか。
前 半
夕焼けに染め抜かれた空の下、いよいよ、1stステージ・ホーム最終戦となる東京ヴェルディ戦が始まる。前半は左にエンドを取った東京に対し、右にエンドを取り、左に攻め上がる名古屋のキックオフで始まる。
開始早々、自陣からの長いボールに東京・エムボマが向かってゆくが、これはパナが先にボールを奪う。
1分、右に出たボールをウェズレイが挨拶代わりのダイレクトシュート。しかし、これは浮かしてしまう。
2分、東京の右からのCK。ラモンが入れてくるが、これは相手のミスでGKに。
3分、中央藤本からの右へのボールを受けた海本(弟)がトラップして中に折り返しをいれると中村が胸で落としてシュートにゆくが、これはシュートミスになってしまった。
4分、相手陣内中程右の位置でFKを得る。藤本が低いボールを入れてゆくが、中に詰めている選手には通らず、流れてしまい、遠いサイドに詰めていた古賀の横にいってしまった。
5分、左サイドで粘った滝澤が相手DFの間を抜いてスルーパスを出すと、これにマルケスが反応してゆくが、残念ながらこれはオフサイド。
6分、ドリブルで上がってくるウェズレイが、前を阻む相手DFの頭越しにパスを遠そうとしたが、これは体で止められてしまい、抜け出していたマルケスには、惜しくも届かなかった。
7分、中央から中村が持ち込むと、相手DFの間を走るウェズレイにパス。これを受けようとして倒されると好位置でFKを得る。しかし、このFKは簡単に行ったものの相手DFに弾かれ、浮いたところをGKに攫われてしまう。
【失点】
8分、左からペナルティ内へ入ってきた東京・エムボマのシュートを正面で本田が弾き左からのCKに。東京・ラモンのゴール前のボールはウェズレイが頭でクリアするものの,再度拾われ右からのボールを詰めたエムボマに押し込まれてしまい、早くも先制を許してしまう、苦しい立ち上がりとなってしまう。
10分、ゴール正面に待っていたウェズレイへのボールをシュートにゆくが、相手GKにこれは弾かれ、右からのCKとなってしまう。滝澤の入れたボールを競り合いながら押し込もうとしたが、結局クリアされてしまう。
12分、相手陣内深く、左寄りのペナルティすぐ外の位置でのFKを得る。滝澤が低くマイナスのボールを出すと、これに正面で待っていたパナが頭で押し込もうとしたが、ボールが低く行ってしまったため、DFに当たってしまい、得点にはならなかった。
14分、相手ゴール前での浮き球をシュートに行った中村のボールがDFに弾かれるが、さらに詰めたパナが何とか押し込もうとしたが、これも相手DFに阻まれ決めることは出来なかった。
15分、東京・エムボマがドリブルで仕掛けてくると、ペナルティの外から強烈なミドルを打ってくるが、これは本田が正面でガッチリと押さえる。
16分、左からドリブルで攻め上がった中村だったが、コースをふさがれ、前にゆけずシュートすることは出来なかった。
17分、左からのCKのチャンス。藤本の入れたボールをウェズレイがゴールを背にしながら、ダイレクトであわせてシュートを試みるが、相手DFに当たってしまい、決めることが出来なかった。
18分、相手ゴール前でウェズレイとのパス交換からマルケスが抜け出すものの、大事にいきすぎたのかもう一度ウェズレイに戻してしまったボールをカットされてしまう。あそこは強引にでもシュートにゆきたいところだった。
21分、東京・三浦が左から上がってくると、吉村をかわして中へ入れてこようとしたが、ここは判断良く飛び出した本田がボールをキャッチする。
22分、右から切れ込んだ東京・米山のパスを受けた桜井をゴール正面で倒してしまい、危険な位置でFKを与えてしまう。この場面ラモンが直接蹴ってきたが、これはクロスバーの上に大きく外れる。
24分、左からの東京・三浦のロングスローのボールをダイレクトで桜井があわせてくるが、ボールはクロスバーの上へ。この時間帯、名古屋の些細なパスミスが目立ち、東京に攻め込まれる場面が多く、嫌な雰囲気となっている。ここは落ち着いて、じっくりと試合を作り直してゆきたい。
27分、右の海本(弟)の縦のボールに抜け出した藤本が折り返しを入れてゆくと、ウェズレイが詰めてゆくが、わずかに相手DFが早く頭でこれをカットしてしまう。
28分、マルケスがドリブルで上がってゆくと、相手DFがこれを止めにはいるがボールが左に流れてしまう。これを拾った藤本が左の角度のないところからシュートに行ったが、相手GKに取られてしまう。
【失点】
29分、自陣ペナルティすぐ外、左の深い位置から東京・三浦に芸術的なミドルシューを決められてしまい、よもやの失点で、0−2となってしまう。これにはサポータも一時、唖然となってしまう。
【得点】
31分、相手ゴール正面、中村とのワンツーで抜け出したマルケスが相手GKの出てきたところを落ち着いてかわして左足でシュートを決め、1−2とする。静まりかえっていたスタンドのサポーターもやっと息を吹き返し、大きな声援が沸き起こり始める。この調子で、一気に攻め込み前半で追いついておきたい。
33分、自陣からの吉村の長い縦のボールにマルケスが追いつこうと走ってゆくが、トラップはしたものの、その時は、ボールは惜しくもゴールラインを割ってしまっていた。
35分、右サイドに海本(弟)に当てて抜け出した吉村が倒され、深く、好位置でFKを得る。藤本が入れていったボールを古賀が足であわせようとしたが、相手DFに弾かれてしまう。
37分、滝澤とのワンツーで抜け出したマルケスが相手ペナルティ内へ入ってゆくが、寄せてきたDFへのファウルを取られ、これを活かすことが出来なかった。
東京1人目メンバー交代:ラモン→小林(大)
39分、左に出たボールを中へ折り返そうとした滝澤だったが、コースに入った相手DFにボールを弾かれてしまう。
40分、自陣での東京・小林(大)のスルーを狙ったボールを藤本がカットすると、そのまま持ち上がり、右のウェズレイへと渡してゆく。これを左に上がってゆく滝澤に大きくサイドチェンジしてゆくが、ボールが長すぎてしまい、受ける前にタッチを割ってしまった。
42分、マルケスが競り合いのボールを拾うと、相手DFの間を抜けるウェズレイにスルーパスを出してゆく。これに反応して上がってゆくウェズレイだったが、両側を相手DFに阻まれ、シュート体勢にゆく前にボールを奪われてしまった。
44分、左からの東京・三浦のロングスローは、パナが競り合うと古賀が落ち着いてクリアする。
ロスタイム1、相手陣内中程、やや右の位置でのFKのチャンス。この場面、滝澤の左足で入れていった早いボールは、相手DFにカットされてしまう。そして、ここで前半が終了。早い時間帯はボールを支配していたものの、徐々に中盤での東京の、出だしの早いプレッシャーに押され気味となり、押し込まれる形となってしまった。名古屋としては、1点ビハインドで迎える後半の早い時間帯に同点として、まずは試合を振り出しに戻しゆきたいところだ。
後 半
来日初ゴールを見事ホームで決めたマルケス。後半もドンドンと得点に絡んでもらいたい。そして、同点・追加点が生まれるプレーでサポータを魅了して欲しい。エンド代わって、左から右への攻め上がりとなる名古屋。後半は、東京のボールで再開。開始早々、自陣中程右の位置での東京のFK。三浦が入れてくるが、古賀・パナが競り合いに勝ち、ここを凌ぐ。
1分、右からドリブルで入っていった中村が、相手DFが寄せたところを中へ短く入れてゆくが、待っていたウェズレイ・マルケスには通らず。
3分、右からの東京・三浦のロングスルーのボールは、吉村が頭で前にクリアしてゆく。
4分、自陣右中程の位置での東京のFK。小林(大)がゴール前に入れてくるが、ここは簡単にクリア。
5分、右からの東京のCK。小林(大)の入れたボールはゴール前にこぼれるものの、古賀が大きくクリアしてゆく。
7分、右に上がる海本(弟)の中への早い折り返しは、詰めていった中村の足下を抜けてしまい、誰もこれを拾うことが出来なかった。両チームともボールがうまく繋がらず、落ち着かない展開が続くこの時間帯だ。
10分、中央で中村とウェズレイがワンツーを狙うが、戻したボールが短く、相手に攫われてしまう。
11分、右からの海本(弟)のゴール前の低いクロスに藤本・マルケスが合わせてゆくが、前に居たDFにコースを阻まれ、最後、藤本のボールは押し込むことが出来なかった。
12分、右からのCK。滝澤の入れていったボールは相手GKのパンチングで弾き出されてしまう。
14分、東京2人目メンバー交代:小林(大)→ロペス
16分、自陣中央ほぼ真ん中での東京のFK。右に出したボールをシュートにくるが、ニアであわせてきた選手のシュートミスで救われる。
名古屋1人目メンバー交代:海本(弟)→原
18分、東京・桜井が右でフリーで持つとシュートにくるが、これは精度を欠き、ボールは大きくゴールを越えてゆく。
【失点】
19分、東京・林のゴール前のボールをあわせたエムボマのヘディングシュートは本田が指に当てコースが変わりクロスバーに跳ね返って中へ落ちるが、これに詰めた山田に押し込まれてしまい、リーグ最強のDFとうたわれながら、なんと3点目を献上してしまう。
21分、右からのCKのチャンス。藤本のファーサイドへのボールはパナが競り合うも、相手DFに体を寄せられていたため、前へと押し込むことは出来なかった。
23分、名古屋2人目メンバー交代:滝澤→山口
25分、藤本の縦パスに反応したウェズレイの弾いたボールを拾ったマルケスが、再度左に開いたウェズレイへと繋いでゆくが、これは惜しくもオフサイドの判定。通っていれば決定的だっただけに惜しい場面だった。
26分、左サイドを上がってゆく山口からの中への折り返しは相手DFがカットするが、こぼれたところを拾った中村がシュートを狙おうと試みるが、ボールは左に大きく外してしまう。
28分、自陣右に流れたボールを拾った東京・エムボマのシュートは本田が正面でキャッチ。
29分、自陣中央をドリブルで攻め上がってきた東京・桜井を倒してしまい、東京のFK。自陣中央ほぼ真ん中でのFKの場面。エムボマが直接狙って打ってきたが、クロスバーの上に外れる。
【失点】
31分、ゴール前での浮き球の競り合いで、クリアしきれず流れたところを、東京・エムボマが倒れ込みながらシュートに。そして、この予想もしなかったボールに本田の反応が遅れ、ボールはゴールマウスを捕らえ、ついに4点目を失ってしまう。
33分、相手陣内中央での藤本からのDFの裏へのボールに原が抜け出そうとするが、先に詰めた相手DFにカットされてしまう。
35分、中央の藤本から右に上がる中村へパスが出るが、中へと折り返そうとする前に寄せてきたDFにカットされてしまう。
36分、名古屋3人目メンバー交代:藤本→岡山、
東京3人目メンバー交代:エムボマ→平本
37分、相手ゴール正面ペナルティすぐ外の位置で中村のボールをスルーしたウェズレイにもらう形で受けた原が倒され、好位置でFKを得る。直接狙って蹴っていったウェズレイのボールはわずかに高く、クロスバーの上へと外れてしまった。
39分、中央の吉村からの左の古賀へのボールは、意志が通じなかったのか、そのままタッチの外へ。
1st無敗記録を誇った名古屋だったが、こんな形で東京に土を付けられてしまうのか。何とか最後まであがいてでも、一矢報いて欲しいところだ。
43分、ウェズレイが自陣からのボールを競り合うが、東京のDFの寄せが厳しく前を向かせてもらえない。
44分、右からボールを持った岡山が中へと切れ込んで左足で果敢にシュートを打ってゆくが、これは前を阻まれてしまい、決めきれなかった。
ロスタイム1、相手陣内中程左寄りの位置でのFK。山口が低いボールをニアに入れてゆくが、これはDFにカットされてしまう。
ロスタイム2、自陣から上がっていった吉村の中へのボールを受けた原がシュートに行こうとしたが前を阻まれてしまう。こぼれ玉を拾ったウェズレイがDFの間を抜けようとしたがこれも東京のDFの強い当たりに阻まれ、ボールを奪われてしまう。そして、試合終了の笛が会場内にむなしく響き渡り、1−4のまま、東京相手に、今シーズン初の負けを喫してしまった。最後まで応援ありがとうございました。