2003 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 1st Stage 第10節
 ピッチ上に名古屋の選手が登場すると、名古屋サポーターの声援がわき起こる。反対サイドからの磐田サポーターのブーイングが怒濤のように押し寄せてくる中でも、今日の名古屋サポーターの声援は強力だ。この声援を力にして、今日は絶対勝利だ。
 練習では、各選手とも、さすがに表情は固い。今日の試合の持つ意味がどれほど大きいかを感じさせる瞬間である。その中でも、特に楢崎や古賀、大森と言ったDF陣はいつにも増して厳しい眼差しをピッチの上に落としながら、黙々と体を動かしている。そして、FWの一角として先発に加わった原も、いつもの飄々とした雰囲気は無く、厳しい表情でボールを捌いている。しかし、この緊張感が、最高のプレーをきっと演出してくれるはず。
 そして、そんな高まる緊張感で満たされたスタジアムのピッチに磐田の選手が登場。今度はスタジアム内には、磐田のサポーターの割れんばかりの声援に負けじと名古屋サポーターのブーイングが沸き起こり、もはや何も聞き取れない状況に。選手紹介では、特に福西・名波・中山には凄いブーイングだ。この気持ちは名古屋の選手達もきっと分かってくれるはず。ともかく、今日は磐田に勝って、に応えて欲しい。
前 半
キックオフ直前の時間になって、スタジアムはうっすらと夕暮れに包まれ、ナイター照明の下で、両チームの選手が入場してくると、スタジアムの興奮は最高潮へと上り詰める。極上の雰囲気の中で、今日の大一番の試合を目の当たりに出来る幸せを名古屋サポーターと共に分かち合いたい。左にエンドを取った磐田に対し、右から左に攻め上がる名古屋。前半は、名古屋のキックオフで始まる。
開始早々、相手陣内での浮き球に詰めた山口が挨拶代わりにミドルシュート。がこれは枠には行かず、ポスト右に外れる。
1分、左サイドを磐田・服部に抜けれると、ゴール前へとボールが入るが、これはDF陣が詰めこれを掻き出す。
2分、左に抜け出したボールを受けた滝澤が上がっていって折り返すと、これに右から飛び込んだウェズレイが右足であわせるが、惜しくもポストの右に。
3分、磐田の右からのCK。名波が行くと激しいブーイング。ゴール前へのボールは落ち着いてクリアする。
4分、磐田・西が右サイドを上がって折り返そうとするが、吉村が足で弾き返す。
6分、攻め上がったところをボールをカットされ、福西が持ち上がって行くが、ここは吉村がファウルで止める。早くも中盤での激しいぶつかり合いが展開し始める。
8分、磐田・服部がゴール前に放り込んでくるが、待っていた中山には大森・パナがしっかり挟み込んでプレーさせなかった。
9分、左サイドを原が抜け出していって、中に切れ込んで行くと、中央のウェズレイに流して行くが、これは反応が遅れ、相手DFに先にカットされてしまう。
10分、自陣からのボールにウェズレイが競り合いから抜け出して行くが、その前のプレーでファウルを取られてしまう。
11分、中央から磐田・グラウが抜け出そうとしたが、パナがキッチリと着いてこれを止める。
12分、自陣中央真ん中の一での磐田のFK。服部が打ってきたボールはクロスボールの上へ13分、右から酒井が早いクロスをゴール前に放り込んで行くと、原が競り合いながら頭であせるが、ボールは惜しくも左に流れてしまう。
14分、ウェズレイがDFの裏に出たボールを左サイドで相手をかわしてシュートに持って行くが、惜しくも左に外れてしまう。
ここまでは、磐田の早い攻めにもキッチリと着いて言っており、問題なしと言える。攻撃の面でも数は少ないものの、何度かウェズレイが前を向きシュート前でもって言っているだけに、期待できそうだ。
17分、原が右サイドを上がって行くと、最後ペナルティエリア内でシュートに行こうとしたが、磐田の堅い守りに合い打つことは出来なかった。
18分、磐田の右からのシュートはクロスバーに当たり、上に弾かれる。
19分、古賀がボールを持って上がって行くと、DFの裏に出して行く。これに山口が飛び出すが、惜しくもボールが長く、そのままゴールラインを割ってしまう。
20分、右からの磐田のCK。名波のボールはクリア。
21分、右に流れた磐田・藤田が中にいた名波に繋ぐと、中央に更に入れて行く。これを後ろから来た服部がミドルシュートに来る。しかし、これは楢崎が正面でしっかりとキャッチ。
23分、左サイドで競り合いからのこぼれ球を山口がさらって縦に大きく出して行くが、これはタッチラインを割ってしまう。
25分、磐田陣内中よりやや右寄りの位置で原が倒され、好位置でFKを得る。ウェズレイが上がっていたパナにあわせようと蹴っていったが、これは読まれてしまい、磐田DFに頭で弾かれてしまう。
26分、磐田・藤田がグラウの縦のボールに抜け出してくるが、ここもパナが体を張って押さえ込みCKにする。右からの磐田のCKは、名波の蹴ったボールは楢崎が直接キャッチする。
28分、滝澤からのボールをウェズレイが吉村に渡すと、これを上がっていった滝澤に繋ごうと縦に蹴るが、コースが甘く磐田・福西に簡単にカットされてしまう。
32分、酒井の縦のボールを原が頭で落とすと、これにウェズレイが詰めていったが、ボールが僅かに流れてしまい、ウェズレイが触る前に、先にカットされてしまう。
35分、自陣真ん中ゴール正面の一での磐田のFK。名波が蹴ってくるがこれは蹴り直し。今度は藤田がゴール左を狙ってきたが、これはポスト左に外れる。
37分、磐田陣内中程左よりの位置でのFK。藤本が蹴っていったが、これはミスキック気味となり、相手に簡単にカットされてしまう。
38分、DFの裏に飛び出した磐田・中山にボールが渡るが、これはオフサイド。
41分、左サイドの空いたスペースでフリーで待っていた滝澤がパナのボールを貰って、抜け出して行くと、相手DFが寄せてきたとこでファウルで倒され、FKを得る。相手陣内深くやや左寄りの位置でのFK。藤本が流したボールをウェズレイが直接狙って蹴っていったが、ボールは浮いてしまいクロスバーの上に行ってしまう。
44分、自陣深く右寄りの位置での磐田のFK。名波がニアに飛び込む福西にあわせて蹴ってきたが、ここはDFが反応してカットする。
ロスタイム1、磐田・西が右からボールを持って上がって行くと、一人経由してグラウに渡る。これを競り合いに行くがペナルティ直ぐ外の深い位置で倒してしまい、磐田のFKとなる。この場面で藤田が右足でゴール右上を狙って蹴ってきたが、ボールはゴールを越えてゆく。そして、ここで前半が終了。磐田の多彩な攻撃にも落ち着いてDF陣が着いており、中山・グラウに殆ど自由にボールを持たせることもなく、前半はセットプレー以外、危険な場面を殆ど作らせることはなかった。中盤の競り合いでも、山口・吉村のがんばりが効いている。後半もこの調子を続けてゆけば零点に抑えることができるはずだ。あとは、攻撃陣がもう少しフリーでボールを持てるような余裕があれば、と言いたいがここは磐田の固い守備があり厳しいところだが、これを何とかこじ開けてゆく為にも、もう少し左右にボールを散らして、磐田の守備陣を振り回したいところだ。そうすればチャンスも生まれるはずだ。後半ますます目が離せなくなってきた。
後 半
満員でふくれあがる磐田スタジアムでの一戦。前半は、厳しい磐田の攻めにあいながらもこれを凌ぎきった、我らが名古屋グランパスエイト。後半は、磐田も疲れてくるはず、なんとか巻き返しを狙い、先制点を奪いたい。エンド代わって、左から右に攻め上がる名古屋に対し、右から攻め上がる磐田のボールで後半再開。
開始早々、磐田・中山が縦に突破を図るが、ここは大森が落ち着いてボールを奪う。
1分、左サイドでボールを持った滝澤が前を向こうとするが、西に押さえ込まれてしまい、倒されてしまう。
2分、磐田・中山が左サイドでボールを受けて抜け出そうとするが、ここも大森がキッチリと着いてボールを蹴り出してゆく。
3分、左サイドのスペースへ出たボールに磐田・服部が上がって行くが、ここはパナがスライディングでボールをカットする。
4分、磐田・鈴木がドリブルで上がってくると、最後右サイドのスペースへパスを出そうとするが、ここは古賀がカット。
5分、右に流れた磐田・中山からの折り返しに藤田が詰めて行くが、ここは酒井が反応し、ボールをカットする。
6分、磐田・福西の中へのボールに中山、西と飛び込んでくるが、これは触れることが出来ず。この時間帯は磐田の怒濤の攻撃が続き、防戦一方となる、ここは何としても凌ぎたいところだ。
7分、吉村がボールを持つと、縦に走るウェズレイにスルーパスを出すが、タッチの差でクリアされてしまう。
8分、左からのCKのチャンス。藤本が遠いサイドのパナに上げてゆくと、これを頭で落とすと、詰めていたウェズレイがオーバーヘッドでシュートに行くが、体勢を崩しボールはクロスバーの上へ。
10分、磐田1人目交代:西→ジヴコヴィッチ
吉村が左サイドからのボールをDFの裏に出してゆくが、ウェズレイが反応できず、相手にボールを取られてしまう。
12分、右サイドで藤本がスローインのボールを受けて抜け出そうとしたが、磐田・服部に前を阻まれ倒されてしまう。
13分、服部の左からの遠いサイドへのクロスは精度を欠き、パナが簡単に頭で弾き出す。
15分、ひだりから滝澤が中に折り返そうとしたが、これは弾かれてしまう。左からのCKは一旦は弾かれるが、再度藤本が中へ放り込むと古賀が押し込もうとしたが、相手GKに阻まれてしまう。
17分、右サイドでウェズレイが酒井からのボールに抜け出そうとしたが、寄せてきた選手に阻まれ前に行けず、ボールを失ってしまう。
19分、縦のゴール前へのボールにパナのクリアが小さくなり、これを詰めてきた藤田が押し込もうとしたが、シュートのボールは右のポストに当たり、これを楢崎が拾いピンチを救う。
20分、左サイドを抜け出した磐田・ジヴコヴィッチがボールを拾ってドリブルで更に上がって行く。大森がオフサイドかと勘違いして反応が遅れ、フリーで攻め上がられると、中に最後折り返してくるが、詰めていった中山の前をボールが通過、このピンチは相手のミスで救われることに。
23分、吉村からのボールを左で受けた山口が抜け出して行こうとしたが、コースをふさがれてしまい、ボールを奪われてしまう。
24分、ゴール前でのボールを中に折り返されると、これに磐田・名波が詰めてくるが、DF陣が体を張って寄せて行き、シュートに行かせなかった。クリアしたボールが小さく服部がカットして、シュートしようとしたが、ここもDFが奮起、ボールをクリアする。
27分、藤本が相手のボールをカットしてウェズレイに渡して抜け出そうとしたが、ウェズレイへのボールが足下に上手く入らず、相手DFに奪われてしまう。
【得点】
28分、右からのCK。滝澤が蹴っていったボールをニアで頭で合わせたウェズレイのシュートがネットを揺らし、ついに、ついに先制点を奪う。
29分、左サイドで磐田・福西が個人技で抜け出してくると、最後ダイレクトのボールをシュート気味に蹴ってきたが、これはクロスバーの上へ。
30分、名古屋1人目交代:山口→海本(兄)
31分、DFの裏へのボールに磐田・藤田が飛び込んでくるが、楢崎が勇気を持って飛び出し、これを弾き出す。
32分、左サイドからの磐田・ジヴコヴィッチのゴール前へのクロスも楢崎が直接キャッチ。
磐田2人目交代:藤田→川口
34分、相手ボールをカットした海本がドリブルで上がって行き、最後ウェズレイに繋ごうとしたが、これはボールが長すぎてしまう。
35分、左サイド深く滝澤が粘って、ラインぎりぎりからゴール前に折り返して行くと相手GKがはじき、CKかと思われたが、これはラインをボールが先に割ったとして、相手ボールになってしまう。
36分、左サイドで競り合いから抜け出した磐田・グラウが中にボールを入れると、これに中山が飛び込んでくるがDF陣が体を張ってこれを阻止、CKにする。左からのCKは、ゴール前へのボールが競り合いでこぼれたところをパナが大きくクリアする。
37分、磐田3人目交代:名波→前田
【失点】
38分、右からの磐田のCK。一旦は弾き出すもこれを右サイドでジヴコヴィッチに拾われ、ゴール前に放り込んでくると、これに遠いサイドから走り込んだ福西に押し込まれ、同点とされてしまう。
名古屋2人目交代;原→岡山
40分、磐田の右からのCK。ゴール前へのボールを楢崎がキャッチするも磐田の選手がキーパーチャージでボールを弾いてしまうが、これは磐田のファウルとなる。
41分、左サイドを上がる吉村の前に滝澤からのボールが出るが、これは相手DFに囲まれて思うようにプレーできず、ボールを見失ってしまう。
43分、右からの磐田のCK。ニアへのボールに中山が飛び込んでくるが、ボールは右のポストの外へ。
ロスタイム1、右サイドを磐田・グラウが持ち込むと中に切れ込んできて短く出してくる。これに福西が合わせようと飛び込んできたが、これはタイミング合わず。
ロスタイム2、相手GKからの長いボールを拾ったグラウがミドルシュートにくるが、古賀が前を阻み体でこれを弾き返す。
ロスタイム3、服部の右からのゴール前への折り返しは左に流れるが、これに詰めたジヴコヴィッチに拾われると、再度ゴール前に放り込まれる。しかし、ここはDFが踏ん張り、何とかCKに逃れる。
ロスタイム4、右からの磐田のCK。ゴール正面に上がったボールは、楢崎が飛び出してパンチングで弾き出す。そして、ここで審判の試合終了の笛が鳴り響き、磐田との一戦は引き分けに終わってしまう。後半、待望の先制点を奪った名古屋だったが、その後、磐田の激しい攻撃にあい、最後、惜しくも同点とされてしまう残念な展開だったが、終了間際の磐田の再三の攻撃を全員で凌ぎきり、追加点を奪われなかったという意味では、今日の同点は、勝利に等しい価値ある同点と言えよう。最後まで応援ありがとうございました。