2003 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 1st Stage 第9節
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 試合前になって、傾いてきた日差しが差し込む豊田スタジアムのピッチに選手達が練習で登場すると、大きな声援がスタンドから沸き起こり始める。その中でも一際声援が大きかったのが、前節・市原戦で見事決勝ゴールを決めた原だ。今日はスタンドに、山本監督が観戦に来ていると言うこともあってか、本人の表情は、珍しく早くも臨戦態勢に入ったかのように、厳しい。が、そんな中で如何に良い結果を残すことがFWに望まれる仕事だ。今日の試合でも、いつ交代で入るかは判らないが、彼には是非、決定力のある選手として、アピールして欲しい。
 そして、もう一人大声援に迎えられたのが、契約満了による退団ということで、今日を含め残り2試合となったヴァスティッチ。だが、彼の見せてくれたプロとしての本物のプレーはサポータには絶対忘れることはない。日本で残された僅かな時間の中で彼が見せてくれるその雄姿を、今日はじっくりと見つめ、焼き付けておきたい。
この日の仙台戦でJリーグ通算100試合出場となった大森選手に、花束が贈呈されました。
前 半
試合開始直前になって、スタジアム内は気温も上がり、ピッチ上は湿度も上がり初め、かなり蒸したコンディションとなってくる。その中で、まもなく繰り広げられる熱戦を待ち望むサポータの声がスタンド内に轟き始める。そして、大声援に迎えられて両チームの選手がピッチに登場。スタンドは大興奮状態に。連勝でこの試合を迎えると言うこともあって、今日の試合にかけるサポータの期待もいつも異常に大きいはずだ。右にエンドを取った仙台に対し、左から右に攻め上がる名古屋のキックオフで前半開始。
開始早々、いきなり、左に開いたウェズレイからのパスを受けた吉村が、中にボールを入れると、藤本がオーバーヘッドから中に繋ぎ、これにヴァスティッチが詰めるが、ここは相手DFにはさまれてプレーさせてもらえなかった。
2分、相手ゴール前で藤本からのパスを受け、抜け出そうとしたヴァスティッチが倒され、ペナルティすぐ外、左よりの好位置でFKを得る。ウェズレイが直接狙って蹴っていったが、これは抑えが効かず、ボールは大きく浮いてクロスバーを越えてしまう。
4分、自陣入ってすぐの真ん中よりの位置での仙台のFK。岩本がセットして打つと見せかけ、シルビーニョが蹴ってくるが、これはヴァスティッチが大きく蹴り出す。
5分、仙台の右からのCK。仙台・岩本が早く曲がるボールを蹴ってきたが、パナが落ち着いて頭でクリア。
7分、仙台・山下がDFの裏に出たボールに抜け出そうとしたが、これは長すぎてしまう。
8分、仙台・岩本が左サイドのスペースに出たボールにペナルティ内へ入り込んでくるが、戻った吉村が転びながらもこれを止める。左からの仙台のCKはまたもDFが簡単にクリア。
9分、左の滝澤からのボールを中で受けたヴァスティッチが縦に藤本を走らせようとパスを出すが、ボールは長すぎてしまった。
10分、左サイドの仙台・シルビーニョからのボールを受けた佐藤が振り向きざまにシュートにくるが、これは楢崎正面に。
11分、DFの裏に出たボールにウェズレイが飛び出すが、シュートは相手DFに体を寄せられながらの体勢となり、ポストの右にはずしてしまう。
12分、右からの仙台のCK。今度はニアに岩本が蹴ってきたが、詰めていた吉村がクリア。
13分、左サイドを上がった滝澤が中へとドリブルで相手を抜いて入っていったが、右足での体勢のためシュートにゆけなかった。
14分、左からのCKのチャンス。藤本の遠いサイドへのボールをパナが頭で落とすと、これにウェズレイがダイレクトで押し込むが、シュートはポストに阻まれ、前に弾かれてしまう。
16分、右サイドを仙台・森川が抜け出してきて、中へクロスボールを放り込んできたが、これは精度を欠き、ボールはそのままゴールラインを割る。
17分、相手陣内入ってやや右寄りの位置でのFK。藤本が上がっていたパナの頭に合わせて蹴っていったが、ここは相手DFに先に頭で弾かれてしまう。
19分、仙台・石井が怪我でピッチを一時的に退き、1人少ない状況に。
20分、中央のウェズレイからのパスを受けた右の酒井がDFの裏に走る中村に繋ぐと、これを中央へと折り返すが、仙台DFがクリアしCKに。
21分、左からの滝澤のCKのボールは、詰めていた選手が触ることなく反対サイドに抜けてしまう。
22分、相手陣内右中程の位置でのFK。藤本がゴール正面に蹴ってゆくと、ヴァスティッチが足に当てて押し込もうとしたが、ポストの左に外れてしまう。
24分、ウェズレイが単独ドリブルで上がってゆくと、ペナルティすぐ手前の位置で、仙台・ファビアーノに倒され、FKを得る。倒されたウェズレイが遠いサイドを狙って蹴ったゆくが、これは精度を欠き、ボールはそのままゴールラインの外へ。
26分、仙台・シルビーニョが縦に突破を図り、DFの裏に抜け出そうとした山下にパスを出してくるが、ここはパナがしっかりと呼んで大きくクリアしてゆく。
27分、仙台・森川が右サイドを速いスピードで抜け出して、中に折り返してくるが、ここはパナが頭で弾き出す。
28分、仙台の右からのCKのボールを拾って速攻にゆくが、ウェズレイが相手陣内深い位置でボールを奪われてしまい、チャンスを生かすことが出来なかった。
29分、中央のヴァスティッチからのヘディングのボールを右で拾った酒井が中へ上げてゆくと、これをウェズレイがヘディングシュート。しかし、ボールは僅かに高く、クロスバーの上へ外れてしまう。
32分、仙台がペナルティエリア周辺でパスを回して、シュートチャンスをうかがうが、名古屋も皆が戻って守備に当たり、コースを作らせない。最後は、仙台・根本が遠目からシュートにくるが、これは楢崎の正面に。
33分、滝澤が左から中へとドリブルで入ってくると、藤本に当てて縦に抜け出そうとしたが、パスを貰うことが出来ず、相手ボールになってしまう。
34分、自陣からの滝澤の大きなクリアボールに上がっていったヴァスティッチが競り合いにゆくが、ここは相手DFを倒しファウルを取られてしまう。
35分、中央で仙台がパスを回すと、味方DFが中寄りになり、左に出来たスペースにパスを繋がれる。仙台・シルビーニョからのボールを受けた根本が、フリーの状況で左足でシュートを打ってくるが、ボールはクロスバーの上へ。
37分、右からの仙台のCK。一旦は外へクリアするも、再度浮き球を中に繋がれると、最後、仙台・数馬がヘディングシュート。しかし、これは力無く楢崎が簡単にキャッチする。
39分、左サイドを滝澤が藤本とワンツーで抜け出しを図るが、ボールが長すぎてしまい、貰うことが出来なかった。
41分、左から滝澤の速いゴール前へのボールはクリアされてしまう。
【失点】
42分、左に開いた仙台・佐藤の遠いサイドへのボールに岩本が飛び込んでダイレクトで押し込み、なんと、仙台に先制点を奪われてしまう。中央を気にしすぎて出来てしまったサイドを狙われた形での失点となってしまう。ここは気を取り直して、一度、守備の修正の必要があるだろう。
44分、右の酒井が上がって中へ折り返そうとするが、これは素直すぎてしまい、簡単にDFに弾き返されてしまう。
ロスタイム1、酒井が中央から左の前のスペースにボールを出すが、これは追いつけず。
ロスタイム2、ウェズレイが相手ペナルティすぐ外、右の位置でボールを受けると、縦に上がって右足でシュートにゆくが、ボールは僅かに左のポストの外へ。
ロスタイム3、仙台・根本が左からアーリークロスを入れてくると、これに佐藤が頭で合わせてくるが、ここはオフサイド。そしてここで前半が終了。
1点ビハインドでの折り返してなってしまっただけに、後半は早い時間帯にまず追いつく必要があるだろう。市原戦の時が嘘のように出だしで仙台に負けてしまっているだけに、スピードのある選手を入れてリズムを代える必要があるかもしれない。後半、原の登場が待ち遠しい。監督の采配に期待しよう。
後 半
開始してしばらくこそ、ボールを支配していたものの、途中からはボールへの出足で仙台に負けてしまい、後手後手に回ってしまった感がある。後半はまずボールを先に奪い、試合を有利に進めることが重要だ。エンド代わって右から左に攻め上がる名古屋。後半は左から攻め上がる仙台のボールで再開。
名古屋1人目交代:吉村→原
開始早々、酒井の縦のボールに代わって入った原が走ると、ファウルで倒され、相手陣以内深い位置でFKを得る。ゴール正面に入れていったボールはDFに弾かれるものの、浮いたところをヴァスティッチが押し込もうとしたが、相手DFに阻まれてしまい、ゴールを割ることは出来なかった。
2分、中央から左に流れるヴァスティッチが上がってきた酒井にだすと、これを直接シュートに行くが、ボールは相手GKの正面に。
3分、自陣右中程の位置での仙台のFK。仙台・岩本がゴール左隅を狙って蹴ってきたが、楢崎が落ち着いてこれをダイレクトでキャッチ。
5分、左に上がってゆくヴァスティッチが遠いサイドに折り返してゆくが、これは詰めていた選手の頭を越えていってしまう。こぼれたところを拾ってのシュートはポストの右に。
6分、右サイドで中村が粘って寄せてきた藤本に繋ぐと、これをさらに中の原へ。右足でシュートを打った原だったがボールは相手GKの正面へ。
8分、左の藤本からのボールを胸でヴァスティッチが落としてウェズレイに繋ぐが、ここは相手DF3人に囲まれ、シュートに行けなかった。
9分、楢崎からの大きなフィード1人を経由して前線のウェズレイへと繋がるが、シュートにゆく体勢の時に相手DFに足下にスライディングを受けボールを弾き出されてしまう。
11分、仙台・根本が早い上がりを見せ、左からゴール前に低いボールを入れてくるが、ここは楢崎が飛び出してキャッチ。
12分、仙台・数馬が右サイドを上がってゆこうとしたヴァスティッチを倒し、この日2枚目の警告で退場となり、仙台は1人少なくなってしまう。相手陣内右寄りの位置でのFK。藤本がゴール正面へ入れていったが相手GKがキャッチしてしまう。
14分、右からのCKのチャンス。
仙台1人目交代:佐藤→渡辺
短く出してゴール前へと放り込んでゆくとこれを古賀が頭で合わせるが、シュートは相手GKが反応し、キャッチしてしまう。仙台は1人少なくなった、名古屋が有利となっただけに早く同点に追いつきたいところだ。
17分、藤本が遠目からミドルシュートを打つがこれはポストの右へ。
18分、右からの中村のゴール前への早いボールには何人かが飛び込むものの、相手ゴールのネットを揺らすことは出来なかった。
21分、左からの滝澤のゴール前へのボールに原が待っていたがその前に相手DFに弾かれるが、こぼれ球にウェズレイが詰め右足でシュートに。しかし、これはクロスバーの僅かに上へ。
22分、左からのCK。滝澤のニアへのボールを藤本がスルー。これを古賀が押し込もうとしたが相手DFに当たってしまう。続くCKでもボールを相手ゴール前へ入れてゆくも、仙台のDF陣に粘られゴールにゆくことが出来ない。最後中村のミドルシュートはクロスバーの上へ抜けてしまう。
24分、自陣中よりやや右の位置での仙台のFK。岩本が直接蹴ってきたが、ボールは辛うじてバーの上へ抜けてゆく。
25分、ペナルティ内へ左から藤本がドリブルで進入してゆくが、シュートまでゆくことが出来ない。
26分、名古屋2人目交代:酒井→岡山
27分、岡山が右の縦のスペースにウェズレイを走らせるが、これはボールが長すぎてしまう。
仙台2人目交代:阿部→森保
28分、滝澤がロングスローをゴール前に入れてゆくと、上がっていたパナに合わせようとしたが、これは弾かれてしまった。
【得点】
29分、相手ペナルティすぐ外でのこぼれ球を拾った岡山からのボールを受けた藤本が遠目から右足でシュートに。これが見事相手ゴール右隅に決まり、ついに同点に。こうなれば、ここからは一気にたたみかけて、追加点を狙ってゆきたい。
31分、ウェズレイからの左からのグラウンダーの折り返しを待っていたパナが押し込もうとしたが、ここは止められてしまう。
32分、上がっていたパナに滝澤がDFの頭越しを狙ってパスを出そうとしたが、これは弾かれてしまう。
33分、
仙台3人目交代:岩本→千葉
34分、ヴァスティッチのゴール前へのアーリークロスに藤本が飛び込んでいったが、ここは相手DFが先にこれを弾いてしまう。
35分、仙台・森保左に上がっていってDFの裏へ出してくると、これに山下が飛び出すがオフサイド。
36分、仙台・シルビーニョが右サイドを使って突破してこようとするが、ここは藤本がこれをセーブする。
38分、左のウェズレイからのゴール前へのボールに上がっていった藤本がヘディングシュート。決まったかと思われたボールは僅かに左に流れ、ポスト左へ外れる。
39分、右の中村からの遠いサイドへのボールをパナが頭で折り返すと、ニアのウェズレイがこれを拾って押し込もうとしたが、相手DFに止められてしまう。
40分、自陣左深く、ペナルティすぐ外の位置で仙台にFKを与えてしまう。しかし、直接狙ったボールは精度がなく、そのままゴールを越えてゆく。
41分、藤本が早いリスタートでボールを出すと、上がってきたヴァスティッチに繋ぐ。これをドリブルで深く入っていって中に折り返すが、相手DFの体を張った守備に阻まれてしまう。残り時間僅か、一人少ない仙台は、ここへ来て時間稼ぎのプレーが目立ち出す。
43分、仙台・根本が左でフリーでシュートに。
1対1の場面だったが、楢崎が好セーブを見せ、クロスバーの外へ弾き出す。
ロスタイム1、藤本が右から遠いサイドのパナに合わせて蹴ってゆくが、これは長すぎてしまう。
ロスタイム2、自陣右中程の位置での仙台のFK。短く出して縦に持って上がった仙台・シルビーニョが折り返すと、ここに飛び込んでくるが、ヘディングシュートは辛うじてバーの上へ。
ロスタイム3、大森がドリブルで上がってゆくと、遠いサイドで待っていたヴァスティッチへ、これをダイレクトボレーであせるも、惜しくもボールはバーの上へ。
【得点】
ロスタイム4、相手陣内中程の位置で仙台・ファビアーノがこの日2枚目のカードを受け退場に。ついに仙台は9人となってしまう。相手陣内中央ゴール正面でのFK。このセットプレーで藤本がボールに寄せたところをウェズレイが軽く流がすと、ヴァスティッチが受け、右足でゴール左隅に劇的なシュートをたたき込み、ついについに仙台を突き放し逆転にする。そして、試合はここで終了。なんと言うことか、こんな感動的なドラマを誰が予想したのか。まさかのロスタイムでのヴァスティッチの逆転弾。今日の彼のこのシュートで、名古屋のサポータは彼のことを絶対忘れることは無いでしょう。ありがとう、ヴァスティッチ。まさに感動をありがとう、イヴォ!最後まで応援ありがとうございました。

試合終了後、これが日本での最後の試合となったヴァスティッチ選手の場内1周が行われました。