2003 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 1st Stage 第4節
試合前には心配されていた雨もなんとか持ちそうだ。ここ味の素スタジアムは涼しく、そして、心地よい風が吹き抜けている。試合に先立っての練習でも、各選手とも初めはアップ用のウェアを着込んでいたが、すぐに脱ぎ捨て、みんなが汗を浮かべながらの練習となった。ボール回しの時も、上気した顔で、早くもトップスピードに入ったかのような勢いでボールを追い回していたウェズレイの姿がとても印象的だ。彼も久しぶりの試合出場と言うこともあり、かなり力が入っている様子。早い時間からの得点シーンが拝めそうだ。前節・鹿島戦ではヴァスティッチへの決勝アシストで見せてくれた他にも、攻守に渡って活躍を見せた中村も目立っている一人だ。今日は吉村が居ない分中盤での役割が一層重要になってくるとは思うが、この大役を果たしてくれると期待したい。まもなく、キックオフ。試合開始が待ち遠しい限りだ。
前 半
味の素スタジアムは、直前のメンバー紹介が始まると、東京サポーターの独特な声援に包まれる。浦和や鹿島とは一味違った、強烈な応援だ。そして、不思議な人形に挟まれて両チームの選手が入場。名古屋のサポータの応援も始まり、スタジアム内は騒然な雰囲気になりはじめる。試合は左にエンドを取った東京に対し、右から左に攻め上がる名古屋。名古屋のサポーターの後押しを受け手の戦いだ。前半は東京のキックオフで試合開始。
開始早々、挨拶がてらのボールを左サイドの前線に入れてくると、これに東京・戸田が上がってくるが、ここは大森がしっかりとマークに付きファウルを誘う。
1分、東京が自陣右深い位置でのFKを得る。宮沢が左足で入れて来ようとするがこれは壁に当たってはじき返される。
3分、中盤で東京・アマラオがボールを持つと、古賀が激しく寄せて行ってこれを前に繋がせなかった。
5分、自陣中程やや右寄りの位置での東京のFK。今度も宮沢が蹴ってくる。ゴールを直接狙ったボールだったが、楢崎が正面でキャッチ。東京は自陣から前線に長いボールを放り込んで、アマラオが落としたところを2列目から拾って上がって行こうとしているが、味方DFがここはしっかりとマークに当たり、こぼれ球はキッチリとクリアしている。
8分、右に上がる東京・ケリーのボールを受けた石川がゴールを直接狙ってミドルを打ってくるが、これも楢崎が正面でキャッチ。
10分、左サイドでボールを上がりながら受けたヴァスティッチが抜け出そうとしたが、東京DF2人に前を阻まれ、抜け出す前にボールを奪われてしまう。
11分、左サイドを抜け出した東京・浅利の折り返しは中村がクリア。続く左からの東京のCKは遠いサイドのボールを古賀がクリア。今度は右からの東京のCK。遠いサイドに上がったボールに東京・ジャーンが頭で合わせるが、これはクロスバーの上。ここまでは東京の攻撃が続いているが、凌いで行きたいところだ。
13分、岡山が右から切れ込みながら相手DFの裏にパスを出し、ウェズレイを走らせようとしたが、これは意志があわず。
14分、東京の長い左前線へのボールに東京・戸田が詰めるが、ここはパナがキッチリと付いて、ボールをクリアする。
17分、右に出た長いボールを拾った岡山が戻したボールを酒井が左サイドに上がるウェズレイに繋ぐ。これを中に入れようとして弾かれるものの、詰めていったヴァスティッチが拾ってヒールで流すと、再度拾ったウェズレイが遠いサイドにあげていった。しかし、残念ながらこれには誰も反応できず、相手ボールになってしまう。
20分、右サイドを東京・石川が攻め上がろうとするが、滝澤がスライディングでこのボールをカットする。
21分、右サイドでの東京のFK。縦に出してきたボールを石川が拾いに行くが、中村がキッチリとこれをクリアする。アウェイと言うこともあってか、ここまでは全員の守備のバランスが良くできており、危ない場面は殆ど見られない。
22分、岡山が右を上がっていって、ぎりぎりから中に折り返すが、詰めていたウェズレイに届く前に、東京DFにクリアされてしまう。
23分、右サイドを上がっていた東京・加持がゴール前に上げてくると、これに戸田が詰めてくるが、パナが頭でクリアする。
24分、東京・ケリーが酒井、パナとかわして、ペナルティエリアに侵入してくると、楢崎と1対1になる。ループ気味のシュートを蹴ってくるが、ここは楢崎がしっかりと反応、両手でこれをキャッチする。流石だ。
26分、東京・アマラオが抜け出し、右から上がってきた石川に繋ぐと、このボールをシュートを打ってくるが、これも楢崎が正面で落ち着いて止める。相変わらず東京が前線からボールを拾っては攻め上がってくるが、名古屋も落ち着いてこれを押さえ込んでいる、と言う状況が続いているこの時間帯。苦しいところだが、なんとか凌いで行きたい。
28分、DFの裏に出たボールに飛び出した戸田が走り込んでくると、楢崎が果敢に飛び出し、エリアの外だったが、落ち着いて胸でボールを止めて、クリアに逃れる。東京は相変わらず縦への長いボールが多く、はっているアマラオを使おうとしているが、古賀がしっかりとマークに付き自由にさせていない。
32分、上がっていたパナからのDFの裏へのボールは飛び出したウェズレイがオフサイドに。なかなかボールが出てこないことでウェズレイが少々苛立ち気味に。ここは落ち着きが必要だ。
34分、自陣入ってすぐ真ん中の位置での東京のFK。DFの裏を狙った縦のボールはオフサイドに。
【失点】
35分、大森からの横へのボールを古賀と滝澤が譲り合うと、これを東京・石川に拾われ、中にドリブルで切れ込まれる。ゴール正面の位置でミドルシュート。このボールがクロスバーに当たって前に跳ね返るが、楢崎の背中に当たるという不運に見舞われ、得点をを許してしまう。
37分、東京・ケリーがゴール前に上がってきてペナルティの外からシュートをしてくるが、これはクロスバーを越えてゆく。先制したことで東京の動きが良くなり始める。再三の攻撃を凌いできただけに、先程の失点は悔やまれる。
38分、東京DFの裏に出たボールに藤本が抜け出すと、GKの頭越しにループシュートを打って行く。しかし、わずかに長くなったシュートのボールはクロスバーに当たってゴールを越えていってしまう。
40分、ドリブルで滝澤が上がって行くが、東京のDFの足下へのスライディングにボールを奪われてしまう。
41分、東京の左からのCKはニアへのボールを中村が頭でクリア。
42分、東京の左からのCK。ゴール前へのボールは飛び出した楢崎が直接キャッチ。
43分、右からの岡山のボールをヴァスティッチが頭で繋いで、藤本、ウェズレイへとボールが回るが、ウェズレイがこのボールを持って前を向けず、相手DFにボールをカットされてしまう。
ロスタイム1、左サイド、フリーで待っていた滝澤にボールが通ると、これを中の藤本に繋ぐ。縦に走るウェズレイに向けて浮き球を入れていったが、わずかにボールが高く、これを受けることがウェズレイは出来なかった。そして、ここで前半終了の笛が。前半は殆ど防戦一方だった名古屋としては、後半巻き返しが必要だ。両サイドからのボールも少なく、ウェズレイが前線で孤立する場面も多く、時に縦パスが出てくるものの、キッチリと2人のマークが張り付いており、自由に動かせて貰えない。このあたりを変えて行かないと、なかなか点には結びつくそうにはないところだ。ともかく、後半は早い時間帯の同点で試合を振り出しに戻すことが先決だ。
後 半
前半は押し込まれ気味の展開が続き、良いところがなかった名古屋。後半は絶対に巻き返して欲しい。エンド変わって、左から右に攻め上がる名古屋のボールで後半開始。名古屋1・2人目交代:酒井→山口、岡山→原。早速、手を打ってきたベルデニック監督。開始早々、ウェズレイが左サイドを突破して上がってくると、中に折り返すが、ここは誰も間に合わず、相手ボールに。
1分、今度は右サイドを変わって入った原が上がって行くが、コースを阻まれボールを失ってしまう。
2分、左を上がった滝澤からのボールをヴァスティッチが右サイドに大きく出して行くと、ウェズレイが頭でトラップして抜け出そうとしたが、落としたボールが大きく流れてしまい、相手GKに拾われてしまう。
4分、東京・戸田が右サイドからのゴール前のボールを頭で流してゴールを狙ってくるが、ここは楢崎が反応しボールを弾き出す。左からの東京のCKはパナが簡単に頭でクリアする。
5分、大森の縦パスに反応した藤本が走り込んで折り返すが、東京DFにクリアされてしまう。
6分、原が右サイドを突破を図ると、たまらずDFが寄せてくるがこれをかわして粘って折り返すと、これが相手選手に当たり、CKを得る。滝澤の右からのCKのボールは待っていたパナの頭に届く前にクリアされてしまう。後半開始直後の、勢いのあるこの時間帯に同点にして行きたいところだ。
11分、ウェズレイが相手ゴール正面でのこぼれ球をシュートするが、相手DFに当たってしまう。再度、こぼれ球を拾ったヴァスティッチがゴール右を狙うが、ボールはポストの右に流れて外れてしまう。
12分、左サイドを上がってきた藤本が直接ミドルシュート。強烈なボールはわずかに左のポストの外へ。

【得点】
14分、相手ゴール前に攻め上がると、こぼれ球を右で拾った中村がそのままシュート。これが見事相手GKの上を抜け、ネットを揺らす、同点弾に。やったぞ、中村!ナイスだ、直志!!試合はこれで振り出しだ。
16分、相手ゴール前に上がってきた山口が、中で待っていたウェズレイに繋ごうとするが、東京DFに囲まれれて動きだしが遅れ、ボールは奪われてしまう。同点にしたことで名古屋の動きが目に見えて良くなる。ここで一気に突き放す意味でも、どんどんと追加点を狙ってゆきたい。
19分、ウェズレイがドリブルで抜け出すと、相手ペナルティ近くまで上がって行くが、シュート体勢に行く前に倒されてしまい、ボールを奪われてしまう。
20分、東京の右サイドを山口が藤本とのワンツーで抜け出して折り返して行くが、このボールはDFにクリアされる。続くスローインでのボールを藤本がもらって前を向こうとしたが、体を寄せられボールを中へ入れることが出来なかった。
22分、東京1人目交代:アマラオ→阿部
23分、相手ペナルティ内でヴァスティッチがシュートしたボールをGKが弾くと、このボールが藤本の前に。体を反転させてシュートに持っていったものの、相手GKの好セーブに阻まれてしまう。
25分、相手陣内へ転がるボールに走り込んだヴァスティッチが寄せてきた選手を交わして抜け出そうとしたが、ファウルを取られてしまう。
26分、東京の右からのCK。宮沢がニアに蹴ってきたが中村が頭で大きくクリアする。
27分、自陣右深い位置での東京のFK。ここでも宮沢が今度は遠いサイドを狙って蹴ってくるが、飛び出した楢崎ががっちりキャッチ。
28分、右サイドからゴール前に東京・石川が上げてくると、上がっていた東京・ジャーンが頭で合わせようとしてくるが、一緒に飛んだパナを引っ張ったとしてここはファウルに。
29分、東京・ケリーが正面からペナルティ内に侵入すると、味方DF構えを阻んだところを倒れるが、ここはシミュレーションを逆に取られる始末。残り時間は15分を切った。次の1点が勝敗を決めるとあって、両チームのサポータの応援の熱も上がりっぱなしだ。
31分、東京・戸田がゴール前の縦のボールに飛び出してくるが、楢崎が果敢に飛び出して先にボールを弾き出す。勇気あるプレーだ。
32分、ウェズレイが右に抜け出すと、右足でシュートを放って行くが、これは体勢を崩してのシュートとなり、ゴールを大きく越えてゆく。
34分、東京2人目交代:戸田→馬場。東京の右からのCK。宮沢の入れていったボールはニアの選手があわせるも、大きくゴールの上に外れてゆく。
35分、東京・金沢が左を抜けてゆくと折り返しを入れようとするが、大森が足で弾いて止める。しかし、再度これを拾って中への折り返しを図るが、中にいたDFがダイレクトで大きくクリアする。
37分、相手ペナルティエリア外での攻防でこぼれたボールを右で拾ったヴァスティッチがゴール左隅にループシュートを狙うが、惜しくもポスト左に外れる。
38分、名古屋3人目交代:藤本→渡邉(!)
39分、東京の右からのCK。ニアへのボールは中村がクリア。
41分、東京・ケリーがDFの裏にスルーパスを入れてくると、これに右から東京・石川が走り込んでくるが、ここはDF陣が踏ん張り、これを阻止する。
42分、山口が右サイドを上がる原を狙って浮き球を出していったが、これは流れてしまい、原はタッチすることは出来なかった。
43分、自陣深くやや左よりの位置で東京の選手を倒してしまい、FKを与えてしまう。この場面を宮沢が左足で蹴ってきたが、これは壁に当ててしまう。
ロスタイム1、東京・石川が右から突破を図るが、山口がしっかり付いてこれを止める。そして、約2分のロスタイムを経て試合終了の笛がスタジアムに鳴り響き、名古屋はこの試合を引き分けに終わることが出来た。同点にしてからは押し気味に試合を進めていただけに、逆転できなかったことは残念だが、アウェイの試合を同点に追いつき、勝ち点1を得たことの意義は大きいはずだ。最後まで応援ありがとうございました。