セフ フェルホーセン新監督・記者会見の模様

 12月14日(水)、名古屋市内のホテルにおきまして、2006年からの名古屋グランパスエイト新監督に就任が決定しましたセフ フェルホーセン氏の記者会見が行われました。
松岡和良専務取締役から2005年シーズンの総括に続いてフェルホーセン新監督のプロフィールが紹介され、記者からの質問に全て丁寧に答えての、1時間以上にも及ぶ長時間の会見となりました。

- 松岡専務取締役からの挨拶 -
 まずもって、この一年、グランパスを最後まで応援してくださったファン・サポーターを始め多くの方々に、心から感謝申しあげますとともに、皆様のご期待に沿えるような結果を残すことができませんでしたことを申し訳なく思っております。
振り返ってみますと、今年のリーグ戦は長丁場の1シーズン制となる中で、グランパスはシーズン途中での監督交代や外国籍選手の移籍、ケガ人等の多発等いろいろな状況が発生し、安定した戦いを展開する事が出来ず大変厳しく、苦しいシーズンとなりました。
チームとして自分たちの戦い方が確立できなかったとともに、個々には技術面、メンタル面での弱さ、甘さが目立つような状況もありました。しかしながら一方で、若手選手の成長や、選手間での前向きなコミュニケーションの場作りなど、少しずつではありますが「闘う集団、闘えるチーム」に変わりつつあると感じております。
来シーズンは、これらの課題を克服しつつ、真に「闘えるチームづくり」に向かってさらに取組みを進めていかなければならないと思っています。グランパスの目指すサッカーですが、来シーズンは「チーム全員が一体となった連動性あるサッカー」を目指したいと考えております。
そのために、チーム戦力の整備、チーム戦術の基盤作り、成熟化を計画的・段階的に進めることが必要であると考えております。当面は日本人選手のレベルアップと外国籍選手を含めた選手補強が必要と考えておりますが、着実な取り組みを通じて確かな実力を持ったチームづくりを図っていきたいと考えております。
セフ フェルホーセン監督プロフィール
氏名 セフ フェルホーセン(SEF VERGOOSSEN)
国籍 オランダ
生年月日 1947年8月5日生(58才)
指導者歴 1989年〜 MVV(オランダ)テクニカルディレクター
1995年〜 MVV(オランダ)監督※2部降格後監督復帰、1997年から1部復帰
1998年〜 ローダーJC(オランダ)監督※1999年オランダ杯優勝、UEFA杯出場
2001年〜 ゲンク(ベルギー)監督※2001年リーグ優勝、UEFA杯CL出場
2004年〜 アルジャジーラ(UAE)監督
ドワイト ローデヴェーヘス(アシスタントコーチ)プロフィール
氏名 ドワイト ローデヴェーヘス(DWIGHT LODEWEGES)
国籍 オランダ
生年月日 1957年10月26日生(48才)
指導者歴 1998年〜 FCズヴォレ(オランダ)監督
2001年〜 FCフローニンヘン(オランダ)監督
2003年〜 SCヘーレンフェーン(オランダ)アシスタントコーチ
2004年〜 アルジャジーラ(UAE)アシスタントコーチ
- 記者会見の模様(全文) -
 まず名古屋に来る事が出来て大変嬉しく思っています。特に、私の良い友人でもありますアシスタントコーチのローデヴェーヘス氏と共にここに居られると言う事を嬉しく思います。私自身58歳ではございますが、妻がおりまして、また1人の息子もいます。しかし、息子はオランダで仕事を持っているため妻の方が私と共にずっと名古屋に住む予定で、息子の方は訪ねてくるという形、仕事の合間に4、5日、名古屋を訪れるというような形になると思います。
私はすでにサッカー界で仕事をし、27年が経過しています。そのキャリアの中でいろいろなクラブの監督やアシスタントコーチとして仕事をしてきました。最近での仕事は、アルジャジーラ(U.A.E.)での仕事でした。MVV(オランダ)での仕事は、9年間そのクラブに在籍したのですが5年間はテクニカルディレクター、その後の4年間は監督として仕事をしました。その後、オランダの南部にあるローダーJCというクラブでも仕事をしました。そこで3年間監督を務め、その後はベルギーにあるゲンクというクラブでも3年間、監督を務めました。そして最後の仕事については、先ほども話しましたが、友人であるローデヴェーヘス氏と共にU.A.E.にあるアルジャジーラというクラブで指揮をとりました。
私は名古屋グランパスエイトに対して大変感謝をしています。話し合いをすすめ、このように契約する事ができたという事を大変うれしく思っています。グランパスが私に、サッカー大国になりつつある日本という国で大きな機会を与えてくれた事に感謝しています。名古屋へ来て2週間がたつのですが、グランパスというクラブは1つのファミリーのようであり、そのファミリーの1員になった気持ちでもあります。この14日間をクラブの内外、多くの人たちと会う事が出来ました。その方々は皆、とてもプロフェッショナルであり、暖かいイメージも持っていました。私の滞在にもいろいろと手助けをして頂き、とても感謝しています。それは何を意味するかと言いますと、皆様の支援を得て、サッカーの事だけを考えればよい、とても集中できる環境でした。ですから、すでに仕事を始めるためにも環境は整ったと思っています。
サッカーについては、グランパスエイトがジェフユナイテッド千葉、そして天皇杯で大宮と対戦した試合を実際にこの目で観る事が出来ました。また、DVDでは15試合ほど、グランパスの試合を観る事が出来ました。またその合間にも、グランパスのコーチ陣、経営陣ともいろいろと話し合う事ができ、これからどのような選手を獲得し、どのようなスタイルでサッカーに取り組んでいけばよいかという事についても、大変多くの時間を費やして話し合う事が出来ました。実際にとても良い印象を持っています。とにかく、来シーズンへの用意をするためにはとても時間が迫ってきていますので、明確な方向性を打ち出して取り組む事が重要だと考えています。日本でサッカーをするという事は私にとって、非常に大きな挑戦となります。実際にグランパスエイトに、私のやりたいサッカーを持ってくる事、また、選手やチーム内の皆さんにそれを伝えていく事がとても重要になります。私が監督として思っている事は、良いコンビネーションを持って選手とコーチ、クラブが手を携えていく事が必要だという事です。みんなで一丸となってチーム作りをしていかなければならないと考えています。もちろん、不安もないとは言えません。いろいろと恐れる事はあったのですが、この名古屋に滞在した14日間で恐れる気持ちという物は無くなりました。なぜなら、私の周りにいる皆さんが本当にいろいろと手助けをしてくれたからです。そして、監督としてはチームの選手と共に一丸となってチーム作りをしていこうという強い気持ちを持っています。
サッカーは非常に単純なものなのですが、私の認識としましては、サッカーとはスポーツであると共に非常に商業的にビジネスでもあり、また、皆さんの娯楽にもなっていると考えております。プロフェッショナルなサッカークラブが何を意識しなければならないかというと、サポーターを喜ばせる、テレビで観戦されている方々も喜ばせるという事が出来なければならない、そう言う認識を私自身持っています。つまり、サッカーをすると言う事は皆さんに娯楽を与えるという事なのですが、そこでもう1つ重要な事は、結果を出すという事です。その結果と、皆様に娯楽を与えるという2つのバランスが取れて初めて、良いサッカーという物が出来るのだと考えております。
先ほどサッカーをシンプルな形で戦いたいとも話しましたが、そのシンプルな気持ちという物は、選手達にも持って頂きたいと思います。もちろん試合に勝ちたいのですが、だからといって負ける事を恐れてはいけないと思っています。クラブの方達と話してきまして、特に精神面についても話しましたが、負ける事を恐れないサッカーをする、それがすごく大事だと思っています。4バックシステムで4-4-2にしたりと、その他にもいろいろなシステム、形を取る事が出来るとは思いますが、私が監督としてやるべき事は選手の本質を見抜き、その選手が上手く機能するようなシステムを採用していく事だと考えています。私と、私の良い友人でもありますローデヴェーヘス氏はマジシャンではありません。ですから、我々には時間と猶予を与えてください。すぐに答えを出せるような魔術は使えませんから。しかし、私とローデヴェーヘス氏はこのクラブが強く、より高いレベルへ発展する事が出来るよう戦力を注ぎます。
私はクラブのみんなに、こういう事が出来るのだと言う事を知って貰いたいと思います。それはどう言う事かと言いますと、チームの誰もが、私やアシスタントコーチのところへ来て、意見を言う事が出来る、そう言う雰囲気作りが必要だと言う事です。
皆様、今日は本当にありがとうございました。今から6ヶ月後にはドイツでワールドカップが開催されます。また、私の友人でもありますヒディング氏が率いるオーストラリア代表も日本とは同じ代表に入っているわけですし、ぜひ頑張って頂きたいと思っています。6ヶ月後になりますし、日本の代表チームも今より力を付けていると思います。そして私は、皆様が日本代表とともに、我々グランパスエイトのことも応援し続けてくれると信じています。
Q:まずはじめに、監督に就任された今のお気持ちは?
 今回の契約はまず、名古屋グランパスエイトのテクニカルディレクター、上田滋夢氏から私へ声をかけて頂き、私が行くところなら世界中何処まででも着いていくと言って頂きました。そして、いろいろと世話をして頂き、またとても良いタイミングで名古屋へ招いて頂きました。名古屋グランパスエイトがどう言うチームで有るかという事を実際に見る事ができ、これからの可能性についても沢山の話を聞く事ができました。
 そのような経緯から実際にグランパスエイトがもっと安定した力をもつチームとして作る事が、私にも出来るのではないかという気持ちを持ちまして、今回のオファーを受ける事となりました。
私は27年間プロスポーツの現場にいるわけですが、優勝を目指す事はもちろん、4位にいれば3位、3位にいれば2位と、1つでも上の順位を目指すという事がプロフェッショナルの取るべき態度だと考えています。そう言う心がけで今回、監督に就任することとなりました。
Q:日本の印象、名古屋の印象を。また、日本についてご存じの事が有ればお聞かせください。
 アラブ首長国連邦(U.A.E.)のクラブから移ってきたため、すでに母国であるオランダからは離れた環境でこれまで過ごしてきていました。実際日本にはかつて招かれた経験もあり、全く新しい環境というわけではありません。8年か9年前、ジェフユナイテッドに招かれて日本にしばらく滞在していた事が有ります。ですから日本という国に対して、全く新しい印象というわけではなく、少し懐かしいという印象を持っていました。
ただ、私がこの2週間日本に滞在している間に、サッカーに完全に集中できる、日本という国は大変素晴らしい環境に有るなという事を実感できました。例えばU.A.E.では40%位しかサッカーに集中することが出来ず、例えばあとは宗教的な事ですとか、天候の事など、他の事にもエネルギーを注がなければならない環境でした。名古屋へ来てこの2週間、私は完全にサッカーの事だけを考えて生活できるな、ここは素晴らしい環境だなと言う事を実感しました。それが日本に対する印象です。
Q:ジェフユナイテッドに招かれた際には、臨時コーチをしていたと伺っているのですが?
おっしゃる通りです。今はジェフユナイテッドでテクニカルディレクターをされている祖母井さんと言う方から声をかけて頂き、実際に臨時コーチして働いた事があります。その時に日本で働くという話も実際には出てはいたのですが、新しい契約がすでにあり、日本に残るという事は不可能でした。いろいろな状況がまた起こってきたのですが、日本サッカー協会のスポンサーシップもあったりして、先ほど話しました、最初に日本へ来た経験となりました。とにかく日本とオランダのサッカー協会にはお互いにいろいろと出入りがあると言う事を知っております。私が訪ねた後も、日本のユースチームが2週間オランダを訪れてきた事もありますし、そういう若いチームの交流もあります。とにかく、日本とオランダのサッカーでの交流は続いているという事です。
Q:ジェフでコーチをされた時と、今回来日された間に、日本のサッカーに対して受けた印象に変化は?
 9年前に来た時は、トレーニングを実際に行わなければならなかったと言う事もあり、本当に忙しかったわけです。試合も実際には1試合しか見られなかったはずなのですが、その後も日本の状況という物は耳にしたり目にしたりはしていました。当時は1チーム内に今より多くの外国人選手の登録が認められていたかと記憶しています。今ではそれが新しいルールによって外国人選手の枠が3人になったと認識しています。つまりそれは、日本人の選手にチャンスがより広がっていると言う事であり、日本人選手が自分の才能をアピールしやすくなってきているのではないかと考えています。また、日本のワールドカップへの出場も来年で3回目であり、日本のサッカーという物の存在が世界へ知れ渡ってきているという認識も持っています。U.A.E.でもオランダでも、日本のJリーグのハイライトは放映されていますし、目にする機会も多いです。ですから、日本のサッカーはますます成長を遂げていますし、新しいルールが出来たおかげで日本の選手が育ってきており、日本代表がワールドカップに出場すると言う事が非常に大きな成果として取り上げられ、日本のサッカーの存在は益々大きな物になっていると思っています。
また、日本の良い選手も海外へいろいろと進出しています。皆さんが絶対にご存じなのが、小野選手だと思います。日本からオランダのチームへ移籍したわけですが、非常に上手であり、人気も高い選手です。オランダ人みんなが注目しているような存在です。ですから、日本のサッカーは有名になってきています。他にも、イギリスやドイツへも日本人選手が進出していますし、その様な選手が日本のサッカーのメンタル面を支えていると言っても良いのではないでしょうか。例えば、海外で活躍する選手が日本代表に選ばれ、戻ってきてみんなと一緒に、自身の経験をいかしてプレーをするという事、それが代表チームをますます強くしていっているという、国境のないサッカーが日本サッカー界の中にもすでに存在しています。それが日本のサッカー界全体のレベルアップをし、また、代表に選ばれた選手達が本国に戻ってクラブで良いプレーを続ける、そう言った良い循環が起こっていると思っています。
ヨーロッパで活躍している日本人選手は、プロフェッショナルとして素晴らしいと皆が言っています。精神的にも、生活態度の面でも、非常に優れた評判を得ています。
Q:監督自身の理想とするサッカースタイルとは?
 先ほども言いたかったのですが、選手にコーチ陣から何かを押しつけるという事ではなく、選手達が自分のアイデア持ち決断して行うサッカーをできるよう私は指示を出していきたいと思っています。サッカーという物は、とてもシンプルなスポーツではありますが、とても難しい側面も持っています。そのような2面性を考えた際に、システム等を変化させるという事は良くない事だと考えています。ですから、選手自身のプレイスタイル等を考えたうえで、一貫したシステムを作り上げていきたいと思います。私の考えでは、毎日の積み重ね、毎日の経験という物が非常に大切なものになってきます。その中で選手達がどのようなアイデアを持ち、話していくかという事を重要視していきたいと思います。もちろん私の使命は勝ち点をより多く取るという事です。
 しかし、先にも話しましたが、負ける事を恐れない、これがとても重要になってくると思います。サッカーの試合とは、1-0だったり4-0だったりといろいろな状況が起こりうるものなのですが、その結果として自分達が勝ち点を掴んでいく物なのです。そのような時に、結果を考え過ぎて恐れてしまうような戦い方はして欲しくない、自分のアイデアを持ってサッカーをして欲しいと思います。
(サッカーには)3つの重要なポイントが有ります。まず1つは選手のクオリティです。そしてのそのクオリティをいかすためにはどう言ったシステムを採用すべきか判断するという事が2つ目です。そして3つ目には、そのシステムを信じるという事です。
Q:すでにグランパスの試合を観戦されているようですが、チームに対しての印象は?
 グランパスの印象についてですが、こういう事をプレスの皆様に今の時点で公表することはあまり良くない事だと考えています。私はプロフェッショナルなわけですから、まずはグランパスエイトのクラブ内の人たち、そして選手に自分の感じた印象を率直に伝えたいと思っています。
それでも、一般的にどうだったかという事をお伝えするとするならば、私は2試合観たのですが、ジェフユナイテッドとの試合では残り数分まで1-0で勝っていながら試合をひっくり返されてしまった、大宮アルディージャとの試合では延長戦で負けてしまったという、負け試合を2試合観戦することとなりました。これらの試合から感じた事は、勝つ事と負ける事には、本当にわずかな違いしか無いということです。そこの僅かな差を乗り越えて良い結果を得るという事が、大変難しいのですが重要な事だと思っています。これが、皆様に今お伝えできる具体的な感想です。
Q:その僅かな差を埋めるため、今のグランパスには何をするべきでしょうか?
 それには2つ、重要な事が有ります。1つは、選手が今何をするべきか、その使命、そしてシステムを認識してプレーすると言う事が必要です。先ほどから「フットボール・アイディ」(オランダでは、アイデアを意味)という言葉を使っていますが、どんなサッカーをすべきかと言う事を選手がわかってプレーすると言う事が重要です。そうすれば、この試合はここが辛いからこう変えていこうとか、選手達での決断が可能になってきます。
そしてもう1つは、システムを選手達が理解していると、信じることです。この「信じる」と言う事も非常に重要なファクターとなってきます。
Q:先ほど専務からの話にも出ましたメンタル面の強化について、具体策は?
 実際に2試合観戦したのですが、メンタル面についてはそれほど悪くはなかったと思います。シーズンが終わりに近づいているため、いろんな意味でプレッシャーを感じて自信がない面もあったかもしれませんが、それはどのチームにおいてもシーズン終盤には通常起こる事ですし、グランパスがメンタル面で弱いとは考えていません。
Q:2試合ご覧になって、グランパスの中で気になった選手は?
 先ほどと同じような答えとなってしまいますが、このような話はこの場ではなく、チーム内で話す事だと思っています。もちろん、何人か非常に重要な、キープレーヤーだなと感じる選手はいました。
Q:来期の目標、抱負を?
 コーチ、監督とは大体が「チャンピオンになる、1番になる」と言い易いものなのですが、私として、まずはフットボールの形を選手達に伝えるという使命を持っています。そして、相手チームより良いサッカーを展開すれば、結果は必ず付いてくるものだと思っています。例えばコーチの中には、試合前に「絶対勝つぞ」と叫んだりするタイプもいたりします。それは相手チームもおなじ事で、ドアの反対側では同じ事が叫ばれています。しかし、それだけで結果が変わるわけではありません。むしろ、自分達がどう言ったサッカーをするのかという事を選手が認識し、ピッチでそういうサッカーをするための準備万端であるという事、そして目の前の試合をクリアしていく事で結果が付いてくると思っています。私の使命としては、フットボールとはこういう物だと理解して貰い、そして1試合1試合を大切に戦っていく、そういう事だと思っています。ですから今ここで、何位を目指しますとか、結果はこういう風になりますという話はしたくありません。もちろん、試合に勝てば勝ち点3が付いてきますし、それを続けていけば順位もより良い物になると言う事は理解しています。そのためには、選手が私の考えているサッカーを理解し、毎試合実践してくれればと考えています。
実際に私は何でもオープンに話すと約束していますので、秘密にしているというわけではありません。例えば、相手チームがある場合に、相手チームにメンタル面でこのくらい叩いて勝ってやるぞ、という考え方なのではなく、自分の持っている力を最大限引き出し、フットボールとはこういう物なのだと言う表現しながらも、相手チームに敬意を持って戦えるようなチーム作りをしたいと思っています。
Q:来年、チームが始動するまでの予定は?
 実際に残されている時間は非常に短いため、やるべき事は、とにかくどう言うサッカーをするのかという事を明確に伝えていき、クラブの皆さんにも理解して頂く事が必要です。私が自分のサッカーに信念、ビジョンを持っています。また、グランパスの試合やDVDでの映像を見てプランもすでに持っているわけですから、後はそれに従ってくれるようどのようなトレーニングをしていくか、それをこの5〜6週間のOFFの間に出来るだけクリアにしなければいけません。実際にシーズンの最初から万全であるチームとは少ない物です。ですから、戦っていくうちに、数週間それを続けていくなかでスタイルが定着していけば良いと思っています。
Q:若い選手の育成にも定評があると伺っているのですが?
 ユース選手とは、クラブにとって非常に重要な選手だと思っています。自分達のクラブの手の内にある、非常に役にたつ存在であると考えています。それは、クラブだけではなく、国にとっても重要な存在です。
例えば私は家庭菜園を営んでいた事があるのですが、自分の畑にはいまどう言う素材があるのかという事をよく考えました。自分の持つ素材があって初めて、そこに買い足していこうということになりますし、サッカーもそうあるべきだと思います。
実際にグランパスのU-18にいる選手達を見たのですが、非常に才能のある選手たちもいました。そのような才能のある選手達を育て上げていく事は、非常に喜ばしい事だと考えています。そして、その若い選手たちにとっても、チャンスを与える事で将来を有望視されるという事になりますし、重要な事です。
Q:オランダの現地紙では、グランパスからは複数年でのオファーがあったにも関わらず、今回1年契約を結んだと報じられているようですが?
 1年契約と言う事に、特別な理由はありません。私はサッカーに携わるようになって最初のキャリアの頃からそうです。最初のキャリアの際にも、3年契約を結んでくれとの話があったのですが、それは長すぎると思い、3ヶ月ごとの契約に変えて貰った事があります。その理由としましては、もちろん監督と役員に方々が納得したうえでの事なのですが、自分がプロフェッショナルとして仕事をしていくうえで、良い結果を出した場合い契約を続けていけば良いと考えています。例えば何年かやってみて結果が出てくるわけですが、ある時点で結果が出ていなければ、役員の方々との話し合いで契約を辞めるという話も出てくるわけです。しかし私は、この様なスタイルで契約を更新していく事で自分の結果を残していく、そのような考えで契約しました。
実際の話ですが、グランパス側からはもう少し長い契約の話がありましたが、私は自分の考えを貫かせて頂いて、1年契約となりました。
Q:監督の考えていらっしゃるフットボールのイメージを、もう少し具体的に?
 非常に難しい質問です。全てを説明するためには2時間は必要ですし、2時間説明すれば、皆さんがコーチになれてしまいます。(笑)
サッカーとは非常に単純で、子供でも出来るスポーツです。ボールが1つ、ゴールが2つあればどんな子供出来るわけです。しかし、ハイレベルなプロのフットボールとなると、非常に困難なスポーツになってきます。
実際に試合前の1週間で自分達の目指すサッカーをトレーニングし、試合の残り30秒でゴールが決まる、そう言う事が間違いなく出来るのであればすごくスケジュールも組みやすいですし、簡単だと思います。しかし、そう言う事は実際には起きません。私が選手に伝えたい事は、出来るだけわかりやすいシステムを提示し、そのシステムをフォーメーションに反映し、自分が何をしているかと言う事を認識してサッカーの試合に臨んで欲しいということです。実際に試合が終わった後、その結果を取り戻すという事は不可能なことです。しかしながら、その試合を分析することは可能な事です。何が良く、何が間違っていたのか。その分析は過去のためではなく、次の試合、次のビジョンに向けてする事なのです。ですから私は選手達と試合後もどんどん話していきたいですし、どう言うサッカーをするのかという事も選手に示していきたい。そして、選手達には次の試合に出来るだけシンプルな状態で臨めるようにしていきたいと思っています。

会見に続いて、クラブフラッグをバックに、松岡専務取締役と共に記念撮影が行われました。
長時間の会見となりましたが、信念を帯びた口調と紳士な態度に、会見を取材に訪れた報道関係の方々も聞き入っていたようです。