楢崎正剛選手 中日新聞コラム「ゴールマウスから」

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「楢崎正剛のゴールマウスから」第6回「失敗から学ぶこと」

試合での僕を見た人から「いつも落ち着いていますね」と言われることがある。たとえ失点しようと、少々のことでは動じないように映ったらしい。けれど、自分はどちらかといえば切り替えが下手な方だ。もし周囲が僕に安定感を覚えたのならば、それは毎日の積み重ねによって身に付けたものだろう。

プロに入った1、2年目のころは、失点することに強い拒絶反応を示していた。どうやって点を入れられたかを克明に覚えていたし、点を失った後はこの世の終わりくらいに思えた。感情をむき出しにして、ゴールポストやロッカーを蹴ったことだってある。

サッカーという競技は、ミスの連続だ。むしろミスした後にどうするかが大事で、へこたれて足を止めるのではなく、プレーを続けることで次のチャンスが生まれる。何より僕たちプロ選手はミスがなぜ起きたかを妥協せずに突き詰め、それを少しでも減らすために鍛錬を続けている。

失点をいちいち気にするより、自分のセービングでチームを救った感覚に自信が持てるようになったのは30歳にさしかかったころだった。うまくいかないときは苦しいけれど、どんなときもやるべきことに徹する。それが失敗を乗り越えて良いプレーや結果を生み、自信につながってきたのだと思う。

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いま思えば、若いころの失敗なんて大したことなかった。僕もチームや日本代表で逃げ出したくなるようなミスを何度か犯しているが、そもそも失敗しない人間なんていない。ならば、もっと大きな舞台で成功する糧にすればいい。

ミスや悔しさを味わったとき、昔はGKコーチやチームメートに助けられた。今は家族に癒やされ、一晩寝れば切り替えられる。正直なかなか寝付けないこともあるが、夜が明ければ、もう次の試合が待っている。(元日本代表、名古屋グランパスGK)

◇4/27より中日新聞で掲載が始まりました楢崎正剛選手によるコラム「ゴールマウスから」、J1最多試合出場(631試合)を誇り、日本代表としても長くゴールを守ってきた楢崎選手が、豊富な視点からサッカーについて語ります。中日新聞にて随時掲載、ぜひお楽しみにください。