月刊グラン9月号のご紹介[田口泰士選手インタビュー]

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切り開く覚悟。

風間監督との話の中で
自分のプレーに確信が持てた

 気づけば、楢﨑正剛に次ぐ"勤続年数"を誇る選手となっていた。2009年のプロ入り以来、今季で9年目。通算で10年目となる玉田圭司が帰ってきたが、途切れなく名古屋の歴史に身を置いてきた者としては田口泰士も負けてはいない。ここ数年で大きくそのメンバーを入れ替えたチームにおいても、数少ない生え抜きとしての存在感は増している。本人はそれを望まないかもしれないが、彼は名古屋の"顔"である。

 故郷・沖縄でのキャンプ中に負傷し出遅れたシーズンだったが、復帰後はフルタイム出場を続ける。攻守のスイッチを入れるプレーは以前からの持ち味だったが、今季はより先鋭的になった印象だ。より前へ、よりアグレッシブに。独創的な指揮官の下で、背番号7は新たな扉を開いている。

 序盤はケガで出遅れましたが、そこから個人的に成長できているとは感じます。でもチームが勝つことが一番なので、思うような結果がなかなかついてきていないという現状には悔しい思いがありますね。成長というのは、基本的な技術のところや常日頃から言われている「止める、蹴る」だったり、そういった部分で感じます。改めて基本中の基本というか、すごく大事だなと思えているし、「遊び球を使え」とか、その意味はすごくよくわかる。それをもっとみんなができるようになれば、面白くなるんじゃないかなと思います。監督の考えていることはすごく理解できるし、楽しいですよ。言葉の表現の仕方もそうですし、「やっぱりこういうプレーで良かったんだ」って思えたことも多いです。今まで自分でも本当にこれでいいのかなって思っていたプレーや判断もあったから。考えが一緒だったなんて言うと大げさですけどね。前を向くプレーなどは言われてから意識するようになった部分です。そこは変われたところかなと感じます。前を向くプレーひとつとっても、「1、2」で前を向くのと、「1」で前を向くのでは違う。監督はそういうところをしっかり言ってくれます。「そのワンタッチは無駄だよね」とか。確かにそうだなと思えるし、それを含めて「プレースピードを上げろ」と監督は言います。いろいろ全部つながっているんです。

 風間八宏監督の指導でよく聞かれる言葉が「速さ」だ。それは身体的な速さというよりは、パスの速さや切り替えの速さ、そして何よりも判断の速さの起因するプレーそのもののスピードを指す。以前の田口のプレーは遅くはなかったが、どちらかといえばじっくりと戦況を見つめて一撃を見舞うスタイルだったために、このチームにおいては"遅く"映っていたところがあった。田口は「頭を休めてはいけない」と自戒を込めて言う。ただ、それだけに現在の彼のスピードはチーム随一を誇る。指揮官は「レベルを上に揃える」ともよく言うが、田口がそのトップグループに到達し、なお加速し続けていることは、誰の目にも明らかだろう。

 以前の自分を思い出す時、やはり思うのは頭を休めちゃいけないってことです。身体が疲れてても、頭だけは休めちゃいけない。何も考えないでボールをもらってもプレースピードは遅くなってしまうし、一人一人の判断、例えば出して止まらないということを全員ができている時には流動性が出てくる。そういう時には良い守備もできる。

 このスタイルの考え方は好きですね。ボールを出してもう1回受けられるように、「隠れるな」って言われるところとかもそう。他にもいろいろ好きなところはあります。ボールにたくさん触れるし、オレ自身もそういうのは好きだからというのもある。ただ、スペースが狭いぶん、相手のプレッシャーを受けることは多いです。あんまり好きじゃないですよ、そりゃあね(笑)。だけどそこも、個人じゃなくてチームでそのプレッシャーをはがせるといいんですよ。そういうこともできると思うし、チーム全体でやれればもっと良くなるんじゃないかなと思いますね。1対1でガッと来られたプレッシャーを個人で外すのは難しい。できればそれが一番良いんだけど、そうではなく、それをチームとしてはがすことができれば、オレたちの強みはもっと出てくると思うんです。

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 他者が狭いと感じるスペースを狭いと思わない正確な技術を求める新たなスタイルは、そのコンセプトゆえに個人のミスが目立つ戦い方でもある。田口はある試合でゴールキックのミスに対するいわゆるヤジを聞き、理解を示した上で「それは違う」と主張する。前線からGKにまで高い技術とトライを求める現在のチームにおいて、責められるべきは逃げのプレーである。恐れずにチャレンジした結果のミスを、風間監督も注意こそすれ責めはしない。攻めの姿勢は次のプレーの積極性にもつながり、現在のグランパスにおいては良い守備にもつながっていくからなおさらだ。田口もそうした姿勢を好意的に受け取る一人で、チームの成長に確かな手応えも感じている。

 このスタイルは個人のミスが目立つ部分があります。でもそれはトライしているから。ミスなく100%できていたらこんな順位にはいないと思う。ある試合でGKのゴールキックが少しずれた時、スタンドからそれを責める声が聞こえてきたけど、オレはそれは違うと思うんですよ。オレたちはトライしている。もちろん言うのは自由だけど、それでもやろうとしているのがオレたちのサッカーなんです。ピッチ内のどこかに大きく蹴るなんて誰でもできるんですよ。もちろん単純なミスもあるでしょうけど、トライしていて出たミスならば、距離感も良いから良い守備もできる。何より、ピッチでプレーするのは選手です。言われたことを100%で受け取ると、どうしてもうまくいかなくなる。毎回状況は違うわけで、だから臨機応変にというか、選手一人一人が本当にチームのためにやらないと、勝てない。今季の最初の方は、「これをやらなきゃ」と思いすぎていた部分はありました。練習でやったことをやろうと。それが今は、プレーしている中で「あ、これ練習でやってたね」って出てくるようになりました。よくミーティングで試合の映像を抜き出して見せられるんですけど、「確かにこれは練習でやっていた形だ」と。「これをやろう」としてそうなっていることは今は逆になくなってきたと思います。


生え抜き最年長としての意地とプライドを胸に、"風間グランパス"にとっても不可欠のピースとなった田口選手、前へ前へとチームを牽引する背番号7の姿は...。
続きは『Grun』2017年9月号をぜひご覧ください。

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駆け抜けろ、赤き疾風
田口泰士選手

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