月刊グラン4月号のご紹介

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J1"復帰"を担う稀代のスコアラー

不安があるからこそ
打ち克つための努力ができる

 チーム始動からわずか2カ月あまりにして、すっかり名古屋グランパスの"顔"である。移籍1年目にしていきなりキャプテンを任される、それ自体は珍しいことではない。だが、選手代表としてほぼ全ての公式行事に参加し、開幕前には街頭でのチラシ配りにも精を出した。殺到する取材依頼を決して断らず、一つ一つを丁寧にこなしていくその姿はまさしくプロの鑑。「応援してくれる人がいて初めて僕らはプロと言える」と断言する人格者は、その言葉に違わぬ行動をもってチームを引っ張っている。

 ピッチ内外での濃密で多忙な日々も、彼にしてみれば「幸せですね」。屈託のない笑顔からこぼれる白い歯が、こちらの心配を和らげてくれる。楽しんでいるのだ。名古屋での新たなチャレンジを、佐藤寿人は心の底から堪能している。

 名古屋は改めて大きなクラブだなと感じています。クラブ自体もそうですし、取り巻く環境、名古屋という街の大きさ、メディアの方の数。ファン、サポーターの皆さんも平日から多くの方が練習を見に来てくれます。開幕戦のチケットも完売しました。......J2ですからね? あまり考えられないですよ。それだけの人がグランパスを支えてくださっている。期待に応えていかなければいけないです。間違いなく昨年は苦しい、悔しいシーズンだったと思うので、今年のメンバーでもう一度信頼を取り戻していかなければと思います。

 選手も多く入れ替わっていますが、自分を含めて名古屋でプレーしたいと思う選手は多い。それがこのクラブの魅力です。名波(浩=磐田監督)さんにも「何だかんだグランパスに選手は集まるな」と言われました。そういう見方がサッカー関係者の間でもある。ブランドですよね。若手を見ても杉森考起や青木亮太は名前は聞いたことがあっても、どういう選手かは知りませんでした。でも一緒にやってみたらすごく能力が高い。風間監督の下で続けていけば、間違いなく将来は日の丸をつけると思う。その意味でも今年1年で結果を出して、本来いるべき場所に戻っていかなければいけない。J1「昇格」ではなく、J1「復帰」なんです。

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 ゴールと勝利の味を知り尽くす稀代の点取り屋はこの3月で35歳となる、「大」をつけてもいいほどのベテランである。だが、その能力にいまだ衰えは感じられない。J1、J2通算で211得点という数字を持ち出さずとも、彼は今もって日本屈指のストライカーの一人だ。その自覚があるからこそ、佐藤は名古屋への移籍を決断できたところがある。「広島で何事もなく引退へ向けて過ごすこともできた」男は安住を嫌い、良くも悪くも完成された古巣を離れた。名前ではなく、プレーで自分の価値を証明したいとはまるで功名心にたぎる若手のよう。しかし、それこそが佐藤を"佐藤寿人"たらしめる唯一にして最大の理由だ。プロ18年目にして彼はまだ、誰よりも上達しようとしているのだ。

 過去の成績をどれだけ引っ張り出しても、何かが保証されるものではありません。いま何ができるかのために、さらにレベルアップしなければいけないと思ってトレーニングしています。衰えは感じないですね。まだまだ成長できると思っているから移籍したのであって、これ以上は上手くなれないと思っているなら温かく、優しくしてくれる居心地の良いところでサッカー選手の余生を過ごしています(笑)。そんな過ごし方をしたくなかったし、ギラギラしている部分が自分の中にはありました。何より去年が満足のいくシーズンではなかったことで、ゴールに飢えています。それと同じくらい不安はありますけど、不安があるから打ち克つための努力ができる。この年齢になって環境を変えてチャレンジができるというのは本当に幸せですよ。ここからがグランパスの良いサイクルのスタートになってくれると思います。そこにしっかり選手としてかかわっていきたいです。

 僕はこういう選手だと自分で決めつけないようにしているんです。いろんなものに対して扉を開けて、スポンジのように吸収して大きくなっていきたい。今季はすべてにおいてゴールに関与する数を増やしていきたいですね。今までの「自分が終着点」というところだけではなくやれている今は、違う自分の一面が感じられてもいます。


エースストライカーにして、キャプテン。担う役割はこの上なく大きい寿人選手、その強烈なリーダーシップで名古屋グランパスに何をもたらそうとしているのか...。
続きは『Grun』2017年4月号をぜひご覧ください。

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開幕快勝

[グラン インタビュー]
J1"復帰"を担う稀代のスコアラー
佐藤寿人

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