試合前
午後12時30分、スタンド下の狭いエリア内で入念に体を解し終えた選手が、ピッチへと解き放たれたように勢い良く雪崩れ込んでくる。スタンドで彼らの登場を待ち受けていたサポーターも、ようやく許しを得た子供のように、腹の底からスタジアムに響き渡るような大声援で彼らを叱咤している。
今日のヴィッセル神戸とのゲームで、リーグは第31節を迎え、シーズン終了に向け秒読みに入った。今季、充実した経験を積むことが出来たAFCアジアチャンピオンズリーグに再び臨むためにも、3位内を目指し、これからの全ての試合を勝利しようという心意気が選手全員から伝わってくる。
暖かい日差しの下、対面でのパスを交換し合った後、先発メンバーはピッチ内でスプリントを繰り返した後は、気合いの入ったボール回しを行う。主力FWのケネディ不在の穴を埋めるべく、玉田と共にFWを託されたブルザノビッチ。磐田との激戦での退場劇でホンダロックとの天皇杯を出場できなかった分を取り戻そうと、軽快なステップを見せてボールを捌いている。宮本を中心に安定した守備を見せる神戸DF相手に、切れ味鋭いスルーパスでDF網をズタズタに引き裂いて、名古屋を勝利に導いてくれるはずだ。
昨年の活躍を考えると、今シーズンのプレーには少し物足りなさを感じる小川だが、ここへ来てスピードも冴えを見せ始めている。名古屋の得点の鍵を握る彼の活躍無くしては、今日の「勝ち点3」は遠いだけに、気合いの入った表情でアップを行うその気持ちを、ピッチ内で"得点"という形で表して欲しい。
12時47分、充分に体を動かしてコンディションを整えた選手達は、サポーターからの暖かい拍手と声援を背に受けながら、ゆっくりとした足取りを見せて、ピッチを後にした。
前半
午後1時、爽やかに晴れ渡った秋の青空の下、名古屋グランパスサッカースクールのちびっ子達の"赤い波"が待ち受ける前に、審判団を先頭に両チームが入場。スタジアム内は朝早くから、今日のキックオフを待ちかねたサポーターからの声援が怒濤のようにスタンドを広がる。
今日の先発メンバーは、GK西村、DFは、右から田中・吉田・増川・阿部の4人。中盤は、右に小川、左に三都主、ボランチの位置は中村と吉村が埋め、FWはブルザノビッチと玉田が組む。4-4-2の布陣で試合をスタートする名古屋。
前半は、左から右へと攻め上がる名古屋に対し、右エンドのアウェイ・神戸のキックオフでスタート。
1分、右深くのタッチ際でのボールを神戸・ボッティがミドルシュート。しかしこれは大きくゴールを越える。
2分、ロングボールに左を強引に抜け出した神戸・岸田の左足シュートはポストの右へ。
3分、中央を攻め上がってきた神戸・茂木のパスをボッティが落としたところを、神戸・宮本が詰め寄るが、ここは中村が体を入れて阻止。
4分、自陣中央に下がってルーズボールを拾った小川。縦へと長く蹴り出したところを、三都主が拾いに上がるが、これはタッチを割ってしまった。
5分、神戸陣内右深くでのFKのチャンス。しかし、三都主の入れたボールは、ゴール前で跳ね返されてしまう。
7分、左でパスカットされると、これを岸田がさらって縦への上がりを見せるが、三都主がボールへとスライディングでこれを止める。
8分、神戸陣内左深くでのFKのチャンス。三都主が蹴ると見せて、ブルザノビッチが強烈なボールを蹴るが、これは惜しくも壁に当たって弾かれてしまった。
9分、右からのCKのチャンス。三都主のボールの落下点へと遠いサイドに増川が詰めるが、その目の前でGKの両手がボールを弾き出してしまった。
11分、増川のロングフィードに左を阿部が上がるが、追い付く前にボールがタッチを割ってしまった。
12分、ブルザノビッチのボールに抜け出した小川。深い位置でマイナスに折り返してチャンスになったかと思われたが、この場面は惜しくもオフサイドの判定。
14分、左タッチで神戸・松岡の入れたボールをDFラインの背後を狙う神戸・吉田へ通してくるが、これはオフサイド。
【得点】
15分、ゴール正面へと出たボールに入り込んだブルザノビッチ。飛び込んで来る神戸GKの脇を抜くシュートを左に放つと、これがポストを叩いて神戸のゴールネットを捕らえ、名古屋に先制点が決まる。
17分、神戸陣内でのルーズボールを中村が拾うと、厳しいタックルを受け、FKのチャンスを得る。
18分、三都主がゴール前へと放り込んだボールに、中央で増川の頭が入る。しかし、僅かにタイミングが合わず、GKに正面で押さえられてしまった。
19分、左深くで、クリアが短くなったところを拾った神戸・金。ゴール前へとクロスを入れてくるが、これは待っていた選手がオフサイドポジションで名古屋のボールに。
21分、右で三都主とのワンツーで、田中が抜け出していこうとするが、体を寄せてきたDFに縦へと突破を止められてしまう。
23分、軽妙なステップを見せて阿部が中へと入り込むと、大きく右へと展開。これを三都主が受けて、中へと折り返すが、長くなってしまい、小川が深い位置で頭でゴールライン際から折り返すが、相手に渡ってしまった。
25分、左から神戸・岸田が強引な突破でゴール前へと入り込んでくるが、しっかりと体を寄せていた田中が相手のファウルを誘う。
26分、中央のブルザノビッチからのパスを左で受けた三都主がクロスを入れようとしたが、これはニアで弾かれ、左からのCKに。三都主の入れたCKがゴール正面で大きく弾んだところを、上がっていた吉田が押し込もうとするが、これは触ることが出来なかった。
28分、ブルザノビッチのワンタッチのボールに、中央を小川が飛び出す。しかし、これは追い付く前に神戸GKに抑えられてしまった。
29分、増川のサイドを替えようとしたボールが神戸・松岡に渡ってしまうが、ここは素早く反応した中村がボールをカット。
31分、右を細かなステップワークで抜け出した田中だったが、深い位置で後ろから倒され、絶好の位置でのFKのチャンスを得る。
32分、三都主の速いボールに中央へ玉田が頭から飛び込むが、これは惜しくもDFに当たってクロスバーを越えてしまった。
34分、GKからのゴールキックに、右を神戸・石櫃が上がってくるが、阿部がしっかりとこれを抑え込み、タッチの外へと送り出す。
35分、自陣中程やや左寄りの位置での神戸のFK。石櫃の蹴ったボールは、遠い位置にいた阿部が頭で弾き出す。
37分、高い位置でのチェックで相手ボールを奪った玉田が、ブルザノビッチに預けて縦に上がる。しかし、背後からのパスをワンタッチで狙ったシュートは、惜しくもDFに当たってコースが変わり、ポストの右へと流れ出てしまった。
40分、神戸陣内左タッチ際でのFKのチャンス。小川が長いボールを入れると、上がっていた増川、吉田と走り込むが、ボールはその頭上を抜けてしまった。
41分、中央でボールキープを見せる三都主から、左に上がってくる阿部にスルーパスが通る。しかし、これを中へと折り返した阿部のクロスは、大きくゴールを越えてしまった。
43分、右に抜け出した田中からの低い弾道のクロスは、神戸DFに当たってしまい、右からのCKに。
44分、三都主がこれを蹴るが、神戸DFの壁に阻まれてしまう。
(ロスタイム表示:1分)
ロスタイム1、右に抜け出して来た神戸・吉田のマイナスのボールは、中央でしっかりと増川が弾いたところを中村がクリア。
そして前半15分のブルザノビッチの挙げた得点をしっかりと守った名古屋が、1-0で試合をリードして前半を終える。
後半
エンド入れ替わり、後半は右から攻め上がる名古屋のボールで試合再開。
両チーム共にメンバー交代は無し。
1分、中央の吉村から右のスペースへとボールが出る。これを小川が上がって受けると、ゴール前へと放り込むが、神戸GKの両手が捕らえてしまった。
2分、右に上がる神戸・石櫃からのクロス。これを遠いサイドでフリーで待ち受ける茂木が狙いに来るが、その前で大きくジャンプした吉田がボールを外へと弾き出す。
3分、中央で増川をかわした神戸・茂木の放った右足シュートはクロスバーを叩く。右からの神戸のCK。ボッティの入れたボールを合わせたシュートは大きく左へ外れる。
4分、三都主からのスルーパスに合わせて玉田が縦へと走るが、その背後で神戸DFのスライディングがボールを止めてしまった。
5分、左寄りの位置をドリブルで、ブルザノビッチが一気に持ち上がる。しかし、エリア内へと入り込んだところで寄せてきたDFにボールを奪われてしまう。
8分、右に吉村のパスへと抜け出した田中からラストパスが、ゴール正面で待っていたブルザノビッチへ。これをしっかりと右足で叩いたブルザノビッチのシュートだったが、惜しくもGKの正面を衝いてしまい、追加点を挙げるチャンスを逃してしまう。
10分、右から強引の入り込んできた茂木だったが、ここは慌てることなくこれを増川が押さえ込むと、ボールを奪い取る。
12分、下がって三都主からのパスを受けた玉田。中央を抜け出そうとするブルザノビッチの足下を抜けるパスを送るが、これは長すぎてしまい、GKに先に押さえられてしまった。
13分、右からの神戸のCK。神戸1人目メンバー交代:岸田→朴
神戸・石櫃の蹴ったCKのボールは、中央で西村が叩き落としたところを、中村が大きく縦にクリア。
14分、名古屋1人目メンバー交代:三都主→津田
15分、神戸・金が吉村への危険行為を取られ退場し、1点リードの名古屋が数的にも優位に。
16分、神戸陣内でのルーズボールを拾ったブルザノビッチ。中へと入り込もうとしたところで後ろから倒されるが、これはファウルを貰えず。
18分、左で津田からのパスを受けた阿部が、絶好のクロスを放り込む。中央の玉田は触れることが出来なかったが、遠いサイドに詰めていた小川が左足でのシュートを狙う。しかし、これは慌てたのかジャストミートできず、大きく浮いたボールはゴールの上を越えてしまった。
19分、神戸2人目メンバー交代:宮本→河本
20分、左からのCKのチャンス。ブルザノビッチの右足からのボールがゴール前へと飛ぶが、中央でDFの頭に弾き出されてしまう。
21分、中央を仕掛ける中村からのパス。これを左から抜け出した津田が貰って、GKとの1対1になるが、これは惜しくもオフサイドの判定。
22分、神戸3人目メンバー交代:朴→田中
23分、自陣からカウンターに抜け出した津田。深い位置まで持ち込んだところで、中央に上がってきた玉田へとパスを出そうとするが、これは戻ってきたDFの足がカットしてしまい、このチャンスを逃してしまう。
24分、裏へのパスに抜け出して来た神戸・茂木の左からのシュートは、西村が正面でガッチリとキャッチ。
27分、 右の神戸・石櫃のボールをボッティがゴール前へと入れてくると、これを神戸・吉田にヘディングシュートを許すが、ボールはクロスバーを叩き、このピンチを逃れた。
28分、名古屋2人目メンバー交代:中村→杉本
右からの神戸のCK。ボッティのボールは、中央で津田が頭で弾き出す。
29分、ここでゴール前での混戦で接触して倒れ込んだ小川が、ピッチの外へと運び出され、名古屋も1人少ない中で試合を進めることに。
31分、右からの神戸のCK。ボッティのボールは正面の増川が弾き出した。そして、ここで小川がピッチ内へと戻ってくる。
32分、下がっているブルザノビッチからのパスを受けた玉田。ワンタッチで裏へと出して、杉本を走らせようとするが、これはタイミングが遅れ、ボールがゴールラインを割ってしまった。
34分、左に抜け出した小川からのクロス。これに逆サイドから津田が詰めるが、その前でGKがボールを取り押さえてしまった。
35分、左で小川の落としたボールを阿部が大きく入れる。ボールが伸びてそのまま枠を捕らえるかと思われたが、僅かに大きく、クロスバーに当たって弾き出されてしまった。
36分、小川からのパスを右で受けた津田だったが、ゴール前を塞がれたこともあり、後ろから寄せるブルザノビッチへと渡す。しかし、これを右足で狙い澄ましたシュートは、クロスバーを越えてしまった。
37分、ボッティのパスに中へと入り込んだ神戸・石櫃の右足シュートは、ゴールを大きく越える。
38分、自陣左タッチ際での神戸のFK。神戸・ボッティが大きくゴール前へとボールを蹴り込んできたが、増川の頭が跳ね返す。
39分、自陣から左を杉本が一気に持ち上がってくると、そのまま中へと持ち込んで左足でのシュートを狙う。しかし、これはDFに当たって勢いが無くなったところをGKに止められてしまう。
40分、名古屋3人目メンバー交代:ブルザノビッチ→山口
神戸陣左深くでのFKのチャンスだったが、小川の蹴ったボールは抑えが効かず、飛び込んだ増川の頭上を抜けて、そのままゴールラインの外へ。
42分、右に上がろうとする津田へとロングボールが出る。DFが弾いたところを狙うが、相手に渡ってしまう。
44分、ゴール前へと入ったロングボール。これに神戸・吉田がワンタッチで合わせようとして足を伸ばしてくるが、怖がらずに飛び込んだ西村が体を張ってボールを抑えた。
(ロスタイム表示:4分)
ロスタイム1、自陣から田中が長いボールを蹴って、DFの裏へと津田、杉本を走らせようとするが、これは相手DFの守備範囲に。
ロスタイム2、吉田からのロングボールに津田が裏への抜け出しを試みるが、ここはマークに付いたDFを倒してしまい、ファウルを取られてしまった。
ロスタイム3、自陣正面でのルーズボールを神戸・田中に狙われそうになるが、ここは山口が体を入れて相手のファウルを誘った。
ロスタイム4、右で田中とのパス交換を見せた津田。しっかりと残り時間を稼いだところで主審の両手が上がり、名古屋にホームでの勝ち点3が決まったところで、試合終了の笛が瑞穂の空に響き渡った。
前半から圧倒的にボールを支配、終始、試合の主導権を握った名古屋が、後半の数的優位を生かして神戸の反撃を抑え、ブルザノビッチの挙げた1点をしっかりと守りきって、勝利で第31節を終えた。
試合終了後記者会見
今日の我々の目的は、勝つ事でした。ファイティングスピリットを持ち、ホームで勝ち点3を獲得出来た事には満足しています。自分達のプレーも出来ていましたし、選手を祝福したいと思います。
もちろん技術面でのミスは問題ですが、それでもハードワークをこなし勝てた事には満足しています。
流れの良かった前半に対し後半は停滞した様にも感じますが、どこに問題があったとお考えでしょうか?
確かに、前半は我々グランパスのペースで進んでいました。今日のチームの構成は攻撃的でしっかりとした技術を持った選手達を起用しました。そのためゲームをしっかりコントロール出来ましたし、質の高いプレーで前半を1-0とリードして終える事が出来ました。後半はヴィッセル神戸が同点に追い付くために全体を押し上げてきました。その状況で我々としてはカウンターから追加点を狙いました。何度かチャンスはあったのですが、最後の場面での集中力が足らなかったのか、決める事が出来ませんでした。それでも今日の試合に勝ったという事が最も重要な事です。
戦術面で選手達には、神戸のロングボールに気をつけるよう指示を出しました。ロングボールを送られれば、茂木選手をはじめ神戸の前線には攻撃的に優れた選手がいます。そう言う相手に対ししっかりと組織を作って守る事が出来ました。何度か危ないシーンもありましたが、0点に抑えきった事には満足しています。
後半、カウンターからのチャンスで決められなかった事について、どこに問題があったとお考えでしょうか?
問題は、私がピッチでプレー出来ない事です(笑)。
ここで試合を決められるというシーンも多くありましたし、フラストレーションのたまる場面もありました。あそこで決められない事は、技術面での問題だと思っています。チームとしてスペースはしっかりと使う事ができていましたし、しっかりと相手ペナルティエリアまで侵入する事が出来ていました。後半はカウンターを狙って戦い、さらに津田、杉本も投入しました。
サイドハーフで出場した三都主選手の今日の評価をお聞かせ下さい。
あのポジションでの起用は、三都主自身、特に驚きは無かったと思います。良い動きをしていましたし、ボールをしっかり囲み、セットプレーでも良いボールを蹴っていました。60分くらいで交代させた理由はチームをリフレッシュさせるためであり、プレーが悪かったからではありません。
その時間帯からは、先にも話しましたが、カウンターを狙うためスピードがあり攻撃的である津田を投入しました。
山口慶選手が復帰しましたが?
そうですね、久しぶりのプレーでしたが、試合勘を取り戻すという意味でもチャンスを与えたいと思っていました。
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