試合前
午後6時18分、先にアップを始めている名古屋のGKの2人、磐田戦でリーグ戦初出場を飾った長谷川と西村を横目に、アルイテハドの選手達が名古屋のサポーターのすぐ前を駆け抜ける。すると、普段のリーグ戦でもここまではと言うほどの強烈なブーイングが、「アウェイの洗礼」として彼らに浴びせられる。そして彼らにやや遅れて名古屋の選手たちがピッチへと勢い良く走り込んでくると、今度は迫力タップリの声援と暖かい拍手がスタンドを塗り替える。アウェイでの悔しさを今日のこのピッチで絶対に仕返しして欲しい、と言う彼らの強い想いが名古屋の選手たちへと送り届けられた。
すぐにピッチで体を動かし始めた名古屋の選手たち。その表情からは、"厳しさ"と言うよりも"熱さ"と言った方が良いような気迫が伺える。今日は今シーズン最高の、"名古屋らしさ"をきっと見せてくれることだろう。
代表戦での負傷もあって、しばらく戦列を離れていた玉田。アウェイのアルイテハド戦の後半途中からの復帰となったが、孤軍奮闘で殆ど良さを見せる事も出来ずに名古屋に戻ってきているだけに、今日は溜まったストレスを発散する意味でも、きっと大活躍を見せてくれるはず。ケネディと共に、相手DFを苦しめ、次々とアルイテハドのゴールネットを揺らして欲しい。
平日の夜とは思えないほどに、真っ赤に染まった名古屋サポーターのスタンドからは、早くも迫力タップリの声援がアップ中の選手へと送られる。ちょうどその時、AFCアジアチャンピオンズリーグでは5ゴールを挙げている、ACL男・小川の名前が紹介されると、一際、力の入った拍手と声援が彼に送られる。磐田戦で見せた様な、怒濤の攻撃の核となる彼の活躍が、今日は絶対に不可欠だろう。
「絶対に勝たなければならない」と言う意味では、もう後がない戦いなだけに、なりふり構わぬほどの、徹底した攻撃が今日は見られそうだ。
そして、午後6時40分、気合いと共に、サポーターの声援をしっかりと体内に蓄えた選手たちは、準備万端の表情でピッチを後にした。
前半
水曜の夜とは思えないほど、名古屋のサポーターで埋め尽くされたホーム・瑞穂陸上。チームの歴史に新たに刻まれるはずの「瞬間」を目の前で見ようと、開始前から異様なほどの盛り上がりを見せている中、午後6時55分、両チームの選手が入場する。今日は増川がキャプテンマークを左手に付け、先頭で入場だ。注目の一戦と言うこともあり、マスコミの数もいつになく多い。
今日の名古屋の先発メンバーは、GK長谷川、DFは、右から小川・吉田・増川・阿部の4人。中盤は、中央、ボランチの位置には三都主とブルザノビッチ、右には玉田、左にはマギヌン、そして、FWはケネディと巻の2人。4-4-2の布陣でこの一戦に臨む。
左エンドの名古屋に対し、右エンドのアルイテハドのキックオフで、前半の45分が始まる。
1分、早速、吉田が左に上がりながらゴール前へと長いボールを放り込むと、前線に上がる巻がヘディングシュート。しかし、これは惜しくもGKの正面。
2分、右をアルイテハド・モハメド(18)がドリブルで上がってくるが、ここはDF陣が包囲し潰す。
3分、左からの阿部のクロスに中央で巻が飛び込むが、これはDFがクリア、右からのCKに。三都主が入れたボールは、GKがクリア、今度は右からのCKのチャンス。ブルザノビッチがこれを蹴るが、ゴール前でDFに弾き出されてしまう。
4分、右から上がっていたケネディのシュートはDFに当たってポスト左。
5分、右からのブルザノビッチのボールは、飛び出したGKがパンチングでクリア。
6分、左を持ち上がったマギヌンからのパスを受けたケネディだ。しかし、反転したところでボールを失ってしまう。
8分、左をアルイテハド:オバイド(6)が攻め上がろうとするが、吉田が厳しく寄せて、ボールをタッチの外へクリア。
10分、ブルザノビッチからのパス。これをワンタッチで縦のスペースへと落とそうとしたマギヌンのボールはDFがカットしてしまう。
11分、右からの小川のクロス。これを遠いサイドのケネディがヘディングシュートを放つが、これはバーの上へ。
13分、右でキープを見せるモハマド(18)のヒールにアハメド(12)が寄せてくるが、阿部が厳しく寄せてボールを奪い取る。
15分、中央で玉田のパスを受けたブルザノビッチが仕掛けようとするが、ここは厳しいタックルに潰されてしまう。
17分、中央でパス受けたケネディ。反転しながら左足で遠目からシュートを打つが、これはポストの右。
18分、右のスペースへのボールに小川が抜け出すが、ここは早い戻りを見せたDFにボールをタッチの外へと押し出されてしまった。
20分、中央で小川のパスを受けた玉田。ワンタッチで縦に送ろうとするが、これはDFの網に掛かってしまい、奪われてしまう。
21分、自陣右深くでのアルイテハドのFK。アルイテハド・マナフ(8)のボールがこぼれたところを拾ったアルイテハド・サウド(14)のシュートが枠を捕らえるが、これは守っていた巻の頭がバーの上へと弾き出した。
23分、右を上がってきたアルイテハド・ラシェド(2)の速いクロスは、そのままゴール前を抜けて外へと流れる。
24分、左で巻の落としたボールをマギヌンがクロスを入れる。しかし、これは精度を欠き、詰めていったケネディの頭の上を通過してしまった。
26分、右から裏へと抜け出した小川のクロスボールは、中央でDFの頭が弾き出してしまう。
27分、相手のセットプレーのボールを奪ったブルザノビッチからの早い縦へのパスは、前線にいた巻が反応が遅れ、相手に渡ってしまう。
28分、エリア内で巻が落としたところを玉田が寄せるが、DFにクリアされてしまう。ここでゴール前での接触プレーでアルイテハドGK・マブルーク(1)が傷んで、治療に時間がかかる。
30分、左からアルイテハド・サレハ(19)が抜けだし、1対1に。しかし、エリア内へと入り込んできたところでのシュートは、飛び込んだ長谷川が正面でこれを弾く。
32分、左を抜け出した阿部からのクロスボール。中央へと入り込んだケネディがヘディングシュートを放つが、これは惜しくもクロスバーを叩き、ゴールネットを揺らすことは出来なかった。
33分、中央でマナフ(8)の放ったシュートは、吉田が体を入れてコースを変える。
34分、自陣からマギヌンがスピードに乗ったドリブルを見せて持ち上がる。しかし、DF3人に囲まれてしまい、ボールを奪われてしまう。
35分、左を抜け出した玉田からグラウンダーのボール。これに中央へと巻が走り込むが、DFの足がカットしてしまう。
37分、相手陣内中程左でのFKのチャンス。短く出たボールをマギヌンが鋭く入れるが、これは走り込んだ巻には届かず。
38分、右からのCKのチャンス。三都主のボールにケネディが飛び込むが、その目の前でGKの伸びた手がボールを弾き出してしまう。
39分、ブルザノビッチが長い距離を持ち上がるが、左に開くマギヌンへと預けようとしたところで潰されてしまい、ボールを失ってしまう。
41分、右から小川が体勢を崩しながらも、深い位置からクロスを上げる。しかし、これは逆サイドに詰めたマギヌンの頭上を越えてしまう。
【失点】
42分、右に抜け出した選手からのクロスを中央で押し込まれそうになるが、ここはGK長谷川が正面で止める。しかし、こぼれたところに詰めたサレハ(19)にこれを押し込まれ、先にアルイテハドにゴールを奪われてしまう。
43分、ブルザノビッチからのパスを阿部がワンタッチで縦に送る。これをマギヌンが追うが、追い付く前にボールがタッチを割ってしまう。
(ロスタイム表示:2分)
ロスタイム1、自陣中央やや左でのアルイテハドのFK。サウド(14)の直接狙いのボールは壁で弾いて、ゴールの上へ。
ロスタイム2、自陣右深くでのアルイテハドのFKだったが、短く出たところを三都主がしっかりと追い詰めてボールを奪った。
そして、ここで前半終了の笛が告げられる。
先に先制したい名古屋だったが、アルイテハドに先制を許して、試合を折り返すことに。
後半
エンド入れ替わり、後半は右から左へ、名古屋サポーターの待つ側へと攻め上がる名古屋のボールで試合再開。
名古屋1人目メンバー交代:巻→中村
1分、右から玉田の落としたボールをブルザノビッチが拾って入り込んでいこうとするが、これはDFにカットされてしまう。
2分、左から抜け出したケネディからのシュートはGKの足が阻んでしまう。右からのCKのチャンス。ブルザノビッチのボールにケネディが合わせるが、これはクロスバーを越えてしまう。
4分、マギヌンからの縦パスに小川が縦へと抜け出すが、トラップをしようとしたところでスライディングにボールを奪われてしまう。
5分、自陣中程右でのアルイテハドのFK。アハメド(12)のボールにアミン(27)が頭で合わせようとするが、ボールは大きく上へと浮いて枠を越える。
7分、相手陣内深くやや左の好位置で、仕掛けようとしたマギヌンが潰されFKを得る。これをブルザノビッチが壁の間を狙って強く蹴るが、相手に当たって跳ね返されてしまう。
8分、右からのCKのチャンス。ブルザノビッチのボールはケネディの頭の上で、GKがパンチングしてしまう。
9分、右からのアルイテハドのCK。短く出したところを受けたアシェド(2)が裏へと抜け出そうとしてくるが、ここはボールを失う。
10分、相手陣内でのセットプレーで上がっていた吉田が高い位置でのパスを受けたところで倒されるが、これは相手のファウルを認められず。
11分、相手陣内深くやや左でのFKのチャンス。三都主のボールにマギヌン、ケネディと詰めるが触ることは出来なかった。
13分、左深くでのマギヌンのショートパス。これをブルザノビッチが受けようとしたところでDFがこれをカット、左からのCKに。短く出したボールを早めに入れると、これを玉田がニアで合わせるが、枠へは飛ばず。
【失点】
14分、右からのクロスボールに飛び込んだアミン(27)にヘディングシュートを決められてしまい、名古屋は2点目を失ってしまい、ますます苦しい状況に追い込まれてしまう。
17分、名古屋2人目メンバー交代:玉田→杉本
18分、左からDFを振り切って阿部がクロスを入れるが、これは逆サイドを抜けてしまった。
19分、右でボールを持って前を向いた三都主。中へと入り込みながら正面でシュートを放つが、これはクロスバーを越えてしまった。
20分、右に杉本が作ったスペースへと小川が走ると、ゴール前へと丁寧にクロスボールを入れる。中へと走り込んでいった杉本がこれを合わせようとするが、飛び出したGKが僅かに早くボールに追い付いてしまった。
【得点】
21分、左の阿部のパスをゴールを背にして受けた杉本。胸でトラップし、そのままバイシクルシュートを放つと、ボールがそのままアルイテハドのゴールに吸い込まれ、名古屋に待望の得点が決まる。
23分、ゴール正面中央で中村のパスを受けたケネディが短く流して、自らシュートにいこうとするが、ここはDFの足が邪魔をしてしまった。
24分、左から阿部のボールに、裏へと杉本が抜け出しを見せるが、これはGKが先に押さえてしまう。
25分、右に抜け出したモハメドの横パスを中央で受けたマナフ(8)のシュートは、長谷川が正面で弾く。
26分、左をドリブルで持ち出したケネディのゴール前へと流し込んだボールに杉本が詰めるが、これは戻ったDFの足が阻んでしまった。
27分、中央で相手パスを奪ったブルザノビッチからの斜めのパスは、右に上がる杉本へと届く前にDFがカット。
28分、右に抜け出したブルザノビッチの右足シュートは、僅かにポストの左。
30分、相手陣内左中程でのFKのチャンス。ここは三都主が蹴ると、ゴール前に詰めていたマギヌンの足下に収まるが、DFに包囲され、押し込むことは出来なかった。
31分、相手陣内深く右でのFK。三都主のボールを中央で合わせたケネディのヘディングシュートは、枠へとは飛ばせなかった。
32分、右からのCKのチャンス。三都主のボールにケネディ、増川、そして吉田と上がるが、ゴールを挙げることは出来なかった。
33分、右から斜めにゴール正面へと入るマギヌンに合わせ、増川からのパスが入るが、ここは厳しいアタックに潰されてしまう。
35分、アルイテハド1人目メンバー交代:モハマド(18)→ヒシャム(11)
ゴール前へのボールに合わせた杉本のヘディングシュートは、惜しくもGKの正面。
36分、アルイテハド2人目メンバー交代:マシェド→オサマ
37分、アルイテハド3人目メンバー交代:サレハ→スルタン
38分、左を細かなステップのドリブルを見せて、ブルザノビッチが仕掛ける。しかし、味方へとパスを送ろうとしたところで奪われてしまう。
39分、名古屋3人目メンバー交代:三都主→吉村
40分、左の、阿部からのクロスに、中央へと入り込んだマギヌン。ヘディングシュートを狙うが、これは競り合ったところで、相手GKへのファウルを取られてしまう。
41分、左の阿部からのクロスをケネディが落とすと、マギヌンが左からのシュートを狙う。しかし、これは惜しくもGKの正面を衝いてしまう。
43分、右の小川からのマイナスボールを受けた杉本。中へと流し込むと、これに吉村が入り込むが、足下へと収まる前にDFの足が阻んでしまう。
44分、縦へと出たロングボールに、エリアを飛び出した長谷川。これを抑えきれず、アルイテハド・ヒシャムにフリーでのシュートを許すが、ボールはポストの右に。
(ロスタイム表示:3分)
ロスタイム1、左から阿部の落としたボールにケネディが詰めるが、その目の前でジャンプしたGKがキャッチしてしまった。
ロスタイム2、右に上がってきたヒシャムの増川の脇を抜くシュートは、長谷川が右手で防ぐ。
ロスタイム3、右で前を向いて仕掛けるケネディ。中へと入れていこうとしたが、マークのDFがこれを跳ね返してしまった。
ロスタイム4、相手ボールを中央で奪った杉本からのパス。これを受けたブルザノビッチが縦へと上がるが、鋭く寄せてきたDFを避けきれず潰され、このボールを奪われてしまう。
そして、約5分近くのロスタイムの経過と共に、このAFCアジアチャンピオンズリーグ準決勝第二戦終了を告げる笛の音が、瑞穂の空に響き渡たる。
初のチャレンジとなったAFCアジアチャンピオンズリーグ。日本勢として、唯一、準決勝まで上り詰めたが、残念ながら、中東の強豪・アルイテハドに2敗を喫し、決勝進出を食い止められる結果となってしまった。
試合終了後記者会見
今日は2つの事を言いたいと思います。まず1つは、決勝進出を決めたアルイテハドに対しおめでとうと言いたいと思います。そしてもう1つ、サポーターの皆様に感謝を伝えたいと思います。今日も多くのサポーターにスタジアムへ駆けつけていただき、感謝しています。
試合前からアルイテハドの18番の選手に注意をしていると話していましたが、それでも2失点してしまいました。特に前半に1失点してしまった事でゲームプランが大きく崩れたのでは無いでしょうか?
確かに今日の試合に負けましたが、すでに先週ジェッダでの試合で苦しい展開となっていました。もちろんアルイテハドの18番・Noor選手は良い選手ですが、我々にとって重要な事ではありません。我々は今日、良いサッカーをやったと思っていますし、AFCチャンピオンズリーグでベスト4という結果を出しました。これが今シーズンの我々のマックスな結果だと思っています。アルイテハドはアジアではやはり、ナンバーワンのクラブなのではないでしょうか。
アジアでベスト4は素晴らしい結果だとは思いますが、この上を目指すため、今後は何が必要だとお考えでしょうか?
今シーズン、AFCチャンピオンズリーグに出場する事はグランパスにとって新しい冒険でした。そしてクラブとしても新しい経験が出来たと思っています。川崎フロンターレを破り準決勝まで進出できた。川崎はJリーグでも優勝できる力を持ったチームですし、その相手を破った事で、我々も最低限の結果は出せたと思っています。今日はゴール以外にもチャンスはありましたが、そこを決める事が出来なかった、やはり強いチームとはそう言うシーンで決める物です。
怪我人が重なったり苦しい面もありましたが、決勝へ行く為には何が必要だったとお考えでしょうか?
こういう大会にはベストメンバーで臨む事が重要です。そして勝ち上がる為には多少の運も必要になってきます。今日のゲームには後悔していません。後悔しているのは先週のジェッダでの試合です。2-6で負けてしまった事で圧倒的に不利な状況となってしまいました。アルイテハドとグランパスに大きな違いは無く、ほんの少しの違いだったと思います。
ただ、先程も話しましたがチャンピオンズリーグに出場した事はグランパスにとって良い経験だったと思いますし、Jリーグと平行しての過密日程を戦い抜く上で、適正な選手数も考えたいと思います。
今日はスタートから、勇気を持って戦える攻撃的なチームを作りました。それでも難しい状況であり、先制点を決める事が出来ませんでした。ケネディのヘディングがバーに嫌われたシーンもありましたし、それ以外でもチャンスを決める事が出来ませんでした。やはりアルイテハドの様なチームを相手にチャンスを作りながら決める事が出来なければ、それなりの代償を支払う事となります。
今日は攻撃的な布陣で試合をはじめ、後半になってから中盤の選手を増やしました。これとは逆の戦い方をする選択肢もあったかと思いますが?
選手交代とは、その試合状況で変わる物です。それでも私としては今日は、最初から攻撃的に戦いたいと思っていました。それでも前半を0-1で折り返してしまい、チームをリフレッシュさせる狙いで交代枠を使いました。巻を45分で下げ、ブルザノビッチをフォワードの位置へと上げました。そして中盤に中村と吉村を投入したのは、ある意味では、2人にしっかりとしたトレーニングを行って来いという思いがありました。
戦術としては我々は何も変えていませんし、これが我々のモットーでもあります。杉本を投入してからもマギヌンとサイドに張らせ、中盤を厚くしました。今日は前半も後半も、強いメンタルを見せてくれたと思っています。スコアを狙っていましたが1点しか獲る事が出来ませんでした。
アルイテハドは現在のアジアでナンバーワンのクラブなのではないでしょうか。これはあくまでも私の予想ですが、アルイテハドが今大会で優勝するのでは無いかと思っています。
グランパスの選手はしっかりと戦ってくれました。今日は強いメンタルを持ち、しっかりと戦術を守ってくれました。
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