試合前
午後6時20分、上空が夕暮れを迎え明るさを失い始めた頃、名古屋の選手達がサポーターの拍手に迎え入れられて、最後の調整のためピッチへと登場。
AFCチャンピオンズリーグ・今日の対戦相手は、韓国の強豪・水原三星だ。今日は勝つしかない、一発勝負という厳しい試合だが、ここで勝てば決勝トーナメントへと駒を進めるだけあって、選手達の表情は凛として引き締まっている。
中断期明けから再開、満を持して臨んだはずの先週土曜の千葉戦。よもやの敗戦で選手達には動揺が残っているかと思われたが、しっかりと気持ちの切り替えは出来ているようで、軽快な動きを見せながらアップメニューに取り組み始める。
千葉戦ではスタンドからの観戦で苦い思いをした小川も、今日はピッチ内で気合の入った様子を見せながらボールを追い求めている。チームが勢いを掴みきれない今こそ、彼がその力を発揮し、チームを勝利へと導いて欲しいところだ。
また今日は嬉しい報告もある。AFCチャンピオンズリーグのアウェイ・ニューカッスル戦で受傷し、長い間リハビリに当たっていたマギヌンが戻ってきた。昨年も彼の不在からチームが失速してしまっただけに、今日からは再びチームに勢いが戻ることが期待できそうだ。そのためにも絶対に今日は負けるわけにはいかない。
韓国GKのイ・ウンジェは元代表GK。練習前にはストレッチを行っている楢崎の元へと歩み寄り、ガッチリと握手を交わしていたが、今日は落とす気はないと自信たっぷりの、余裕の表情を見せていた。千葉戦で悔しい敗戦を一番自覚している楢崎だけに、好セーブで韓国の攻撃陣を跳ね返してやろうと、間違いなく相当の意気込みで、試合前のアップを行っていることだろう。楢崎が気持ち良くチームを勝利に導く守備を見せるためにも、今日は先制点を取って、試合の主導権を握ることが、勝利への「鍵」となるだろう。
午後6時40分、日が暮れて気温が下がり、心地良い風が吹き抜ける中、アップを終えた選手達は満足げな表情を見せて、ロッカールームへと向かった。
前半
名古屋特有の蒸し暑さもそれほど厳しくなく、心地良い夏の夕暮れとなった今日のホーム・瑞穂陸上競技場。
午後7時、照明灯からの色鮮やかな光に緑の芝が生え渡る中へ、両チームの先発メンバーが、ちびっ子を携えて登場、スタジアムの雰囲気が一気に盛り上がる。少ないながらも水原を応援するサポーターも大きな拍手でチームを鼓舞している。
今日の先発メンバーは、GK我らが守護神・楢崎、DFは右から田中・吉田・増川・阿部の4人。中盤は、右に津田、左に小川、ボランチの位置には中村と吉村の2人。FWはダヴィと玉田。4-4-2の布陣だ。
前半、右にエンドを取るアウェイの水原に対し、ホームの名古屋は左から攻め上がる。
そして試合は水原のキックオフで幕が切って落とされる。
1分、自陣右深くでの水原のFK。水原(30)のボールは中央で弾き出す。
3分、水原(7)がドリブルで中へと入りながらパスコースを伺うが、ここは玉田が厳しく寄せてファウル覚悟で潰す。
4分、右から相手パスをカットした田中。ドリブルで縦に仕掛けようとするが、ここは相手2人に阻まれて潰されてしまう。
7分、右からの水原のCK。水原(30)のマイナスのボールを水原(15)がゴール前へと放り込んでくるが、ここは楢崎が正面で捕らえる。
8分、左からの水原のCK。水原(30)の入れたボールがゴール前で大きく浮くが、飛び出した楢崎がパンチングで叩き出す。
10分、自陣左深くでドリブルで抜け出そうとした水原(15)を倒してしまい、危ない位置でのFKを与えてしまう。水原(30)の大きめに蹴ったボールは、詰めていた津田が頭で弾き出す。
11分、左に流れ出たボールを、水原(16)がゴール前へと入る水原(9)に繋いでくるが、ここは増川が寄せてボールをタッチの外へクリアする。
13分、自陣の楢崎からのロングボールを、左で受けた津田。トラップでDFをかわそうとするが、厳しい寄せで失ってしまう。
15分、中央でボールがルーズになったところを水原の選手に拾われる。最後、右に上がる水原(16)が貰ってミドルシュートに来るが、これは精度を欠き、枠の上へ抜ける。
17分、中央でパスを受けた水原(7)。左足で遠目からシュートで楢崎を襲うが、ボールは僅かに上へと流れ、クロスバーの上。
18分、中央で水原(7)のパスを中央の水原(9)が落とすと、これを水原(6)がシュート。しかし、このボールは楢崎がしっかりと反応、ポスト右へと弾き出す好セーブを見せる。
20分、吉村からのスルーパスに、小川が左から裏へと抜け出そうとするが、このパスは球足が速く、追い付くことが出来なかった。
【得点】
22分、ダヴィの落としたボールに、左から抜けた小川が1対1。そして水原GKのポジションを確認、迷うことなく左足を鋭く振り抜くと、このボールが水原のゴールネットに突き刺さり、見事な先制点が名古屋に決まる。
24分、中村が粘っているところへ寄せた田中。ボールを受けると、ダイレクトでゴール前へと放り込む。このボールにダヴィが飛び込んでいったが、大きく腕を伸ばした水原GKに捕らえられてしまった。
26分、自陣中程右寄りの位置での水原のFK。短く出したボールを右に抜け出した水原(7)が上げてくる。逆サイドの水原(25)が頭でゴール前へと落としてくるが、ここは吉村がコースに入ると、縦にクリア。
28分、水原陣内中程やや右でのFKのチャンス。これを玉田が長いボールを蹴るが、ボールは直接ポスト左へ流れ出てしまった。
29分、小川が左に展開したボールを津田が持ち込むと、ゴール正面でDFをかわしながら玉田へ預ける。これを右に詰めたダヴィに落とすと、枠を捕らえたシュートが飛むが、惜しくも水原GKの正面を衝いてしまい、止められてしまった。
31分、吉田が左に上がる津田にパスを通すと、これを仕掛ける。しかし、DFをかわそうとしたトラップが流れてしまい、津田が折り返した時にはゴールラインを割ってしまった。
33分、左からの水原のCK。ショートコーナーから繋いでくるが、中央からのパスをダヴィがカット、名古屋がカウンター攻撃を見せる。左に上がる小川からのパスを、右に上がるダヴィが受けて、そのまま持ち上がる。しかし、ペナルティエリア内で細かい切り返しを見せて、シュートをチャンスを伺う間に、戻ったDFにボールを奪われてしまい、このチャンスを潰してしまう。
36分、自陣深く中央やや左、ペナルティエリアのすぐ外の位置でのFKを水原に与えてしまう。
37分、このFKの場面で短く落としたところを水原(25)が走り込んで、直接シュートを狙ってくる。ここは、飛び出した吉村が体を張ってこれを阻止、ピンチを救った。
39分、水原の左からのCK。水原(30)のゴールに向かって飛んでくる鋭いボールは、楢崎が上へと弾いたところをダヴィがクリア。
42分、自陣でパスを繋がれるが、ここは選手全員がしっかりと集中、ボールを持った選手へとプレッシャーを怠らず、ミスを誘った。
44分、左から入り込む小川に、玉田からのパスが通る。これを再度受けた玉田が、小川からのパスに抜け出してシュートを放つ。しかし、これは惜しくもGKの正面を衝いてしまう。
(ロスタイム表示:1分)
ロスタイム1、中央から右へと流れながら、ボールを持ち込んできた水原(16)。エリア内へと入ったところでシュートに来るが、これはクロスバーの上。
そして、前半は小川の挙げたゴールをしっかりと守った名古屋が1点リードで試合を折り返した。
後半
エンド入れ替わり、後半は右から左へと攻め上がる名古屋のボールで試合再開。
水原1人目メンバー交代:(30)→(19)
1分、自陣右中程での水原のFK。水原(19)の左足のキックがゴールに向け飛んでくるが、阿部が頭でしっかりと弾き出す。
4分、右に抜け出した水原(15)が鋭く入れたボールがゴール前へと飛んでくるが、これは詰めてきた水原の選手の足下を抜け、ポストの左へ出る。
5分、左から縦に仕掛ける小川。ペナルティエリア内でDFをかわそうとして倒されるが、これには審判の笛は鳴らず。
7分、自陣でボールを持った増川が縦にボールを当てる。これを玉田がそのまま前を向いて持ち上がろうとするが、2人3人と押し寄せた選手に潰されてしまう。
10分、中央をドリブルで仕掛けようとした玉田だったが、執拗なマークに潰されてしまう。
11分、水原陣内中程やや左でのFKのチャンス。増川が豪快に直接狙って蹴ったボールは、惜しくもクロスバーを越えてしまった。
12分、左に流れ出たボールを水原(19)が拾い、精度の高いクロスを入れ、これを水原(16)がヘディングシュートに。しかし、ここは吉田がクリア。
13分、右からの水原のCKのボールは、ニアサイドのダヴィが頭で弾き出す。
14分、右で田中のトラップが流れたところを奪われるが、ここは相手ミスに救われ、繋ごうとしたボールが直接タッチを割った。
15分、左サイドで阿部の縦パスをワントラップして、DFをかわそうとした津田だったが、芝に足を取られてしまう。
17分、水原陣内右深くの好位置でのFKのチャンス。玉田の速い弾道のボールがゴールを襲うかと思われたが、これはニアのDFの足に当たって枠の上へ抜け出てしまった。
19分、水原2人目メンバー交代:(16)→(20)
20分、左から津田が玉田とのワンツーで抜け出そうとするが、これはDFがクリア左からのCKに。小川が鋭く蹴ったボールがゴール前へと飛ぶが、水原GKのパンチングに弾き出されてしまう。
【得点】
21分、右からドリブルで切れ込んでいった玉田。そのまま左足を一閃、鋭いシュートをゴール左に突き刺し、名古屋が追加点を挙げる。
【失点】
23分、左に展開したパスを受けた水原(19)がマイナス気味にパスを入れる。これを中央に詰めていた水原(9)に、左足からのシュートを決められ2-1に。
25分、水原陣内深く左でのFKのチャンス。小川の蹴ったボールがゴール正面に走り込む増川に入るが、僅かの差で間に合わず、ボールはポストの右に抜けてしまう。
27分、名古屋1人目メンバー交代:津田→竹内
28分、自陣中程右寄りでの水原のFK。水原(19)の大きく入れたボールを、逆サイドで受けた選手がエリアへは持ち込もうとしたところで倒れるが、これはシミュレーションとして相手に警告が出された。
29分、水原3人目メンバー交代:(6)→(18)
30分、中央の水原(9)からのパスを受けた水原(18)のシュートは、体勢が崩れたため、大きくゴールを越える。
32分、田中の縦パスを玉田が下がって受けると、右に開いた中村へと繋ごうとするが、出足の早いDFに奪われてしまう。
34分、中央へこぼれたボールを水原(15)に拾われると、エリアの外からシュートに来るが、これは精度を欠きクロスバーの上へ抜けていった。
35分、水原陣内中程やや右でのFK。玉田の蹴ったボールはやや低く、DFに弾かれるが、こぼれたところを吉田がダイレクトでシュートに。しかし、これは枠の外。
36分、名古屋2人目メンバー交代:中村→山口
38分、左に抜け出した小川のクロスは、寄せてきたDFに当たって跳ね返されてしまう。
40分、楢崎からのロングフィードを受けたダヴィが縦に抜け出すと、左からゴール前へと流し込む。玉田、小川がこれに走り込むが、触ることは出来なかった。
41分、ゴール前へと流し込もうとしたボールを増川が跳ね返す。これをDFを背に受けたダヴィが、正面で落として反転しようとしたが、後ろからのファウルに潰されてしまった。
43分、自陣中程右寄りの位置での水原のFK。水原(19)の蹴ったボールが大きくゴール前を抜けたところを、楢崎が直接キャッチ。
44分、ここで水原(3)がこの日2枚目となる警告を受け退場に。1点リードの名古屋はここで数的にも優位に立つ。
(ロスタイム表示:3分)
ロスタイム1、左から縦パスに抜け出したダヴィ。深くまで持ち上がると、そのまま中へと入り込んでシュートコースを伺うが、戻ったDFにボールを奪われてしまった。
ロスタイム2、名古屋3人目メンバー交代:阿部→佐藤
ロスタイム3、楢崎からのロングフィードを相手DFが大きく跳ね返したところで、主審の吹く、長く大きな笛が瑞穂陸上のスタンドに響き渡り、名古屋の勝利が告げられる。
これで名古屋は久し振りのホームでの勝利と共に、見事、初出場となったAFCチャンピオンズリーグ予選突破を決め、決勝トーナメントへと駒を進めることになった。
試合終了後記者会見
今日は予想通り、とてもタフなゲームとなりました。しかし重要な事は、勝利という最高の結果を得られた事です。この勝利でアジアでのベスト8に進出する事ができ、チームにとっても自信になると思います。今日のゲームに勝利し次のステージへ進むことが目的でしたが、選手もその目的を達成するためにしっかり戦ってくれました。
先日の千葉戦に出られなかった小川選手、さらに途中出場だった玉田選手がスターティングメンバーに戻ってきました。もちろん彼らに対する期待は大きいかと思うのですが、実際にチームにどのような影響を与えるのでしょうか?
玉田と小川、この2人の選手はチームにとって多大な影響を与えます。彼らの選手としての質、そして重要性は私にとって疑いようがない物です。そして実際に今日は、この2人が得点を決めてくれました。戦術面も含め、しっかりと戦ってもくれました。対戦相手にとっても、攻撃面で脅威を与えていると思いますし、彼らのパフォーマンスに満足しています。
本当に、チームのベストイレブンからこの2人は外す事ができないと思っています。
玉田選手のゴールシーンは1つのキックフェイントから生まれましたが、あの動きについて、どう感じられたのでしょうか?
玉田のああいったシーンをこれまで、本当に見たいと思っていました。彼はそれだけのテクニックを持っています。今日のゴールシーン、しっかりボールをコントロールし、自ら持ち込んで決めました。技術的に高いゴールでした。そしてこのゴールは玉田自身にとっても、重要なゴールであり、今後の自信になると思います。玉田ならあのようなプレーが出来ると思い、期待していました。
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