2006 Jリーグ ディビジョン1:第21節
 うっすらと靄の掛かったような、カシマスタジアムのピッチへ名古屋の選手が足を踏み入れてゆくと、水曜日の開催にもかかわらず、遠く茨城・鹿島の地まで応援に訪れた名古屋サポーターから惜しみない声援が送られる。全員横一列に並んで、大きく手を振って挨拶を済ませると、すぐさまアップをスタートさせる。これまで、幾度と無く好ゲームを展開しながらも、未だかつて勝利のない名古屋にとって、主力を欠く今日の対戦相手の鹿島は因縁を断ち切る日の相手としては申し分ないだろう。
 前節、中盤で速いテンポで動きながら、効果的にチャンスを演出していた藤田。ヨンセンという絶対的なターゲットが前線にいない今日は、津田・本田・杉本という若い3選手を使って、如何に鹿島の守備陣を崩すかは彼の働きに掛かっていると言っても良いだろう。そして、もう1人。大いに期待したいのが、日本代表・中村だ。前節も同じく代表の遠藤からボールを奪って、鋭いドリブルからの見事なゴールを決め、明日発表される代表遠征メンバー選出に向け、しっかりとアピールを見せていた。今日は藤田と共に、名古屋の攻撃の起点としての活躍を見せて貰いたい。
 昼間の雨のために、まだしっかり濡れている芝生の上で、選手達はボール回しを行って体をしっかりと解すと、その後は、ドリブルやロングボール、シュート練習と思い思いに、キックオフに向けてコンディションを作ってゆく。前節、眼底骨折からマスクを装着して復帰を果たしたスピラールもコンディションが良いのか、笑顔を見せながらボールを扱っている。主力温存とはいいながら、鹿島の攻撃はアウトゥオリ監督の教え子のブラジル人や深井、内田とスピードもあり、決して侮れない。しっかりと鹿島の攻撃をスピラールを中心とした守備陣が受け止めてくれると信じたい。午後6時45分、すっかり暗くなってしまった上空に明るい光を投げかけるカシマスタジアムの照明の中を、選手達は汗をタップリと流しながらロッカーへと向かっていった。
〜前半15分
スタジアムの屋根に両チームサポーターの打ち鳴らす太鼓と声援が大きくこだまする中、両チームイレブンが入場すると、その声に一層力がこもってゆく。前半は、左エンドのホーム・鹿島に対し、上下白のアウェイユニフォームの名古屋は右にエンドを取り左へと攻め上がる。前半は鹿島ボールで試合開始。今日の名古屋は、GK楢崎、DFは大森・スピラール・古賀、MFは左に本田、右に中村、中は、藤田と山口の2人、FWは津田と杉本、そして増川という3-4-3の布陣だ。  
 
1分、左に持ち上がった杉本からのクロスが中央増川を経由して、逆サイドに詰めた津田が合わせるが、これはDFに当たってCKに。
2分、右からのCK。本田のボールをニアサイドで古賀が合わせにゆくが、DFに先に弾かれる。
 
 
3分、相手の横パスをカットしたFW増川がそのまま持ち込んでゆくと、右足からシュートを狙うが、これはポスト左に。コンディションが良くない鹿島らしく、立ち上がりも消極的なプレイが目立っている。
6分、右に抜け出した鹿島・深井がスピラールのカットしたボールを拾って抜けてくると、マイナスにゴール前へとパスを入れてくるが、戻った古賀がクリアしてゆく。
 
 
7分、鹿島の右からのCK。ファビオの入れたボールはスピラールが弾き出す。
8分、自陣左深く、エリアのすぐ外での鹿島のFK。鹿島・野沢が直接狙ったボールはクロスバーの上へ。
 
 
 
10分、左に山口の縦パスにタイミング良く飛び出した杉本のマイナスのグラウンダーを、逆サイドから飛び込んだ津田がワントラップからのボールを落ち着いて右足シュートで相手ゴールに蹴りこみ、見事な先制弾を決める。
11分、自陣右深くでの鹿島のFK。ファビオのボールに逆サイドの選手が合わせるが、ボールはクロスバーを越えてゆく。
14分、相手のファウルで自陣中央でのFKのボールを楢崎が縦に長く送ってゆくが、増川はDFへのファウルを取られてしまう。
15分、右からのCKのチャンス。本田のボールを遠いサイドの古賀が頭で折り返すが、ゴール正面の増川までは届かず。
【得点】
10分 津田(名古屋)
〜前半30分
16分、本田の縦へのパスに杉本がDFをかわして抜けてゆこうとするが、これはファウルを取られてしまう。
18分、浮き球が弾んだところで上手く体を入れた本田が縦に送ったボールに、今度はDFの間を抜けた杉本だったが、これはオフサイドを取られてしまう。
19分、相手の厳しいスライディングに倒された山口がボールを奪われるが、これを今度は中村がしっかりと奪い返してゆき、相手のチャンスをしっかりと潰してゆく。
 
 
21分、右からの鹿島のCK。ファビオの左足からのボールを鹿島・岩政がヘディングで合わせてシュートを狙ってきたが、これは楢崎が正面でキャッチ。
22分、本田の縦パスにポジションを左に変えていた津田が走ると、ダイレクトでゴール前へ折り返してゆくが、これは増川には届かず。しかし、逆サイドに詰めてきた中村がこれを拾ってキープすると、左に送ってゆく。詰めていた津田が左足からシュートを狙ったが、ボールはポストの左に流れてしまう。
 
 
25分、右の中村が前を向いてボールを持つと、タッチ際に送ったボールを杉本が受けてそのまま勝負を仕掛ける。エリアのすぐ近くのところからシュートを狙ったが、ポストの右へ。早い時間帯での得点で試合の流れを掴んだ名古屋が、ここまではゲームを支配している。鹿島もパスを繋いで名古屋のペナルティ近くまで迫るものの、名古屋の選手は早い戻りを見せ、良い形を作らせることはない。
27分、左から野沢が入り込もうとするが、DF陣がしっかりと前を阻むと、中央の青木にパスを送るが、足を滑らせボールを見失う。
30分、津田からの縦パスを受けた増川がそのまま勝負を仕掛けると、DFをかわして左足で角度のないところからシュートを狙ったが、ボールは鋭く逆サイドを抜けてしまう。
 
〜前半終了
32分、中盤で相手ボールを奪うと、本田が右に上がってゆく杉本へ大きくサイドチェンジ。これを頭で中へと折り返したが、ボールはGKの正面へ。
33分、自陣右深く、エリアのすぐ近くで鹿島にFKを与えてしまう。野沢が流したボールをファビオが左足から直接狙って蹴ってきたが、これはDF陣が足下で弾いてゆく。
 
 
35分、藤田が奪ったパスを左の本田に送ると、DFの裏へと鋭いスルーパスを出し、杉本を走らせたが、その前にオフサイド。
37分、自陣右深く、あわやPKかと思われる位置でのファウルでFKを与えてしまう。
38分、このFKをファビオが直接狙って蹴ってきたが、コースに入ったDFがコースを変え、ボールはクロスバーの上を抜けてゆく。
 
 
39分、右に流れてきた鹿島・深井の左足からのクロスは、守備に戻っていた中村が競り勝って、弾いてゆく。
40分、正面からの青木の強烈なミドルシュートは楢崎が正面でしっかりと止め、スペースへ弾き出してゆく。
41分、自陣左中程での鹿島のFK。野沢のゴール遠いサイドへのボールはジャンプした楢崎がキャッチしてゆく。
43分、楢崎からのロングフィードのボールを増川が相手選手と競り合いながら落下点で待ち受けるが、体が大きい為、押さえたとしてファウルになってしまう。
44分、ドリブルでエリア内へと侵入を試みたダ・シルバをファウルで止めたとして、ゴールやや左深くの位置でのFKを取られてしまうが、野沢のFKのボールは楢崎が難なく正面で受け止める。
 
 
ロスタイム1、中村の右からのアーリークロスを中央から抜け出した津田が胸で落として、右足からのシュートにいこうとしたが、これはオフサイドに。そして、前半は津田のゴールをしっかりと守って、1-0で試合をリードして終える。途中から鹿島が試合の流れを押し戻して、深井のスピードを生かした早い攻撃で仕掛けてきたが、選手全員がしっかりと集中しており、エリアの外でのファウルこそあったものの、全く崩されることなく鹿島の攻撃を受け止めている。後半もこの集中力を継続して、最後まで突き進んで欲しい。  
〜後半15分
エンド入れ替わり、後半は左から攻め上がる名古屋のボールから試合が再開。
1分、右から中村が左足でDFの裏を狙ってボールを入れ、増川に当てようとしたが、これは戻りながらのDFに頭でカットされてしまう。
3分、右のスペースへの縦パスにタイミング良く飛び出した杉本のサイドチェンジのボールを津田が右足でボレーシュートを狙うが、ボールは僅かにクロスバーの上へ。
 
 
5分、右で杉本のボールを奪った鹿島・深井がエリアに入ったところでシュートを打ってくるが、ボールは楢崎の正面。
7分、左サイドからスピードに乗って鹿島・内田が入り込んでこようとするが、スピラールが正面にしっかりと立ちはだかり、パスを難なくカットしてゆく。
9分、深井の縦パスを受けて、左サイドを突破してきた内田を大森が倒し、鹿島にFKを与えると、これを野沢が蹴ってくる。正面へのボールは跳ね返すものの、こぼれを拾ったダ・シルバのシュートは左のポストに当たって跳ね返る。
 
 
12分、山口が左の本田にパスを通すと、これを杉本が受けてゴール前への藤田へと繋いでゆくが、タイミングが合わず、こぼれ球を拾われそうになるが、増川がファウルで止めてゆく。
13分、中央を深井とのワンツーで抜け出してきた内田が楢崎と1対1に。しかし、しっかりと前に詰めて内田のシュートを正面で楢崎が跳ね返し、ゴールを死守する好セーブを見せる。
 
〜後半30分
16分、右サイドをドリブルで長い距離を上がっていった津田が、エリア内でシュートを狙っていったが、ボールはDFが戻ったところで弾いてしまう。
17分、相手陣内右中程での名古屋のFKのチャンス。本田の強烈なFKのボールは枠を捕らえるが、コースに入ったGKに弾かれてしまう。
19分、左から本田が早めにゴール前に詰める増川に放り込むと、競り合いに勝ってスペースに落としてゆくが、ここは誰も詰める事が出来ない。
 
 
20分、自陣中程ゴールほぼ正面の位置での鹿島のFK。鹿島・中後が右足から速いボールを直接狙って蹴ってくるが、これも楢崎が正面でしっかりと捕らえる。
22分、左から内田がドリブルで仕掛けてこようとしたが、中村が前にしっかりと体を入れてこれを阻止してゆく。
 
23分、自陣右中程での鹿島のFK。野沢のボールに遠いサイドに詰めていた岩政にヘディングシュートを決められてしまい、ついに同点とされてしまう。
24分、鹿島・青木が退場となり、名古屋は残り20分近くを数的優位に進めることに。
25分、右からのCKのチャンス。本田のボールは大きく逆に抜けてしまい、誰も触れることは出来なかった。
【得点】
68分 岩政(鹿島)
【交代:68分・鹿】
中後名良橋
 
27分、左からの杉本の放り込んだボールはDFに跳ね返されてしまう。こぼれ球を拾った山口が右のスペースへ送ってゆくが、中村は追い付くことが出来ず。  
29分、増川の位置には古賀が上がり、DFには秋田が入る。 【交代:72分・鹿】
ダ・シルバ増田
【交代:73分・名】
増川秋田
〜試合終了
31分、右の中村からのDFの裏へのボールに古賀が合わせにゆくが、これはオフサイドに。  
32分、自陣左深くでの鹿島のFK。野沢のボールに正面で楢崎がボールを跳ね返すが、主審は何とここでカードを名古屋側に出し、PKスポットを指さす。
34分、このPKの場面でファビオが左足からのボールをゴール左に決めてしまうが、これはやり直しに。
【交代:76分・名】
津田片山
35分、再度蹴り直したPKをファビオに決められてしまい、1-2と鹿島に逆転を許してしまう。 【得点】
80分 ファビオ(鹿島)
 
36分、フェルフォーセン監督は豊田を入れて、パワープレイを仕掛けてゆく。
37分、相手陣内右中程でのFKのチャンス。中村のゴール正面のボールに秋田、スピラールと詰めてゆくが、エリア内でのファウルを取られてしまう。
【交代:80分・名】
杉本豊田
39分、ここで大森がこの日2枚目のイエローカードを受けて退場となり、名古屋も1人少なくなってしまう。 【交代:83分・鹿】
深井興梠
 
42分、相手陣内左深くでのFK。本田のボールを逆サイドで折り返してゆくが、詰めてきた選手の足には僅かに届かず。
43分、相手陣内左中程でのFK。今度は本田が直接狙ったが、ボールに抑えが無く、クロスバーの上を抜けてしまう。
44分、秋田の入れたボールを古賀が落とすと豊田が詰めてゆくが、ボールはDFがカットしてしまう。
 
 
ロスタイム1、相手陣内左深くでのFK。中村の入れたボールにスピラールが頭で折り返すが、誰もこれには詰め切れず。
ロスタイム2、左の本田からのクロスをファーサイドの豊田が頭で落とすと、中央に中村が飛び込んでゆくが、ボールは僅かに前を抜けてしまう。そして試合は1-2のまま、名古屋にとっては信じられない形で終了を迎えることになってしまう。
最後まで熱い声援をありがとうございました。